ペットホテル経営で本当に儲かるのか。動物好きなら魅力的に見えるビジネスですが、初期投資500万円〜1,200万円に対し、収益性は決して高くありません。24時間体制の管理が必要で、季節変動も激しい。同じ資金があれば、他にどんな選択肢があるのでしょうか。

この記事では、ペットホテル経営の収益構造を、不動産投資や民泊経営と比較しながら解説します。

ペットホテル経営は本当に儲かるの?

ホテル

ペットホテル経営の収益性を判断するには、まず業界全体の構造を理解する必要があります。結論から言えば、単体事業としての収益性は決して高くありません。むしろ厳しいと言わざるを得ないでしょう。

ペットホテル単独では、預かり単価が1泊3,000円〜6,000円程度に留まる一方で、施設維持費や人件費、保険料といった固定費が重くのしかかります。加えて、需要の季節変動が激しく、大型連休以外は稼働率が低迷しがちです。つまり、収益の波が大きすぎて安定した利益確保が困難なのです。

他業種と比べた時の比較

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ペットホテル経営を検討する際、他の副業や投資と比較することで、その特性がより鮮明になります。ここでは実際に比較されることの多い3つの選択肢と対比してみましょう。

不動産

不動産投資とペットホテル経営は、一見すると初期投資の規模が似ているように見えますが、リスクとリターンの構造は全く異なります。

不動産投資、特にワンルームマンション投資の場合、初期費用は物件価格の1〜3割程度で、1,000万円〜2,000万円の物件なら300万円〜600万円程度から始められます。一方、ペットホテルの本格開業には800万円〜1,000万円の自己資金が必要になるため、表面上の初期投資額はペットホテルの方がやや高めです。

ただし、収益の安定性は不動産投資に軍配が上がります。不動産は一度入居者が決まれば毎月安定した家賃収入が入りますが、ペットホテルは日々の集客努力が欠かせません。空室リスクはあるものの、立地さえ間違えなければ年間を通じて一定の収益が見込める不動産に対し、ペットホテルは季節変動が激しく、ゴールデンウィークや年末年始以外は稼働率が低迷しがちです。

利回りで比較すると、不動産投資の実質利回りは地方で5〜8%、都心部で3〜5%程度が相場です。一方、ペットホテルは複合サービス展開に成功すれば15〜25%の営業利益率も可能ですが、単体では5〜10%に留められます。

不動産投資は管理会社に委託すれば、ほぼ完全な不労所得になりますが、ペットホテルは自らが現場に立つ必要があります。動物の命を預かる以上、24時間体制での管理が求められ、急なトラブルにも即座に対応しなければなりません。この点で、不動産投資は「資産運用」、ペットホテルは「事業経営」という性質の違いが明確に表れます。
関連:【不動産投資】民泊投資と賃貸経営どちらがいい?管理や利益率、リスクなど解説

クラウドソーシング

クラウドソーシングとペットホテル経営は、初期投資の規模が全く異なる選択肢です。比較すること自体がナンセンスに思えるかもしれませんが、「副業として始める」という観点では同じ土俵に立ちます。

クラウドソーシングの最大の利点は、初期費用がほぼゼロで始められることです。パソコンとインターネット環境さえあれば、今日からでも仕事を受注できます。一方、ペットホテルは最低でも数百万円の初期投資が必要でです。リスクを最小限に抑えて副業を始めたい人にとって、クラウドソーシングは圧倒的に参入障壁が低いと言えます。

柔軟性の面では、クラウドソーシングに圧倒的な優位性があります。自分の都合に合わせて仕事を選び、働く時間や場所も自由です。旅行中でもパソコン一つあれば仕事ができます。しかしペットホテルは、動物を預かっている期間は施設を離れられません。

本業を活かした副業

本業のスキルや人脈を活用した副業とペットホテル経営を比較すると、リスクとリターンのバランスが全く異なることがわかります。

本業関連の副業、たとえばエンジニアがシステム開発案件を受注したり、マーケターがコンサルティングを行ったりする場合、新たなスキル習得や設備投資がほぼ不要で、明日からでも案件を受注できます。しかもクライアントの信頼を得やすく、単価も比較的高めに設定できます。

対照的に、ペットホテル経営は全く新しいビジネス領域への挑戦になります。動物の扱いに慣れていない人なら、まず動物取扱責任者の資格取得から始める必要があり、実務経験を積むにも時間がかかります。本業とのシナジーがほとんどない分、ゼロからのスタートになるわけです。

開業に必要な初期費用はいくら?

市場環境

ペットホテル開業で最も現実的な判断を迫られるのが、初期投資の規模です。結論から言えば、自宅開業なら500万円前後、専用物件を借りる場合は800万円〜1,200万円が必要になります。

どのような資金が実際に必要になってくるのか細かく見ていきましょう。

物件の賃貸や購入にかかる費用

物件関連費用は、開業場所の選択によって天と地ほどの差が生まれます。自宅の一部を活用するなら、この費用はほぼゼロです。しかし専用物件を借りる場合、敷金・礼金・仲介手数料だけで家賃の4ヶ月〜6ヶ月分が必要になります。

賃貸物件の場合、月額家賃は立地によって大きく変動します。郊外の住宅地なら20坪程度の物件で月10万円〜15万円、都市部なら月20万円〜30万円が相場です。ペットホテルは騒音問題が発生しやすいため、住宅密集地では開業自体が難しく、ある程度隔離された立地を選ぶ必要があります。そうなると駐車場完備の郊外物件が現実的な選択肢になりますが、集客面では不利になります。

内装工事費用

内装工事費用は、物件の状態と求める品質によって大きく変わります。結論から言えば、最低でも200万円、平均的には300万円〜500万円を見込むべきです。

ペットホテル特有の内装要件として、まず床材の選定が重要です。通常のフローリングでは尿や嘔吐物が染み込み、臭いが取れなくなります。防水性と清掃性を兼ね備えたクッションフロアや、業務用の塩ビタイルを選ぶ必要があります。

壁面も同様に、防水・防臭対策が必須です。通常のクロスでは臭いが染み付くため、消臭機能付きの特殊クロスや、水拭きできるパネル材を使います。

その他にも、換気システムや照明工事、ゲージスペースの造作工事にもお金が必要になってきます。

設備投資

設備投資は、ペットホテルの運営品質を左右する最重要項目です。ここでケチると、後々の運営で必ず苦労します。総額で150万円〜300万円を見込むべきでしょう。

最大の費用はケージです。小型犬用のケージは1台2万円〜4万円、中型犬用は3万円〜6万円、大型犬用は5万円〜10万円が相場です。小型犬用を10台、中型犬用を5台、大型犬用を3台揃えると、ケージだけで80万円〜130万円かかります。

仕入れ費用や備品費用

開業初期の仕入れと備品購入に、最低でも50万円〜100万円は必要です。この項目を軽視すると、開業直後に「あれが足りない、これが必要だった」と追加出費に追われます。

まず、ペットフードの在庫確保です。預かるペットの多くは、普段食べ慣れたフードを持参しますが、万が一の不足に備えて、主要ブランドのドッグフードとキャットフードを各種揃える必要があります。

消耗品類も馬鹿になりません。ペットシーツは毎日大量に消費します。小型犬用、中型犬用、大型犬用それぞれのサイズに加えて、消臭スプレー、除菌剤、タオル類、ゴミ袋などの日用品も必要です。

加えて業務用掃除機、スチームクリーナー、高圧洗浄機などの清掃機器の消耗品や洗剤類、さらに、ペット用のおもちゃや遊具も必要です。預かり期間中、ケージに入れっぱなしではストレスが溜まります。散歩だけでなく、室内での遊び時間も提供するため、各種おもちゃやアジリティ用具もヒスようです。

人件費

開業直後の人件費をどう見積もるかで、資金繰りが大きく変わります。自分一人で始めるなら人件費はゼロですが、複数頭を預かるには補助スタッフが必要です。開業初年度の人件費として、150万円〜300万円を運転資金に含めるべきです。

まず理解すべきは、ペットホテルは24時間体制の仕事だということです。夜間も動物の様子を確認する必要があり、自宅開業でない限り、宿直体制を組む必要があります。アルバイトを雇う場合、時給1,200円〜1,500円で月100時間働いてもらうと、月12万円〜15万円の人件費がかかります。

繁忙期と閑散期で人員配置を変える戦略も重要です。ゴールデンウィークや年末年始は短期アルバイトを追加で雇い、閑散期は自分一人で回す柔軟な体制を取ることで、人件費を最適化できます。ただし、繁忙期の短期スタッフは経験が浅いため、トラブルのリスクが高まります。

動物取扱責任者の資格を持つスタッフを雇う場合、時給は1,500円〜2,000円に上がります。責任の重さを考えれば妥当な水準ですが、月150時間働いてもらうと月22万円〜30万円、年間では260万円〜360万円の人件費です。開業初期にこの負担は重く、多くの経営者が自ら資格を取得して人件費を抑える選択をします。

黒字化に必要な稼働率はどれくらい?

投資の種類

黒字化に必要な稼働率は、固定費の規模によって大きく変わります。結論から言えば、自宅開業なら稼働率30%〜40%、専用物件を借りる場合は50%〜60%が損益分岐点です。

この数字の意味を正確に理解しましょう。稼働率とは、「用意したケージのうち何%が埋まっているか」を示す指標です。

損益分岐点の計算方法を具体的に示しましょう。月間固定費が家賃15万円、光熱費3万円、保険料2万円、通信費1万円で合計21万円とします。小型犬の宿泊単価が4,000円、変動費(ペットシーツや餌など)が1頭あたり500円なら、1泊あたりの粗利は3,500円です。月間21万円の固定費を回収するには、60泊分の予約が必要です。つまり、1日平均2頭の予約があれば損益分岐点に達します。

もしスタッフを1名雇用し月20万円の給与を支払う場合、月間固定費は41万円に跳ね上がり、必要な予約数は117泊、1日平均4頭になります。

稼働率で表すと、10台のケージがあるなら40%の稼働率が必要です。

収益を安定させるにはどうすればいい?

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ペットホテルの最大の弱点は、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始の3つの繁忙期に需要が集中する一方、それ以外の期間は閑散とします。そのため、繁忙期に体調を崩したり、予期せぬトラブルで営業できなくなったりすると、計画が崩壊するところにあります。

したがって、日常的な需要がある付帯サービスを組み合わせることで、収益の平準化を図りましょう。最も効果的な組み合わせは、トリミング、ペットシッター、ペット用品販売の3つです。これらは宿泊需要とは逆の需要パターンを持ち、閑散期の収益を補完してくれます。

定期利用割引

定期利用割引は、リピート率を高め、予約の平準化を図る強力な施策です。単発利用よりも割引率を高く設定することで、顧客に「まとめて予約した方がお得」と思わせましょう。

具体的には、月2回以上の利用で10%割引、月4回以上で20%割引といった段階的な割引設定が効果的です。たとえば、通常1泊4,000円のところ、月4回利用なら1泊3,200円にします。顧客にとっては月間6,400円の節約になり、大きな魅力です。

ただし、定期利用割引の設定には注意が必要です。割引率が高すぎると、繁忙期の正規料金客を逃してしまいます。繁忙期は定期利用客も正規料金にする、あるいは繁忙期は割引対象外とする契約にすることで、収益の最大化を図ります。

トリミングサービス

トリミングサービスは、ペットホテルと最も相性の良い付帯事業です。理由は明確で、預かり期間中にトリミングを済ませてしまえば、飼い主にとって一石二鳥だからです。

トリミングの収益性は、ペットホテルを大きく上回ります。小型犬のシャンプーカットで6,000円〜8,000円、中型犬で8,000円〜12,000円が相場です。作業時間は1頭あたり2時間〜3時間で、時給換算すると2,500円〜4,000円になります。これは宿泊サービスの収益性を大きく上回ります。

さらに、トリミングは年間を通じて安定した需要がある点です。犬の毛は季節を問わず伸びるため、夏場も冬場も一定の需要があります。特に梅雨時期や夏場は、毛の手入れ需要が高まります。

トリミング併設の投資回収も早いのが特徴です。シャンプー台、ドライヤー、トリミングテーブル、各種カット用具を揃えても、初期費用は80万円〜150万円で済みます。

ただし、トリミング技術の習得が必要です。専門学校に通えば半年〜1年、見習いとして働きながら学ぶなら1年〜2年かかります。開業前に技術を習得しておくか、トリマー資格を持つスタッフを雇用する必要があります。

ペットシッターサービス

ペットシッターサービスは、初期投資ゼロで始められる収益源です。飼い主の自宅を訪問してペットの世話をするため、施設も設備も不要です。

ペットシッターの最大の利点は、ペットホテルを利用しない層にもアプローチできる点です。高齢犬や持病のある犬、極度に繊維質な猫など、環境変化に弱いペットは宿泊施設に預けられません。こうしたペットの飼い主は、自宅でのシッターサービスを強く求めています。

さらに、長期旅行者からの需要も大きいのが特徴です。2週間〜1ヶ月の海外旅行中、毎日訪問してペットの世話をする契約を結べば、1件で10万円〜20万円の売上になります。宿泊と違って預かり頭数の制限がないため、1日に3件〜5件訪問すれば、日当1.5万円〜2.5万円を稼げます。

ペット用品販売

ペット用品販売は、物販ビジネスの基本を押さえれば、安定した収益源になります。特にペットホテルやトリミングの顧客に対しては、信頼関係を活かした販売が可能です。

取り扱うべき商品は、消耗品と高単価商品の2本柱です。消耗品はペットフード、おやつ、ペットシーツなど、定期的に購入する必要がある商品です。

販売方法として、店頭販売とオンライン販売の両方を展開するのが効果的です。

まとめ

ペットホテル経営は、単体では収益性が低く、付帯サービスなしでは安定した利益確保が困難です。開業には500万円〜1,200万円の初期投資が必要で、黒字化まで半年〜1年以上かかります。

他の選択肢と比較すると、弱点が明確です。不動産投資は安定収入が続き、クラウドソーシングは初期費用ゼロで始められます。特に首都圏の民泊経営なら、同程度の初期投資で1泊単価はペットホテルの2倍〜3倍、稼働率も安定し、運営代行で24時間管理も不要です。

ペットホテルで収益を安定させるには、定期利用割引、トリミング、ペットシッター、物販など複数の収益源が必要ですが、結局は労働集約型ビジネスから抜け出せません。

もし、ビジネスとしての成功を考えるなら、命を預かるペットホテルより資産として運用でき、収益性の高い選択肢があります。特に首都圏で物件確保が可能なら、民泊経営を真剣に検討する価値があるでしょう。民泊なら平均年率20%は可能です。さらに、資金も最低限抑えることができます。

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