民泊事業の運営を始めてみたものの、予想外のトラブルに頭を悩ませていませんか?外国人宿泊客とのコミュニケーション不足から生じる騒音問題、ゴミ出しルールの違反、契約違反、さらには物損や盗難被害まで—民泊運営には様々な課題が潜んでいます
本記事では、実際の民泊運営でトラブルが発生した時の相談先まで、民泊事業を安定して運営するために必要な知識を網羅的にご紹介します。
民泊運営でトラブルが起きた際の相談先は?

民泊運営中にトラブルが発生した場合、適切な相談先に迅速に連絡することが必須です。
ここでは、民泊運営者が活用できる主な相談先とその特徴、相談時のポイントについて詳しく解説します。トラブルの種類や緊急度に応じて、最適な相談先を選択できるようになりましょう。
民泊民宿協会
民泊民宿協会は、民泊事業者の支援と業界全体の健全な発展を目的とした団体で、運営上のさまざまなトラブルに関する相談窓口を設けています。業界団体ならではの専門性と豊富な事例知識を活かした助言が特徴です。
民泊民宿協会への相談は、会員・非会員を問わず受け付けていますが、会員になることでより手厚いサポートを受けられます。会員になるためには年会費がかかりますが、会員になると特典として、法律相談の割引、トラブル対応マニュアルの提供、定期的な勉強会やセミナーへの参加などがあります。
相談できる内容は多岐にわたります。具体的には、近隣トラブルへの対応方法、宿泊客とのトラブル解決策、法規制への適合性確認、行政対応のアドバイス、新規参入時の注意点など、民泊運営全般に関わる問題が対象です。
相談方法は、電話、メール、対面相談(予約制)から選択可能です。緊急性の高くない一般的な質問はメールでの問い合わせが適しており、複雑な案件や緊急性の高い問題は電話や対面相談がおすすめです。初回相談時には、物件の概要、運営状況、具体的なトラブル内容、これまでの対応などを整理しておくと、より的確なアドバイスを受けられます。
民泊制度コールセンター
民泊制度コールセンターは、観光庁と厚生労働省が共同で設置した公的な相談窓口です。民泊新法(住宅宿泊事業法)に関する質問や相談を受け付けており、法令解釈や行政手続きに関する正確な情報を得られる点が大きな特徴です。
コールセンターでは主に以下のような内容について相談できます。まず、民泊新法に基づく届出・登録手続きの方法や必要書類についての質問が可能です。また、法令上の義務(宿泊者名簿の作成・保存、衛生管理措置、近隣住民への説明など)の具体的な実施方法についても相談できます。さらに、自治体の条例による規制(いわゆる「上乗せ規制」)についての情報提供や、違法民泊の通報なども受け付けています。
利用方法は非常にシンプルで、専用の電話番号に連絡するだけです。相談は無料で、民泊事業者だけでなく、これから事業を始めようとしている方や近隣住民なども利用可能です。受付時間は平日の9時から17時までが一般的ですが、時期によって変更されることもあるため、最新情報を公式サイトで確認するとよいでしょう。
民泊制度コールセンターの最大の利点は、公的機関が運営しているため、法令解釈に関する信頼性の高い情報が得られる点です。民泊新法は2018年に施行された比較的新しい法律であり、解釈が難しい部分も少なくありません。コールセンターでは、観光庁や厚生労働省と連携して最新かつ正確な情報を提供しています。
ただし、民泊制度コールセンターには一定の限界もあります。例えば、具体的なビジネス上の問題やマーケティング戦略などについてのアドバイスは行っていません。また、民泊新法以外の法律(旅館業法、消防法、建築基準法など)に関する詳細な質問は、それぞれの所管官庁に問い合わせる必要があります。さらに、混雑時には電話がつながりにくいこともあるため、緊急性の低い質問はメールでの問い合わせも検討するとよいでしょう。
弁護士
民泊運営に関わる法的トラブルが発生した場合や、法的リスクを事前に回避したい場合には、弁護士への相談が有効です。
弁護士に相談できる主な内容としては、宿泊契約に関するトラブル(キャンセル料金の請求、返金拒否など)、近隣住民とのトラブルに関する法的対応、行政からの指導や命令への対応方法、物件所有者とのトラブル(賃貸物件を民泊利用する場合など)、損害賠償請求への対応などが挙げられます。また、民泊事業を始める前の段階での法的リスク評価や、利用規約・宿泊契約書の作成・レビューなどの予防法務も重要な相談事項です。
弁護士への相談は費用がかかりますが、法的トラブルが深刻化する前に専門家のアドバイスを受けることで、結果的にコストを削減できることも少なくありません。特に、宿泊客や近隣住民との関係が悪化している場合や、行政からの指導を受けている場合などは、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
警察
民泊運営中に犯罪行為や緊急事態が発生した場合、警察への相談・通報は最も重要な対応策の一つです。特に宿泊客や第三者の生命・身体・財産に関わる緊急事態では、迅速な警察への連絡が必要不可欠です。
警察に相談・通報すべき主な状況としては、宿泊施設内での犯罪行為(窃盗、器物損壊、薬物使用、売春など)、宿泊客による暴力・脅迫行為、不審者の侵入、宿泊客の急病・死亡(事件性が疑われる場合)、近隣とのトラブルが暴力沙汰に発展した場合などが挙げられます。また、宿泊客が行方不明になった場合や、テロなどの重大犯罪に関する情報を入手した場合も、速やかに警察に連絡する必要があります。
警察への通報・相談時のポイントとしては、まず冷静に状況を伝えることが重要です。具体的には、何が起きているのか(犯罪行為の内容など)、いつ・どこで発生したのか(住所、部屋番号など)、誰が関わっているのか(宿泊客の情報など)、現在の状況(継続中か終了したかなど)、危険性の有無(武器の使用など)を明確に伝えることが求められます。通報者の氏名や連絡先も必要ですが、身の安全を確保することが最優先です。
警察が現場に到着した際には、宿泊者名簿や予約情報、防犯カメラの映像など、捜査に役立つ情報を提供することも重要です。民泊新法では宿泊者名簿の作成・保存が義務付けられていますが、これは犯罪捜査にも役立つ重要な資料となります。また、事件後には被害状況を写真に撮るなど、証拠保全も忘れないようにしましょう。
最後に、誤解を避けるために重要な点として、民泊運営者は警察に通報する権利だけでなく、責任も持っていることを認識しておく必要があります。明らかな犯罪行為を黙認したり、通報を怠ったりすると、共犯や幇助として責任を問われる可能性もあります。また、虚偽の通報は「虚偽通報罪」として処罰される可能性があるため、正確な情報提供を心がけることも大切です。
もしトラブルが起きた時にはどうすればいい?

民泊運営でトラブルが発生した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。しかし、すべての問題を一人で抱え込む必要はありません。オーナー自身での対応と、運営代行サービスの活用、それぞれにメリットとデメリットがあります。
実際の現場での対応方法について、具体的に見ていきましょう。
オーナー自身が対応する
民泊運営において、オーナー自身がトラブル対応を行うケースは少なくありません。物件の状況や宿泊客の特性を熟知しているオーナーだからこそ、柔軟な対応が可能となる場面も多くあります。
たとえば、チェックイン時間の急な変更依頼に対して、オーナー自身が近隣に住んでいる場合は、柔軟に対応することができます。また、設備の不具合が発生した際も、普段から取引のある業者に直接依頼することで、迅速な修理が可能となります。
さらに、近隣住民とのコミュニケーションにおいても、オーナー自身が対応することで、より密接な関係を築くことができます。日頃からの挨拶や情報交換を通じて、トラブルの早期発見や未然防止にもつながります。
ただし、24時間体制での対応が必要となることや、緊急時の負担が大きいことなど、オーナー自身の生活にも大きな影響を与える可能性があります。特に本業を持ちながら副業として民泊運営を行っている場合は、時間的な制約も大きな課題となります。
運営代行サービスを活用する
近年、民泊運営の代行サービスを提供する企業が増加しています。これらのサービスを活用することで、オーナーの負担を大幅に軽減することができます。特に、複数の物件を運営している場合や、遠隔地での運営を行う場合には、効率的な選択肢となります。
代行サービスの具体的な対応例を見てみましょう。深夜に宿泊客から設備の不具合の連絡が入った場合、24時間対応のコールセンターが一次対応を行い、必要に応じて現場スタッフが駆けつけます。また、チェックイン・チェックアウト時の立ち会いや、清掃・メンテナンスの手配なども、一括して対応してくれます。
言語対応の面でも、多言語対応が可能なスタッフが常駐していることで、海外からの宿泊客とのコミュニケーションがスムーズになります。予約管理やキャンセル対応、料金の精算など、煩雑な業務も代行してくれるため、オーナーは運営の全体管理に集中することができます。
一方で、代行サービスの利用には相応の費用が発生します。また、物件の特性や地域性を十分に理解していない場合、画一的な対応になってしまう可能性もあります。さらに、近隣住民との関係構築においては、直接的なコミュニケーションが取りにくくなるというデメリットもあります。
このように、トラブル対応の方法は、物件の規模や立地、オーナー自身の状況などによって、最適な選択が異なってきます。それぞれのメリット・デメリットを十分に検討した上で、自身の運営スタイルに合った対応方法を選択することが重要です。
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まとめ
民泊運営には様々なトラブルが付きものですが、もし、問題が発生した際には一人で抱え込まず、民泊民宿協会、民泊制度コールセンター、弁護士、警察などの適切な相談先に迅速に連絡することが重要です。
こうした対策と知識を身につけることで、トラブルに振り回されることなく、宿泊客と地域社会との良好な関係を保ちながら、安定した民泊事業運営を実現できるでしょう。