不動産をより効率的に活用したい方にとって、レンタルスペースと民泊の併用は魅力的な選択肢ではないでしょうか。同じ物件で日中はセミナールームやイベントスペースとして、夜間は宿泊施設として運用することで収益を最大化できる可能性があります。
しかし、「法的に可能なのか」「どんな準備が必要か」「運営上の注意点は何か」といった疑問をお持ちの方も多いはずです。
この記事では、レンタルスペースと民泊の併用を検討されている方に向けて、法的規制から具体的な運営ノウハウ、必要な設備投資まで、紹介します。
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レンタルスペースと民泊の併用は可能?

昼間はセミナーやイベント向けのレンタルスペース、夜間は宿泊施設として運用するというビジネスモデルは非常に魅力的です。
物件の稼働率を高めることで収益を最大化できる可能性がありますが、実際に併用は可能なのでしょうか?
許可をとれば可能
結論から言えば、必要な許可を取得すれば、レンタルスペースと民泊を併用して運営することは可能です。ただし、いくつかの法的ハードルをクリアする必要があります。
まず、民泊については大きく分けて2つの選択肢があります。一つは住宅宿泊事業法に基づく「民泊新法」での運営で、もう一つは旅館業法に基づく「簡易宿所営業」としての運営です。前者は年間180日という営業日数の制限がありますが、後者にはそのような制限はありません。レンタルスペースとの併用を考えるなら、営業日数の制限がない簡易宿所営業の許可を取るケースが多いです。
併用して運営するメリットとは?

レンタルスペースと民泊を併用して運営することには、単独で運営する場合と比べて様々なメリットがあります。
併用運営に踏み切る前に、具体的にどのようなメリットが得られるのか、しっかりと理解しておくことが大切です。これから紹介するメリットを自分の状況に当てはめながら、ビジネスプランを練り上げていきましょう。
収益を多様化することができる
レンタルスペースと民泊を併用する最大のメリットは、収益源の多様化です。単一の事業モデルに依存することなく、複数の収入源を確保することができます。
例えば、レンタルスペースとしては時間単位で貸し出す収益モデルを採用し、民泊では一泊単位の収益を得ることができます。両者の料金体系は全く異なるため、それぞれの市場価値に応じた価格設定が可能です。都心部の物件であれば、レンタルスペースは1時間あたり3,000円〜5,000円程度、民泊は1泊あたり10,000円〜20,000円程度の収益が見込めます。
また、季節や曜日による需要の変動にも対応しやすくなります。例えば、観光シーズンは民泊の需要が高まるため、その期間は民泊としての運用を優先させ、オフシーズンはレンタルスペースとしての活用に重点を置くといった柔軟な運営が可能です。
さらに、長期的な視点では、市場環境の変化に強いビジネスモデルを構築できます。民泊市場が一時的に落ち込んでも、レンタルスペース事業で収益を維持することができるため、リスク分散の効果も期待できます。
施設を効率的に活用できる
併用運営の大きなメリットとして、物件の稼働率向上による効率的な資産活用が挙げられます。通常、レンタルスペースは日中の利用が中心となり、民泊は夜間の利用が主となるため、24時間を通して施設を活用することができます。
具体的には、朝9時から夕方6時頃までをレンタルスペースとして活用し、夜7時から翌朝8時までを民泊として提供するといった運用が可能です。この時間配分によって、一日中ほとんど空き時間なく施設を稼働させることができます。
物件維持のための固定費(家賃、ローン返済、固定資産税など)は、施設の稼働の有無にかかわらず発生します。そのため、稼働していない時間帯が少なければ少ないほど、投資効率は向上します。実際、併用運営によって稼働率が単独運営時の1.5倍〜2倍になったという事例も少なくありません。
また、スペースの多目的利用も可能になります。例えば、リビングルームは日中はセミナースペースとして、夜はくつろぎの空間として活用できます。キッチンは料理教室の場としても、宿泊者の自炊スペースとしても機能します。このように、同じ設備に対して複数の用途を持たせることで、投資対効果を高めることができます。
さらに、繁忙期と閑散期の差が大きい事業特性を相互に補完することも可能です。
ターゲット層を拡大できる
レンタルスペースと民泊を併用することで、単独運営に比べて幅広い顧客層にアプローチすることが可能になります。
レンタルスペースの主な利用者としては、ビジネスミーティングを行う企業、セミナーや教室を開催する個人事業主、撮影や制作活動を行うクリエイターなどが挙げられます。
一方、民泊の利用者は、観光客、ビジネス出張者、長期滞在者などが中心となります。これらの異なる顧客層に同時にアプローチできることで、マーケティングの幅が広がります。
さらに、レンタルスペース利用者が民泊としても利用する、あるいはその逆のケースも生まれます。
需要に合わせて運用を調整できる
併用運営の大きな強みは、市場の変化や季節的な需要の波に合わせて、柔軟に運用方針を調整できる点にあります。これにより、常に最適な収益を追求することが可能になります。
例えば、観光シーズンや大型イベント開催時には民泊需要が高まるため、その期間は民泊としての運用を優先させることができます。逆に、ビジネスが活発な時期には日中のレンタルスペースとしての利用を増やすなど、状況に応じた柔軟な対応が可能です。
具体的な例として、年末年始やゴールデンウィークなどの長期休暇シーズンは民泊の需要が高まる傾向があります。こうした時期は民泊としての運用日数を増やし、平日や閑散期はレンタルスペースとしての営業に注力するといった調整が効果的です。
また、地域特性に合わせた運用も可能です。例えば、ビジネス街に位置する物件であれば、平日は会議室やコワーキングスペースとして、週末は観光客向けの宿泊施設として運用するといった方法が考えられます。観光地であれば、観光シーズンは民泊、オフシーズンはワーケーションスペースといった使い分けも効果的です。
運用ノウハウを蓄積できる
レンタルスペースと民泊という異なる事業を同時に運営することで、多様な運営ノウハウを蓄積できることも大きなメリットです。それぞれの事業で学んだ知識や経験は、互いに応用可能な部分が多く、総合的なホスピタリティ事業としての専門性を高めることができます。
例えば、レンタルスペース運営で得たお客様対応や予約管理のノウハウは、民泊運営にも活かせます。逆に、民泊で培った清掃・メンテナンスの技術や宿泊者の満足度を高めるための工夫は、レンタルスペースの快適性向上にも役立ちます。
具体的には、レンタルスペース運営では「利用目的に応じた最適なレイアウト提案」「音響・映像機器の操作サポート」「飲食サービスの提供」などのスキルが磨かれます。
一方、民泊運営では「効率的な清掃手順」「ゲストコミュニケーション」「地域情報の提供」などのノウハウが蓄積されます。これらの知識と経験は、それぞれの事業で相互に活用できます。
レンタルスペースと民泊の併用を成功するための準備は?

レンタルスペースと民泊を併用して運営するためには、一方だけを運営する場合と比べて幅広い準備が必要になります。両方の用途に対応できる設備や備品を揃えることはもちろん、それぞれの顧客層に合わせたマーケティング戦略も考慮しなければなりません。
レンタルスペースと民泊の両方で利用者に快適な時間を過ごしてもらうためには、どのような設備投資が必要なのでしょうか。
火災報知器
レンタルスペースと民泊の併用施設では、防火設備の中でも特に火災報知器の設置が法的に義務付けられています。消防法に基づき、宿泊施設としての安全基準を満たす必要があるため、適切な場所に十分な数の火災報知器を設置することが不可欠です。
火災報知器には大きく分けて煙感知式と熱感知式があります。一般的な居室やリビングスペースには煙感知式を、キッチンなど調理による煙が発生しやすい場所には熱感知式を設置するのが適切です。民泊施設では各部屋に1つ以上の火災報知器を設置することが基本となります。
具体的な設置場所としては、天井の中央部が基本です。壁に設置する場合は、天井から30cm以内の位置に取り付けます。設置後は定期的な点検も必要で、多くのメーカーでは半年に一度のテスト作動を推奨しています。
消火器
消火器は火災報知器と並んで重要な防火設備です。民泊施設として営業許可を取得するためには、消防法に基づいた適切な消火器の設置が必須条件となります。レンタルスペースでも消火器の設置が求められることが多く、併用施設では十分な数を確保する必要があります。
設置する消火器のタイプは、ABC粉末消火器が一般的です。これは木材や紙などの一般火災(A火災)、油や燃料などの油火災(B火災)、電気設備などの電気火災(C火災)の全てに対応しているためです。一般的な住宅用消火器であれば、重量3〜4kgのものが扱いやすく推奨されています。
消火器の設置場所については、キッチン付近や廊下などの共用スペースに配置するのが基本です。誰もが見つけやすく、使いやすい場所を選びましょう。特に、火の気を使う場所の近くに設置することが重要です。また、設置場所が分かりやすいように消火器の位置を示す表示も必要です。
併用施設では、レンタルスペースとしての利用時と民泊としての利用時の両方で火災リスクが発生するため、消火器を使用するシーンが異なることを想定しておく必要があります。それぞれのリスクに対応できるよう、適切な場所に消火器を配置しましょう。
ベッド
レンタルスペースと民泊を併用する場合、ベッドの選択と配置は特に重要な検討事項です。日中はレンタルスペースとして活用するスペースを、夜間は宿泊施設として快適に利用できるようにするための工夫が必要になります。
まず考慮すべきは、ベッドのタイプです。固定式のベッドを設置する場合、日中のレンタルスペース利用時にスペースを圧迫してしまう可能性があります。この問題を解決するために、折りたたみベッドやソファベッド、ウォールベッド(壁に収納できるタイプ)などの可変式のものを選ぶことが効果的です。
次に、ベッドのサイズとクオリティも検討すべきポイントです。民泊では宿泊者に良質な睡眠環境を提供することが高評価につながります。適切なマットレスの硬さ、寝具の質、ピローの種類なども重要です。一般的にシングルベッドは幅90〜100cm、セミダブルは120cm、ダブルは140cm、クイーンは160cm程度が標準サイズとなっています。
施設の広さや想定する宿泊人数に応じて、ベッドの数とサイズを選定します。例えば、30㎡程度の1LDKの場合、リビングにソファベッドを1台、寝室にダブルベッドを1台設置することで、最大4名程度の宿泊が可能になります。
また、ベッドメイキングや清掃のしやすさも重要な検討ポイントです。レンタルスペース利用後に短時間で宿泊準備をするケースも想定されるため、効率的にベッドメイキングができるよう、防水・防汚加工されたマットレスプロテクターや、交換しやすいシーツなどを用意しておくと良いでしょう。
キッチン用品
キッチン用品は、レンタルスペースと民泊の両方で重要な役割を果たします。レンタルスペースでは料理教室や会食イベントなどに、民泊では宿泊者の自炊に活用されるため、両用途に対応できる充実した設備が求められます。
基本的に必要なキッチン用品としては、以下のものが挙げられます。
- 調理器具(包丁、まな板、フライパン、鍋、菜箸、フライ返し、おたま、ボウル、ざる、計量カップ、計量スプーンなど。)
- 食器類:(皿、丼、汁椀、マグカップ、グラス、ナイフ、フォーク、スプーンなど。)
- 調味料・消耗品:(塩、胡椒、砂糖、醤油、みりん、料理酒、サラダ油などの調味料・キッチンペーパー、ラップ、アルミホイル、食器用洗剤、スポンジなどの消耗品)
- 電化製品:(冷蔵庫、電子レンジ、トースター、炊飯器、電気ケトルなどの基本的な調理家電)
レンタルスペースとして料理教室などに使用される場合は、複数人が同時に調理できるようなスペースや設備も考慮する必要があります。
一方、民泊としての利用では、宿泊者が自炊をしやすい環境を整えることが重要です。分かりやすく整理された収納や、使いやすい配置を心がけましょう。また、使用方法が複雑な設備については、簡単な説明書きを用意しておくと良いでしょう。
会議用テーブル
会議用テーブルは、レンタルスペースとしての用途では最も基本的かつ重要な設備の一つです。ビジネスミーティングやセミナー、ワークショップなど、様々な利用シーンに対応できる汎用性の高いテーブルを選ぶことが重要です。
まず考慮すべきは、テーブルのサイズと形状です。長方形のテーブルは会議やセミナーに適しており、円形や楕円形のテーブルはグループディスカッションやワークショップに向いています。スペースの広さに応じて適切なサイズを選ぶことが重要ですが、一般的には幅180cm×奥行90cm程度の長方形テーブルであれば、6〜8人程度が着席できます。
また、テーブルの素材も重要なポイントです。メラミン化粧板やラミネート加工されたものは、傷や汚れに強く、水拭きも可能なため、日常的なメンテナンスが容易です。木製の場合は、見た目の高級感がありますが、傷がつきやすく、メンテナンスが少し大変になります
テーブルと合わせて、快適な椅子も必要です。長時間の会議や作業に適した、座り心地の良いものを選びましょう。椅子も折りたたみ式や積み重ね可能なタイプだと、使用しないときの収納が容易です。椅子の価格は1脚5,000円〜3万円程度が一般的です。
さらに、テーブルクロスやテーブルマットなどの補助アイテムも用意しておくと、用途に応じて雰囲気を変えることができます。
プロジェクター
プロジェクターは、レンタルスペースとしての付加価値を高める重要な設備です。セミナー、プレゼンテーション、映画鑑賞会など、様々な用途で活用できるため、併用施設では特に重宝します。また、民泊としての利用時には、宿泊者へのエンターテイメントとしても提供できる魅力的なアイテムです。
プロジェクター選びで重要なポイントは、まず明るさ(輝度)です。一般的にはANSIルーメンという単位で表され、数値が大きいほど明るく投影できます。レンタルスペースとして使用する場合、日中の利用も想定されるため、3,000ルーメン以上の明るさがあると安心です。完全に遮光できる環境であれば、2,000ルーメン程度でも十分使用可能です。
次に解像度も重要な選定基準です。フルHD(1920×1080ピクセル)以上の解像度があれば、テキストや細かい図表も鮮明に投影できます。最近では4K対応のプロジェクターも増えていますが、価格も高くなるため、用途と予算に応じて選択しましょう。
また、接続方法も確認が必要です。HDMI端子はほぼ標準装備されていますが、他にもVGA、USB、Wi-Fi接続、Bluetooth接続など、様々な接続オプションがあると便利です。特に、スマートフォンやタブレットからワイヤレスで投影できる機能があると、利用者の利便性が大きく向上します。
Wi-Fiルーター
現代のビジネスやライフスタイルにおいて、安定したインターネット接続は不可欠です。レンタルスペースと民泊の両方で、高速で安定したWi-Fi環境を提供することは、利用者満足度を大きく左右する重要な要素となっています。
Wi-Fiルーターを選ぶ際に最も重要なのは、通信速度と安定性です。特にレンタルスペースでのビデオ会議やオンラインセミナー、民泊でのストリーミング視聴などでは、高速で安定した通信が求められます。
次に考慮すべきは、同時接続数です。レンタルスペースでは多くの人が同時にインターネットを利用することが想定されるため、多数の端末が同時接続しても性能が低下しないルーターを選ぶことが重要です。
また、利用者向けにWi-Fi接続方法やパスワードを記載した案内カードを用意しておくと、スムーズな利用が可能になります。QRコードを活用した接続方法を提供すれば、さらに便利です。
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キーボックス
キーボックスは、スマートロックを導入していない施設や、バックアップとして物理的な鍵も管理する必要がある場合に非常に便利な設備です。レンタルスペースと民泊を併用する施設では、複数の利用者に対して安全に鍵を受け渡す方法が必要になるため、キーボックスは重要な役割を果たします。
キーボックスには主に二つのタイプがあります。一つは暗証番号で解錠するタイプで、もう一つは物理的な鍵で開けるタイプです。レンタルスペースと民泊の併用施設では、暗証番号タイプが圧倒的に便利です。利用者ごとに異なる暗証番号を設定できるものであれば、さらに管理が容易になります。
さらに、設置場所も重要なポイントです。施設の入口付近の目立つ場所に設置すると利用者が見つけやすい反面、セキュリティ上のリスクも高まります。一般的には、建物のエントランスや玄関ドア付近の、人目につきにくい場所に設置することが推奨されます。また、カメラの死角になる場所は避け、できれば監視カメラの視野内に収まる位置が理想的です。
加えて、暗証番号の管理方法も事前に計画しておくことが大切です。利用者ごとに異なる暗証番号を設定し、利用終了後に変更するという運用が基本です。
また、キーボックスの使用方法を利用者に事前に説明することも重要です。予約確定時に送る案内メールに、キーボックスの場所や使用方法を詳しく記載しておくと良いでしょう。
さらに、キーボックス内に入れておく鍵の管理も重要です。予備の鍵を複数用意し、紛失時にもすぐに対応できるようにしておくことが大切です。また、鍵にはキーホルダーなどを付けて、何の鍵か分かりやすくしておくと親切です。
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併用して民泊運営する際に注意すべき点は?

レンタルスペースと民泊を併用して運営する場合、単独で運営する場合には発生しない課題や注意点が数多く存在します。
ここでは、レンタルスペースと民泊を併用して運営する際に特に注意すべきポイントについて詳しく見ていきましょう。
必要な許可を取得する
レンタルスペースと民泊を併用して運営する場合、それぞれの事業形態に必要な許可や届出を適切に取得・提出することが法的に求められます。この手続きを怠ると、行政からの指導や処分を受ける可能性があるため、開業前に必ず確認しておきましょう。
まず、民泊を運営するための主な選択肢としては、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく「住宅宿泊事業」と、旅館業法に基づく「簡易宿所営業」の二つがあります。レンタルスペースとの併用を考える場合、年間180日という営業日数の制限がある住宅宿泊事業よりも、そのような制限のない簡易宿所営業の方が適している場合が多いです。
一方、レンタルスペースについては、利用目的や規模によって必要な手続きが異なります。小規模な会議室やイベントスペースとして利用する場合は特別な許可が不要な場合もありますが、定期的に多数の利用者を見込む場合には、特定用途への用途変更の手続きが必要になることがあります。
また、物件が位置する地域の用途地域についても確認が必要です。用途地域によっては、レンタルスペースや宿泊施設としての利用が制限されている場合があります。さらに、区分所有建物(マンションなど)の場合は、管理規約で民泊やレンタルスペースとしての利用が禁止されていないかも確認しておく必要があります。
許可取得までの期間は、自治体や物件の状況によって異なりますが、一般的には申請から許可までに1〜3ヶ月程度かかることを見込んでおくとよいでしょう。
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スケジュールが重ならないよう調整する
レンタルスペースと民泊を併用して運営する際の最大の課題の一つが、予約スケジュールの管理です。同じ空間を異なる用途で利用するため、レンタルスペースの利用と民泊の宿泊が重ならないよう、綿密なスケジュール調整が必要になります。
まず、予約管理システムの選択が重要です。理想的には、レンタルスペースと民泊の両方の予約を一元管理できるシステムを導入することをお勧めします。
次に、運用時間の明確な区分が必要です。例えば、レンタルスペースは午前9時から午後6時まで、民泊は午後8時から翌朝8時までといったように、利用時間に余裕を持たせた設定が重要です。この2時間の間隔は、清掃や準備のための時間として確保しておくことが望ましいでしょう。
また、予約の受付ルールも明確にしておく必要があります。例えば、民泊の宿泊予約が入っている日は、その日のレンタルスペースの予約は午後4時までしか受け付けないなど、運用上のルールを事前に決めておくと、予約管理がスムーズになります。
さらに、急な予約変更やキャンセルに対応するための対策も必要です。特に民泊では、チェックイン時間の遅れや予定外の延長宿泊などが発生することがあります。そのような場合にも柔軟に対応できるよう、ある程度の余裕を持ったスケジュール設計が重要です。
清掃やメンテナンスを怠らないようにする
レンタルスペースと民泊を併用して運営する場合、清掃とメンテナンスの重要性はさらに高まります。それぞれの用途に応じた適切な清掃基準を設け、計画的にメンテナンスを行うことが、施設の品質維持と顧客満足度の向上につながります。
まず、清掃のタイミングと頻度を明確に設定しましょう。レンタルスペースとしての利用後と民泊のチェックアウト後には必ず清掃を行い、用途転換時には特に念入りな清掃が必要です。
次に、清掃のチェックリストを作成することが重要です。レンタルスペース用と民泊用の2種類のチェックリストを用意し、それぞれの用途に応じた清掃項目を漏れなく実施できるようにしましょう。
清掃スタッフの教育も重要です。両方の用途に対応できる清掃スキルを持ったスタッフを育成するか、専門の清掃業者に委託することを検討しましょう。
また、効率的な清掃のための備品や設備の選択も重要です。例えば、汚れが目立ちにくい素材の家具や、清掃しやすい構造の設備を選ぶことで、清掃の手間を減らすことができます。また、業務用の掃除機や洗剤など、プロ仕様の清掃用具を揃えることで、清掃の質と効率を高めることができます。
加えて、定期的なメンテナンスも欠かせません。日常的な清掃だけでなく、定期的な深清掃(ディープクリーニング)やメンテナンスを計画的に実施しましょう。例えば、月に一度はカーペットやカーテンのクリーニング、3か月に一度はエアコンのフィルター清掃、半年に一度は家具の点検や修理などのスケジュールを組んでおくとよいでしょう。
さらに、消耗品の管理システムも構築しておくことが重要です。トイレットペーパーやハンドソープなどの日用品から、コーヒーや紅茶などのサービス品まで、常に十分な在庫を確保しておく必要があります。在庫管理表を作成し、定期的にチェックする習慣をつけましょう。
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両方に対応した安全設備を用意する
レンタルスペースと民泊を併用する施設では、それぞれの用途に応じた安全対策が求められます。日中は不特定多数の人が出入りするレンタルスペースとして、夜間は宿泊者のプライベート空間として機能するため、両方の用途に対応した安全設備を整えることが不可欠です。
まず、防火・防災設備の充実が最重要課題です。簡易宿所営業の許可を取得するためには、消防法に基づいた設備の設置が義務付けられています。具体的には、消火器の設置、火災報知器の設置、避難経路の確保などが基本的な要件となります。
次に、セキュリティ対策も重要です。出入口のセキュリティを強化するために、スマートロックや監視カメラの設置が効果的です。特に、レンタルスペースとして多くの人が出入りする環境では、貴重品の管理や不審者の侵入防止が課題となります。宿泊者用の専用金庫を用意したり、重要な設備や備品は施錠できる収納スペースに保管したりするなどの対策が必要です。
また、プライバシー保護のための設備も必要です。例えば、レンタルスペース利用者が立ち入ることのできないプライベートエリア(宿泊者専用のベッドルームなど)を明確に区分し、施錠できるようにしておく必要があります。同様に、宿泊者の私物が日中のレンタルスペース利用者の目に触れないよう、収納スペースを確保しておくことも大切です。
緊急時の対応体制も両用途に対応したものが必要です。緊急連絡先リストの作成や、緊急時のマニュアルの整備、避難経路図の掲示などが基本的な対策となります。特に、外国人利用者も想定し、多言語対応の避難案内を用意しておくとよいでしょう。また、AEDや救急セットなどの救命設備を設置することも検討するとよいでしょう。
まとめ
レンタルスペースと民泊の併用は、適切な許可を取得すれば十分に実現可能な事業モデルです。簡易宿所営業の許可を取得し、必要な安全設備を整えることで、同じ物件を時間帯によって異なる用途で活用できます。
併用のメリットとしては、収益源の多様化、施設の効率的な活用、ターゲット層の拡大、需要に応じた柔軟な運用、そして両事業のノウハウ蓄積が挙げられます。成功させるためには、火災報知器や消火器などの安全設備、ベッドなどの宿泊設備、会議用テーブルやプロジェクターといったレンタルスペース用設備に加え、Wi-Fiルーターやスマートロックなどの双方に役立つ設備の導入が必要です。
また、必要な許可の取得、予約スケジュールの調整、徹底した清掃・メンテナンス、安全対策など、運営面での細やかな注意も欠かせません。両事業の相乗効果を最大限に引き出すことで、物件の潜在価値を高め、安定した収益確保につなげることができるでしょう。