資産形成や安定収入を目指してホテルコンドミニアム投資を検討している方の中には、実際の失敗事例やリスクについて詳しく知りたいと考えている方も多いでしょう。
ホテルコンドミニアム投資は魅力的な投資商品として注目されていますが、立地選びの失敗、運営会社とのトラブル、想定外のランニングコスト、市場環境の変化など、さまざまなリスクが潜んでいます。
この記事では、ホテルコンドミニアム投資で失敗する主な理由を詳しく解説します。
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ホテルコンドミニアム投資で失敗する主な理由は?

ホテルコンドミニアム投資では、多くの投資家が期待していた収益を得られずに苦しんでいます。失敗の背景には、投資前の調査不足や市場環境の変化への対応不足など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。ここでは、ホテルコンドミニアム投資で失敗する代表的な理由を詳しく解説していきます。
立地選びを誤り、需要が見込めないエリアを選定してしまう
ホテルコンドミニアム投資における最も重要な要素の一つが立地選定です。多くの投資家が陥る失敗の筆頭が、この立地選びの誤りです。
観光地として人気があっても、実際の宿泊需要が継続的に見込めるかどうかは別問題です。一時的なブームや話題性だけで注目されている地域では、数年後には需要が大幅に減少する可能性があります。また、アクセスの利便性も重要な要素で、最寄り駅から遠い、公共交通機関の便が悪い、空港からのアクセスが困難な立地では、宿泊客の利用率が低くなります。
さらに、周辺の競合施設の存在も大きく影響します。大手ホテルチェーンや老舗旅館が多数存在するエリアでは、個人投資家のホテルコンドミニアムが価格競争に巻き込まれ、十分な収益を確保することが困難になります。地域の観光政策や開発計画の変更によって、将来的な需要予測が大きく外れることもあります。
立地選びの失敗を防ぐためには、過去数年間の宿泊統計データ、季節変動パターン、地域のイベント開催状況、将来の開発計画などを総合的に分析する必要があります。単純な人気度や知名度だけでなく、持続的な需要が見込める根拠を明確にすることが重要です。
運営会社の信頼性や実績が不十分で、運営トラブルが発生する
ホテルコンドミニアム投資では、多くの場合、専門の運営会社に物件の管理や宿泊客の対応を委託します。この運営会社選びの失敗が、投資全体の失敗につながるケースが後を絶ちません。
信頼性の低い運営会社を選んでしまうと、宿泊客への対応が不十分になり、クレームやトラブルが頻発します。清掃の質が悪い、設備の故障対応が遅い、予約管理システムが不安定、顧客対応が不適切などの問題が発生すると、宿泊客の満足度が低下し、リピート率や口コミ評価に悪影響を与えます。
また、運営会社の財務状況が不安定な場合、家賃収入の支払いが遅延したり、最悪の場合は倒産により運営が停止することもあります。運営実績が少ない新興企業の中には、ノウハウ不足により効率的な運営ができず、想定していた稼働率や収益を実現できないケースも多く見られます。
運営会社の選定では、過去の運営実績、財務状況、他の物件での稼働率や収益実績、トラブル対応体制、マーケティング力などを詳細に調査することが必要です。契約条件についても、手数料体系、解約条項、責任範囲などを明確にし、長期的なパートナーシップを築けるかどうかを慎重に判断することが重要です。
維持費や修繕積立金などランニングコストが想定より高額になる
ホテルコンドミニアム投資では、購入価格だけでなく、継続的に発生するランニングコストが収益性に大きく影響します。多くの投資家が見落としがちなのが、これらのコストの正確な把握です。
建物の共用部分の維持管理費は、一般的なマンションよりも高額になる傾向があります。ホテル仕様の設備や内装は、通常の住宅用設備よりも高品質で複雑なため、メンテナンス費用も相応に高くなります。エレベーターの保守点検、空調設備の管理、セキュリティシステムの維持、共用部分の清掃などの費用が継続的に発生します。
修繕積立金についても、将来の大規模修繕に備えて十分な金額を積み立てる必要があります。特に温泉地や海岸近くの物件では、湿気や塩害による劣化が進みやすく、修繕費用が高額になる傾向があります。外壁の塗装、屋上防水、設備の更新などの費用は、建物の築年数が進むにつれて増加していきます。
さらに、固定資産税や都市計画税などの税金負担、火災保険や地震保険の保険料、運営会社への管理委託費なども継続的に発生します。これらのコストを適切に見積もらずに投資を行うと、想定していた収益を大幅に下回る結果になります。
市場環境や観光需要の変動で稼働率が低下する
ホテルコンドミニアム投資は、観光業界の動向に大きく左右される投資商品です。市場環境の変化や観光需要の変動により、稼働率が想定を大幅に下回るリスクがあります。
新型コロナウイルスの感染拡大のような予期せぬ事態が発生すると、観光需要が急激に減少し、長期間にわたって稼働率が低迷します。また、経済不況や為替変動により、国内外からの観光客数が減少することもあります。特に外国人観光客に依存している地域では、国際情勢の変化や入国制限措置などの影響を大きく受けます。
季節による需要変動も重要な要因です。夏季の海水浴場や冬季のスキー場周辺の物件では、オフシーズンの稼働率が著しく低下します。年間を通じて安定した需要を確保することが困難な立地では、収益の季節変動が大きくなり、年間収支が赤字になるリスクがあります。
さらに、地域の観光資源の魅力低下や競合施設の増加により、相対的な競争力が低下することもあります。新しい観光スポットの開発や交通インフラの変化により、観光客の流れが変わることで、従来人気だった地域の需要が減少するケースも見られます。
物件の流動性が低く、売却時に損失を被るリスクがある
ホテルコンドミニアムは、一般的な居住用不動産と比較して流動性が低い投資商品です。売却を検討する際に、適切な買い手を見つけることが困難で、損失を被るリスクが高いことを理解しておく必要があります。
ホテルコンドミニアムの購入を検討する投資家は限定的で、市場参加者が少ないため、売却時の選択肢が限られます。また、収益物件としての評価が困難で、適正な価格設定が難しいという問題もあります。立地や運営状況、将来の収益予測など、複数の要因を総合的に評価する必要があるため、査定に時間がかかり、買い手との価格合意に至るまでの期間も長くなりがちです。
築年数が経過した物件では、設備の老朽化や修繕の必要性により、売却価格が大幅に下落する可能性があります。特に温泉地や観光地の物件では、建物の劣化が進みやすく、売却時の資産価値が購入時を大幅に下回ることがあります。
さらに、運営会社の変更や運営終了により、物件の収益性が不透明になった場合、売却がより困難になります。新しい運営会社を見つけるか、個人で運営を行うかの選択を迫られることもあり、いずれも時間とコストがかかる問題です。
ホテルコンドミニアム投資での失敗した体験談

ホテルコンドミニアム投資で失敗した実際の事例を通じて、どのような問題が発生し、投資家がどのような損失を被ったかを具体的に見ていきましょう。これらの失敗談から、投資前に注意すべきポイントや対策を学ぶことができます。
「立地選びを誤り借り手がつかなかった佐藤さん(46歳・自営業)」
自営業を営む佐藤さんは、将来の年金不安から不動産投資を検討し、箱根のホテルコンドミニアムに2500万円を投資しました。温泉地として有名な箱根なら安定した需要があると判断したのです。
しかし、選んだ物件は箱根湯本駅からバスで30分の奥地にあり、観光客の主要な動線から外れた立地でした。周辺には観光スポットも少なく、宿泊客にとって魅力的な立地とは言えませんでした。
運営開始から半年間、稼働率は10%を下回り、ほぼ空室状態が続きました。運営会社からは「シーズンになれば改善する」と説明を受けましたが、夏場のハイシーズンでも稼働率は30%程度にとどまりました。
さらに深刻だったのは、借り手がつかないことによる運営会社との契約問題でした。最低保証家賃の条項があったものの、運営会社の業績悪化により支払いが滞り、最終的に運営会社が撤退することになりました。
新しい運営会社を探すことも困難で、個人での運営も現実的ではありませんでした。物件は事実上の塩漬け状態となり、維持費だけが毎月発生する状況が続きました。
佐藤さんは「箱根という知名度だけで判断したのが間違いだった。同じ箱根でも立地によって需要は大きく異なる。実際に現地を訪れて、観光客の動向を調査すべきだった」と振り返っています。
「空室リスクで家賃収入が激減した田中さん(39歳・医師)」
医師として安定した収入のある田中さんは、税金対策と資産形成を目的に軽井沢のホテルコンドミニアムに3500万円を投資しました。軽井沢という知名度の高いリゾート地なら、安定した需要があると考えたのです。
投資開始当初の2年間は、年間稼働率60%程度で順調に推移していました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により状況が一変しました。緊急事態宣言や移動制限により観光需要が激減し、稼働率は10%以下まで落ち込みました。
さらに深刻だったのは、回復期における競争激化でした。感染拡大による経営難で、多くのホテルコンドミニアムオーナーが客室単価を大幅に下げて集客を図ったため、価格競争が激化しました。従来1泊2万円程度だった客室単価が、1万円以下まで下落しました。
稼働率が回復しても、単価下落により収益は以前の半分以下になりました。維持管理費や税金などの固定費は変わらないため、収支は大幅な赤字に転落しました。
田中さんは「医師という安定した職業があるから何とかなっているが、これが主要な収入源だったら大変なことになっていた。外部環境の変化に対するリスク管理が甘かった」と反省しています。
現在も収支改善の見通しは立っておらず、売却を検討していますが、同様の理由で売りに出されている物件が多く、買い手を見つけることが困難な状況が続いています。
ホテルコンドミニアム投資で後悔しないための対策は?

ホテルコンドミニアム投資で成功するためには、事前の十分な調査と慎重な判断が欠かせません。多くの失敗事例から学んだ教訓を活かし、リスクを最小限に抑えながら安定した収益を目指すための具体的な対策を解説します。
立地や周辺環境を慎重に調査し、需要の高いエリアを選ぶ
ホテルコンドミニアム投資における最重要要素である立地選定では、表面的な人気度や知名度だけでなく、持続的な需要が見込める根拠を詳細に調査することが必要です。
まず、対象地域の過去5年間の宿泊統計データを収集し、観光客数の推移、季節変動パターン、平均滞在日数、客室稼働率などを分析します。観光庁や地方自治体が公表している統計資料、ホテル業界団体のデータなどを活用し、客観的な数値に基づいて判断することが重要です。
交通アクセスの利便性も詳細に確認します。最寄り駅からの距離と所要時間、公共交通機関の運行頻度、空港や主要都市からのアクセス時間、駐車場の確保状況などを実際に現地で確認します。特に、公共交通機関を利用する宿泊客にとってアクセスしやすいかどうかは、稼働率に直結する重要な要素です。
周辺の観光資源や施設についても調査が必要です。主要な観光スポットとの距離、レストランや商業施設の充実度、イベントや祭りの開催状況、温泉や自然環境などの魅力度を評価します。また、将来的な開発計画や観光振興策についても、地方自治体の計画書などで確認します。
競合分析も欠かせません。周辺のホテルや旅館、民泊施設の数と規模、料金設定、稼働状況、口コミ評価などを調査し、市場での競争環境を把握します。大手ホテルチェーンや老舗旅館との競合関係、新規開業予定の施設についても情報収集を行います。
さらに、地域の長期的な将来性も考慮します。人口減少や高齢化の影響、地域経済の動向、観光政策の方向性、インフラ整備計画などを総合的に評価し、10年後、20年後も安定した需要が見込めるかどうかを判断します。
収益シミュレーションを複数パターンで行い、最悪ケースも想定する
ホテルコンドミニアム投資では、楽観的な収益予測だけでなく、様々なリスクシナリオを想定した収益シミュレーションを行うことが重要です。複数のパターンで検証することで、投資判断の精度を高めることができます。
基本シナリオでは、過去の実績データや市場動向を参考に、現実的な稼働率と客室単価を設定します。月別の季節変動も考慮し、年間を通じた収益の変動を詳細に計算します。稼働率については、新規物件の場合は開業後の立ち上がり期間も考慮し、段階的な上昇を想定します。
楽観シナリオでは、市場環境が良好に推移し、観光需要が増加した場合の収益を試算します。一方で、悲観シナリオでは、経済不況や感染症拡大、自然災害などにより観光需要が大幅に減少した場合の影響を評価します。稼働率が半分以下になった場合、客室単価が大幅に下落した場合など、複数の最悪ケースを想定します。
運営コストについても、複数のパターンで検証します。維持管理費や修繕積立金が想定より高額になった場合、大規模修繕が予定より早期に必要になった場合、運営会社の手数料が上昇した場合などの影響を試算します。
税金や保険料の変動、金利上昇による借入コストの増加なども考慮します。固定資産税の評価替えによる増税、保険料率の改定、借入金の金利見直しなどのリスクも織り込みます。
これらのシミュレーション結果を踏まえて、最悪ケースでも許容できる損失範囲内で投資規模を決定します。全体的な資産ポートフォリオの中での位置づけも考慮し、他の投資や収入源とのバランスを取ることが重要です。
維持費や修繕積立金などのランニングコストを事前に把握する
ホテルコンドミニアム投資では、購入後に継続的に発生するランニングコストが収益性に大きく影響するため、事前の正確な把握が不可欠です。
建物の維持管理費については、管理組合の収支報告書や長期修繕計画を詳細に確認します。エレベーターや空調設備の保守点検費、共用部分の清掃費、セキュリティシステムの維持費、光熱費などの項目別費用を把握します。同規模の類似物件の維持管理費とも比較し、適正な水準かどうかを判断します。
修繕積立金については、建物の築年数と今後の修繕計画を考慮して適正性を評価します。外壁塗装、屋上防水、設備更新などの大規模修繕費用を積立金で賄えるかどうか、不足する場合の追加負担の可能性を確認します。特に温泉地や海岸近くの物件では、塩害や湿気による劣化が早く進むため、通常より多めの積立金が必要になります。
運営会社への委託費についても、契約条件を詳細に確認します。基本管理費、予約手数料、清掃費、マーケティング費用などの内訳を把握し、他の運営会社との比較も行います。契約期間中の料金改定条項、解約時の条件なども確認しておきます。
税金関係では、固定資産税と都市計画税の年額を確認します。評価替えによる税額変動の可能性、軽減措置の適用条件と期限なども把握します。所得税については、不動産所得の計算方法と節税対策についても検討します。
保険料については、火災保険と地震保険の年額を確認します。建物の構造や立地条件により保険料率が異なるため、複数の保険会社から見積もりを取得します。津波や洪水などの自然災害リスクが高い地域では、特約の付帯も検討します。
これらのランニングコストをすべて合計し、家賃収入から差し引いた実質的な収益を算出します。想定稼働率での収益がランニングコストを十分に上回るかどうか、また稼働率が低下した場合でも赤字幅を許容範囲内に抑えられるかどうかを慎重に検討することが重要です。
まとめ
ホテルコンドミニアム投資で失敗する主な原因は、立地選びの誤り、運営会社の信頼性不足、想定外のランニングコスト、市場環境の変化、物件の流動性の低さなど、複数の要因が複雑に絡み合っています。実際の失敗事例では、収益の赤字継続、借り手不足、修繕費用の膨張、空室リスクによる収入激減など、深刻な損失を被った投資家が数多く存在します。
これらの失敗を回避するためには、立地や周辺環境の慎重な調査、複数パターンでの収益シミュレーション、ランニングコストの事前把握が不可欠です。表面的な人気度や知名度だけでなく、持続的な需要が見込める根拠を客観的なデータで検証し、最悪ケースも想定した投資判断を行うことが重要です。
ホテルコンドミニアム投資は適切な知識と準備があれば魅力的な投資商品ですが、リスクを軽視すると大きな損失につながる可能性があります。投資前の十分な調査と慎重な判断により、安全で収益性の高い投資を実現しましょう。