Airbnbによる民泊運営は、不動産投資の新たな可能性として注目を集めています。しかし、実際の運営では予想以上のコストや労力が必要となり、思うような収益が上げられないケースが増えています。

この記事では、Airbnbが儲からないとされる具体的な理由と、収益改善に向けた実践的な対策について、詳しく解説します。
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なぜAirbnbは儲からないと言われる?

不動産投資の選択肢として注目を集めるAirbnbですが、実際の運営現場では収益確保に苦慮するホストが増加しています。現場で起きている具体的な課題と収益性が低下している実態について詳しく解説します。

競合増加が原因

民泊需要の高まりを受け、新規参入するホストが急増したことで、Airbnb市場は競争が激化しています。国土交通省の統計によると、住宅宿泊事業法に基づく届出住宅数は令和5年(2023年)11月15日時点で21,468件です。

競合の増加は、特に都市部において深刻な影響をもたらしています。例えば、東京23区内の人気エリアでは、半径1km以内に類似した価格帯の物件が20件以上存在することも珍しくありません。

価格競争の激化により、都心部の物件では平日の稼働率確保が難しくなっています。国土交通省の宿泊旅行統計調査では、民泊施設の平均稼働率は30%前後で推移しており、ホテルの平均稼働率70%と比較して低い水準にとどまっています。

ホスト視点の投資リスク

物件の内装工事から必要な備品の購入まで、Airbnbホストとしての事業を開始するには相応の初期投資が必要です。不動産仲介大手の調査によると、一般的なマンションの一室を民泊向けに改装する場合、内装工事に50万円から100万円、家具・家電などの備品購入に30万円から50万円程度の費用が発生します。

施設の維持管理にも継続的なコストがかかります。具体的には、定期的な修繕費用、消耗品の補充、保険料などが必要です。民泊専門の保険料は年間3万円から10万円程度で、物件の規模や補償内容により変動します。

投資回収の観点では、物件の立地条件や市場環境により大きな差が生じます。不動産投資専門家の分析では、初期投資の回収には、稼働率60%以上、平均宿泊単価1万円以上の水準を2年以上維持する必要があるとされています。しかし、競争激化や季節変動の影響により、これらの条件を安定的に満たすことは容易ではありません。

Airbnbが儲からない実際の要因は?

なぜ

実際のAirbnb運営では、表面的な収入に反して様々なコストが発生します。収益を圧迫する具体的な要因について、詳しく解説します。

高額なプラットフォーム手数料

Airbnbプラットフォームの利用には、宿泊料金に対して一定の手数料が発生します。ホストの手数料は宿泊料金の3%で、ゲストの手数料は14%前後となります。さらに、決済手数料や為替手数料なども加算されるため、実質的な手取り額は宿泊料金の85%程度になります。

また、キャンセル発生時の返金対応や、トラブル時の補償制度の利用にも追加の手数料が必要です。これらの費用は、特に単価の低い物件ほど収益を圧迫する要因となります。

清掃や備品費用の増大

清掃費用は物件の広さや設備によって異なりますが、一般的なマンションの1LDKタイプで1回あたり5,000円から8,000円程度が相場です。連泊の場合でも、チェックアウト後は必ず清掃が必要となるため、短期滞在が続くと清掃コストが大きく膨らみます。

消耗品の補充も重要な支出項目です。タオル類は3か月程度で交換が必要で、寝具類は年1回程度の交換が推奨されます。また、日用品や調理器具の破損も頻繁に発生し、年間の備品補充費用は物件あたり10万円以上になることもあります。

変動する光熱費と負担

光熱費は季節や利用者の使用状況により大きく変動します。特に夏季と冬季は冷暖房の使用により、電気代が通常の2倍から3倍に増加することもあります。

一般的な1LDKタイプの物件では、電気・ガス・水道を含めた月額の光熱費は、平均して1万5,000円から2万円程度発生します。これらの費用は宿泊料金に含める場合が多いため、稼働率が低い月は大きな負担となります。

規制や法律への対応コスト

住宅宿泊事業法に基づく届出には、消防設備の設置や定期点検が義務付けられています。火災報知器や消火器の設置、年2回の定期点検など、法令遵守のための費用は年間で5万円程度必要です。

また、近隣住民への説明や苦情対応、騒音対策などの環境整備にも費用が発生します。防音工事や監視カメラの設置など、追加の設備投資が必要になるケースもあります。

運営時間と労力の限界

セルフ管理での運営には、予約管理、チェックイン対応、清掃手配、メンテナンスなど、多岐にわたる業務が発生します。一般的な物件では、これらの業務に週10時間から15時間程度の時間が必要です。

深夜のチェックインや緊急トラブル対応など、時間外の対応も必須となります。本業と並行して運営する場合、時間的な制約から十分な対応ができず、評価の低下につながるリスクがあります。

稼働率が低迷するため

民泊施設の平均稼働率は、観光庁の統計によると40%から50%程度で推移しています。特に平日の予約獲得が難しく、週末と祝日に予約が集中する傾向があります。

また、季節による変動も大きく、オフシーズンは稼働率が30%を下回ることもあります。このような稼働率の低迷は、固定費の回収を困難にし、収益性を大きく低下させる要因となっています。

収益を改善するにはどうする?

Airbnbの運営で収益を上げるには、戦略的なアプローチが必要です。収益改善に向けた具体的な施策と、実践的な手法について解説します。

ダイナミックプライシングの導入

需要と供給のバランスに応じて柔軟に価格設定を行うダイナミックプライシングは、収益向上の有効な手段です。具体的には、イベント開催時や週末は通常料金の20~30%増し、平日やオフシーズンは10~15%減など、需要予測に基づいた価格調整が効果的です。

自動価格調整ツールを活用することで、競合物件の価格動向や周辺のイベント情報を考慮した最適な価格設定が可能になります。特に、繁忙期と閑散期の価格差を適切に設定することで、年間を通じた稼働率の安定化が期待できます。

独自コンセプトで差別化する

競合との差別化には、物件独自のテーマ設定が重要です。例えば、日本の伝統文化を体験できる和室スタイル、アーティストの作品を展示したギャラリー風の内装、地域の特産品を活かしたウェルカムギフトの提供など、特徴的な要素を取り入れることで、宿泊単価の向上が可能です。

体験価値を高める工夫として、地域の飲食店や観光スポットと連携したオリジナルガイドの作成や、地元の職人による伝統工芸体験の提供なども効果的です。これにより、通常の宿泊施設との差別化を図り、高付加価値なサービスとして認知されます。

レビュー促進とリピーター獲得

良質なレビューの獲得は、新規予約の増加に直結します。チェックアウト時に丁寧なフォローアップを行い、感想や改善点のヒアリングを実施することで、具体的なレビュー投稿を促進できます。

リピーター獲得には、連泊割引や季節限定の特典提供が効果的です。例えば、3泊以上の予約で10%割引、年間2回以上の利用で特別価格の適用など、具体的な特典を設定することで、継続的な利用を促進できます。

複数のプラットフォーム併用する

Airbnb以外の予約サイトやOTAにも物件を掲載することで、集客チャネルの多様化が図れます。Booking.comやExpediaなど、異なる客層にアプローチできるプラットフォームを活用することで、予約機会の増加が期待できます。

各プラットフォームの特性を活かした価格設定や、予約管理の一元化ツールの導入により、効率的な運営が可能になります。ただし、在庫管理や予約スケジュールの調整には細心の注意が必要です。

代行サービスを利用すると利益にどう影響する?

Airbnbの運営では、代行サービスの活用により収益構造が大きく変化します。代行サービス利用による具体的なメリットと収益への影響について、詳しく解説します。
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ホストの時間コスト削減できる

代行サービスの利用により、運営に関わる日常的な業務から解放されます。具体的には、予約管理や問い合わせ対応、チェックインガイド作成、緊急時対応など、運営に必要な作業を専門スタッフが24時間体制で担当します。

通常の運営では、問い合わせへの返信に平均30分以内の対応が求められ、チェックイン案内には1組あたり1時間程度の時間が必要です。代行サービスを利用することで、これらの対応時間を本業や他の収益活動に充てることが可能になります。

さらに、清掃スタッフの手配や備品管理なども一括して依頼できるため、管理負担が大幅に軽減されます。特に、深夜のトラブル対応や急な予約変更など、時間的な制約が大きい業務から解放されることで、精神的な負担も軽減されます。

プロによる価格設定により収益が向上できる

代行サービスでは、専門スタッフが市場動向やイベント情報を分析し、最適な価格設定を行います。需要予測に基づくダイナミックプライシングの導入により、平均宿泊単価の向上が期待できます。

実際のデータでは、代行サービスの導入により、適切な価格設定と予約管理の最適化で、年間の稼働率が15%から20%向上したケースが報告されています。特に、繁忙期の単価設定や、閑散期の稼働率向上において、専門的な知見が活かされます。

また、複数のプラットフォームを活用した販売戦略や、リピーター獲得に向けた施策の実施など、収益向上のための多角的なアプローチが可能になります。ただし、代行サービスの利用には売上の15%から20%程度の手数料が発生するため、収支バランスを考慮した判断が必要です。

まとめ

Airbnbの収益性は、市場競争の激化や運営コストの増大により、年々厳しさを増しています。しかし、需要に応じた柔軟な価格設定や独自の付加価値の創出、複数プラットフォームの活用など、適切な戦略を組み合わせることで、収益改善の余地は十分にあります。また、代行サービスの活用は、運営負担の軽減と専門的なマーケティングの導入により、安定的な収益確保への道を開く選択肢となります。

参考

宿泊旅行統計調査(令和5年4月・第2次速報、令和5年5月・第1次速報及び令和4年・年間値(確定値))