別荘を所有しているものの、年間を通じた活用頻度が低く、維持費の負担に悩まれていませんか。また、収益物件として別荘の民泊運営を検討しているが、具体的な運営方法や必要な費用が分からず、踏み出せない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、別荘を民泊として活用する際のメリットやデメリット、必要な設備や費用、効果的な集客方法まで、実践的なノウハウを解説します。
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別荘を民泊として貸し出すメリットとは

メリット

別荘所有者の多くは、年間を通じて使用頻度が限られることから、維持管理の負担に悩まされています。また、コロナ禍以降、地方での長期滞在ニーズが高まり、別荘への注目度が上昇しています。

このような状況下で、別荘を民泊として活用することは、所有者にとって大きなメリットとなります。それでは具体的なメリットを詳しく解説していきます。

空き期間の有効活用で収益確保

別荘の稼働率を向上させることで、安定した収入源を確保することが可能です。都心部から2~3時間圏内の人気リゾート地域における宿泊単価は、平日で2万円から3万円、休日は3万円から5万円が相場となっています。月間稼働率が50%の場合、平均して45万円から75万円の月間売上が見込めます。

特に夏季や年末年始などの繁忙期には、宿泊単価を通常の1.5倍から2倍に設定することも可能です。需要の高いシーズンに合わせて価格を柔軟に変動させることで、収益を最大化できます。立地条件の良い物件では、年間稼働率70%以上を達成し、年間売上1,000万円を超える事例も存在します。

別荘の維持管理コストを賄える

別荘所有にかかる固定費は、所有者にとって大きな負担となります。固定資産税、管理費、光熱費、保険料などの年間維持費用は、物件の規模や立地により異なりますが、平均して100万円から200万円が必要です。これに加えて、経年劣化による修繕費用も発生します。

民泊運営による収入で、これらの固定費を相殺することができます。さらに、定期的な収入により、計画的な修繕や設備更新が可能となり、長期的な資産管理の観点からもメリットがあります。固定費を上回る収益を確保することで、別荘の所有自体を収益化することが可能になります。

定期的な利用で資産価値を維持

別荘を放置すると、建物や設備の劣化が急速に進行します。特に、水回りの設備や空調システムは、長期間使用しないことで不具合が発生しやすくなります。民泊として運営することで、定期的な利用と点検が行われ、建物の状態を良好に保つことができます。

具体的には、清掃スタッフによる週1回以上の室内点検、月1回の設備点検、季節ごとの総合メンテナンスなど、体系的な管理が実現できます。特に築10年以上の物件では、早期の不具合発見と対応が重要です。適切な維持管理により、大規模修繕のリスクを低減し、資産価値の維持につながります。

副業として始められる

別荘民泊は、既存の物件を活用するため、新規に不動産を取得する場合と比べて初期投資を抑えることができます。必要な設備投資は、消防設備の設置や内装のリニューアルなど、200万円から300万円程度で開始可能です。

運営面では、清掃やメンテナンス、予約管理などを代行サービスに委託することで、本業と両立しながらの運営が可能です。管理代行費用は売上の15%から30%が一般的ですが、実務作業から解放されることで、効率的な運営が実現できます。また、徐々に運営ノウハウを蓄積することで、将来的には完全な自社運営への移行も検討できます。

特に、年間売上が500万円を超える物件では、管理代行サービスを利用しても十分な収益性を確保できます。開業時は代行サービスを活用し、段階的に運営体制を整備していくことで、リスクを抑えながら事業を成長させることができます。

別荘を民泊として貸し出すのデメリットとは

デメリット

民泊運営には収益機会がある一方で、様々な制約やリスクが存在します。これから別荘の民泊運営を始める方に向けて、直面する可能性のある課題について詳しく解説していきます。

民泊禁止のエリアの可能性

別荘地には、管理規約で民泊営業を明確に禁止しているエリアが存在します。特に高級別荘地では、住環境の維持を目的として、商業利用に厳しい制限を設けています。区分所有建物の場合、管理組合の承認が必要となり、住民の合意形成なしでは営業を開始できません。

管理規約の変更には、区分所有者の4分の3以上の賛成が必要です。規約で民泊が禁止されているエリアでは、規約の改正手続きに1年以上かかることも一般的です。また、自治体によっては、住宅地での民泊営業を制限する条例を設けているケースもあります。事前に地域の規制状況を確認することが不可欠です。

年間営業日数の制限による収益制約

住宅宿泊事業法(民泊新法)では、年間の営業日数が180日以内に制限されています。この制限により、稼働率を最大でも50%程度に抑える必要があり、収益機会が限定されます。特に、繁忙期に営業日数を使い切ってしまうと、その後の需要に対応できなくなります。

180日の営業制限は、宿泊者の滞在日数ではなく、物件を提供する日数としてカウントされます。例えば、1週間の連続宿泊であっても7日分の営業日数を消化することになります。長期滞在者の受け入れは、営業日数を急速に消費するため、慎重な運営計画が必要です。
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日常的な管理運営の手間

民泊運営では、予約対応から清掃、設備管理まで、継続的な業務が発生します。特に、チェックインとチェックアウトの対応は、時間的な拘束が大きく、深夜や早朝の対応が必要となることもあります。清掃スタッフの手配や管理も、オーナーの重要な業務となります。

具体的な業務として、宿泊前の事前連絡、鍵の受け渡し、設備の説明、トラブル対応、チェックアウト後の点検などがあります。1組の宿泊者に対して、平均3時間から5時間の業務時間が必要です。また、急なキャンセルや予約変更への対応も求められ、柔軟な時間管理が必要となります。

近隣トラブルのリスク

別荘地は静かな環境が求められるため、宿泊者による騒音やマナー違反は、深刻な近隣トラブルにつながります。特に、深夜のバーベキューや大声での会話、路上駐車などが問題となりやすく、近隣住民からのクレームにつながります。

ゴミ出しルールの違反も頻発する問題です。地域によってゴミの分別方法や収集日が異なるため、宿泊者が正しく対応できないケースが多くあります。また、定員オーバーや無断での宿泊者の追加も、トラブルの原因となります。一度深刻なトラブルが発生すると、地域全体から民泊営業への反対意見が高まり、事業継続が困難になるケースもあります。

これらのトラブルを防ぐために、宿泊者への詳細な説明と、24時間対応可能な管理体制の構築が必要です。しかし、これらの対策は運営コストの増加につながり、収益性に影響を与える要因となります。

別荘民泊の必要なものとは

民泊運営を始めるにあたり、法令遵守と快適な宿泊環境の整備が不可欠です。特に安全面での設備充実は、事故防止と緊急時対応の観点から最優先で取り組む必要があります。

ここでは、施設に必要な設備や備品について、重要度の高いものから詳しく解説していきます。

法令で定められた消防設備の設置

住宅宿泊事業法及び消防法に基づき、必要な消防設備を適切に設置することが求められます。火災報知器は寝室及び台所に設置が必須であり、誘導灯は非常口を示すために必要です。火災報知器の設置位置は天井面が基本となり、天井から壁面までの距離が60cm未満の場合は壁面への設置も認められます。

自動火災報知設備の設置費用は、一般的な別荘の規模で30万円から50万円程度が目安です。消火器は各階に1本以上の設置が必要で、使用期限は5年となります。これらの消防設備は定期点検が義務付けられており、年1回の専門業者による点検と報告が必要です。

快適な滞在のための基本設備

長期滞在に対応できる設備の整備が必要です。キッチンには、IHクッキングヒーターや冷蔵庫、電子レンジなどの調理機器に加え、食器類や調理器具一式が必要です。浴室には、温水器の容量が宿泊定員に適したものを選定し、清潔なバスマットや備品を用意します。

特に重要なのは空調設備です。エアコンは各居室への設置が推奨され、夏季や冬季の快適な室温管理が求められます。また、インターネット環境の整備も必須で、高速Wi-Fiの導入により、長期滞在者のニーズに対応できます。設備投資の総額は、物件の規模にもよりますが、100万円から200万円程度を見込む必要があります。

宿泊者向けアメニティの準備

宿泊者の滞在期間や人数に応じて、適切な量のアメニティを準備します。基本的なアメニティとして、バスタオル、フェイスタオル、歯ブラシセット、シャンプー類が必要です。一般的な宿泊施設と同等のアメニティを提供することで、宿泊者の満足度向上につながります。

消耗品の在庫管理も重要です。トイレットペーパー、ティッシュペーパー、洗剤類は、次の宿泊者のために常に適量を確保しておく必要があります。アメニティの初期費用は20万円から30万円程度で、月間の補充費用は宿泊者数に応じて5万円から10万円程度が必要です。

清掃用具と備品の確保

清潔な環境を維持するための清掃用具は、プロ仕様のものを選定します。掃除機、モップ、雑巾などの基本的な清掃道具に加え、除菌スプレーや消臭剤などの衛生用品も必要です。特に、コロナ禍での衛生管理強化により、除菌作業用の専用器具の導入も検討が必要です。

リネン類は、ベッドシーツ、枕カバー、布団カバーを宿泊定員の3セット分以上用意します。洗濯と乾燥に時間がかかるため、予備のセットを確保することで、連続した宿泊受け入れにも対応できます。清掃用具とリネン類の初期費用は、30万円から50万円程度を見込みます。また、リネンのクリーニング費用は、1組の宿泊あたり3,000円から5,000円程度が必要です。

別荘民泊の運営に必要な費用は

民泊事業の収益性を検討する上で、必要な費用を正確に把握することは極めて重要です。運営費用は、初期投資、固定費用、変動費用の3つに大きく分類されます。

それぞれの費用について、データに基づいて詳しく解説していきます。

初期投資費用

民泊運営を開始するための初期投資は、物件の状態や規模によって大きく異なります。築10年以内の物件では、基本的な設備投資を中心に検討できますが、築年数が経過している物件では、大規模な改修工事が必要になる場合があります。

消防設備の設置には、自動火災報知設備、誘導灯、消火器など、合計で30万円から50万円が必要です。キッチン設備の更新には、IHクッキングヒーター、食洗機、電子レンジなどで50万円から80万円、浴室やトイレの改修には100万円から150万円程度が必要となります。

家具や電化製品では、ベッド、ソファ、テレビ、エアコンなどの購入に150万円から200万円が必要です。高級別荘地では、上質な家具やインテリアが求められるため、さらに費用が増加します。また、Wi-Fi環境の整備や防犯カメラの設置など、通信・セキュリティ関連の投資として30万円から50万円を見込む必要があります。

月々の固定費用

固定費用は、稼働率に関係なく毎月発生する費用です。管理費は別荘地の管理組合に支払うもので、月額3万円から10万円が一般的です。管理費には、共用部分の維持管理や警備費用が含まれています。固定資産税は物件の評価額によって異なりますが、年間で30万円から100万円程度です。

火災保険料は年間10万円から20万円、民泊専用の賠償責任保険料が年間5万円から10万円必要です。また、民泊運営に関する許認可の更新費用として、年間5万円程度を計上する必要があります。運営代行サービスを利用する場合は、売上の15%から30%が月々の固定費として発生します。

運営にかかる変動費

変動費は宿泊者数に応じて増減する費用です。水道光熱費は、1組の宿泊あたり3,000円から5,000円が目安となります。夏季のエアコン使用時や、大人数での宿泊時には費用が増加します。インターネット利用料は月額5,000円から8,000円で、プロバイダーや回線速度によって異なります。

清掃費用は1回あたり1万円から2万円で、宿泊人数や滞在日数によって変動します。リネン類のクリーニング費用は1組の宿泊あたり3,000円から5,000円必要です。アメニティや消耗品の補充費用は、月間の宿泊者数に応じて5万円から10万円程度を見込みます。

設備の定期メンテナンス費用として、エアコンの清掃や給湯器の点検などに、年間20万円から30万円が必要です。また、突発的な修繕費用に備えて、月額2万円から3万円程度の積立金を設定することが推奨されます。これらの費用を総合すると、月間の変動費は稼働率50%の場合、20万円から30万円程度となります。

別荘民泊の集客方法は

民泊事業の成功には、効果的な集客戦略が不可欠です。特に別荘物件は、一般的な都市部の民泊と異なり、立地や施設の特徴を活かした独自の魅力訴求が重要となります。

現在の民泊市場で効果的な集客方法について、実践的な視点から解説していきます。

予約サイトを選び

予約プラットフォームの選択は、ターゲット層への効果的なリーチを左右する重要な要素です。特にAirbnbは国内外の個人旅行者に強く、特にインバウンド需要の取り込みに効果的です。プラットフォーム手数料は売上の3%から15%で、決済代行や補償制度が含まれています。

Booking.comは、国内旅行者やビジネス利用のニーズが高く、手数料は15%から20%となります。予約管理システムが充実しており、長期滞在者の受け入れにも対応しやすい特徴があります。両サイトに物件を掲載することで、予約経路の分散化が図れ、稼働率の向上につながります。

管理面では、複数の予約サイトのカレンダーを一元管理できるチャネルマネージャーの導入が推奨されます。月額利用料は1万円から2万円程度ですが、予約の重複を防ぎ、効率的な運営が可能になります。特に繁忙期は、予約サイト間で料金設定を柔軟に変更することで、収益を最大化できます。

魅力的な物件写真の撮影

プロのカメラマンによる撮影は、初期投資として5万円から10万円程度必要ですが、予約率の向上に直結する重要な要素です。室内の明るさや広さを適切に表現し、家具や設備の質感を伝える写真は、予約の決め手となります。

撮影のポイントとして、自然光を活用した明るい室内写真や、窓からの眺望を活かしたアングルが効果的です。リビングやダイニングは、家具の配置やインテリアの調和を意識した構図で撮影します。寝室は清潔感とくつろぎ感を演出し、バスルームは清潔感と設備の充実度を伝える写真が重要です。

外観写真では、建物全体の佇まいに加え、周辺環境や季節感を表現することで、別荘ならではの魅力を伝えることができます。四季の変化が美しい地域では、季節ごとの写真更新も検討に値します。写真は20枚から30枚を目安に、物件の特徴を余すことなく伝える構成が求められます。

適切な価格設定

価格設定は、立地条件や競合物件の料金を考慮しながら、季節変動に応じて柔軟に調整します。繁忙期(夏季休暇、年末年始、ゴールデンウィーク)は、通常料金の1.5倍から2倍の設定が可能です。一方、オフシーズンは、長期滞在割引などの特典を設けることで、稼働率の維持を図ります。

具体的な料金設定例として、平日は2万円から3万円、週末は3万円から5万円を基準とし、繁忙期は5万円から8万円に引き上げることが一般的です。宿泊人数による追加料金は、1名あたり3,000円から5,000円に設定し、定員を超える予約は受け付けないルールを徹底します。

競合分析では、周辺2km圏内の類似物件の価格帯をモニタリングします。特に新規参入時は、競合より10%から20%低い価格設定からスタートし、レビュー評価の蓄積に応じて段階的に価格を調整していく戦略が効果的です。予約率が80%を超える場合は、価格の引き上げを検討する判断基準となります。

別荘民泊の成功のポイントは

別荘民泊市場は年々競争が激化しており、単に物件を提供するだけでは安定した収益を確保することが困難になっています。成功の鍵は、物件の特徴を活かした独自の価値提供と、効率的な運営体制の構築にあります。実践的な成功のポイントについて、具体的な事例を交えながら解説していきます。

差別化戦略の構築する

別荘民泊の差別化には、物件の特徴とターゲット層のニーズを的確に結びつけることが重要です。たとえば、温泉地に位置する別荘では、露天風呂付きの客室や、地域の温泉施設との提携による特別利用権の提供が差別化要因となります。自然豊かな立地を活かし、テラスでのバーベキューセットの完備や、地元農家との連携による新鮮な食材の提供サービスも、付加価値を高める効果的な戦略です。

施設面での差別化として、ワーケーション需要を取り込むための高速Wi-Fi環境の整備や、Web会議に適した作業スペースの設置が挙げられます。長期滞在者向けには、調理器具の充実や宅配サービスの受け入れ体制の整備が重要です。特に、コロナ禍以降増加している、2週間以上の長期滞在者に対しては、洗濯機や乾燥機の設置が必須となっています。

地域特性を活かしたサービスとして、スキーリゾートであれば、スキー用具のレンタルや、リフト券の事前予約サービスの提供が差別化につながります。海辺の別荘では、マリンアクティビティの予約代行や、釣り具のレンタルサービスが喜ばれます

運営代行会社を選び戦略立案を委託

運営代行会社の選定は、事業の成否を左右する重要な決定となります。代行会社の選定基準として、地域での運営実績、対応可能なサービスの範囲、緊急時の対応体制、手数料の水準などが重要です。

代行会社への委託費用は、売上の15%から30%が一般的です。基本的な清掃・予約管理に加え、24時間対応のカスタマーサポート、設備トラブルの緊急対応、集客支援などのサービスが含まれる場合は、より高い手数料率となります。ただし、これらのサービスは、オーナーの負担軽減と顧客満足度の向上に直結するため、投資効果は十分にあります。

代行会社との契約では、業務範囲と責任分界点を明確にすることが重要です。特に、設備の修繕判断や、追加サービスの提供における権限委譲の範囲は、書面で合意しておく必要があります。また、月次の収支報告や稼働率の分析、改善提案などのレポーティング体制も、重要な選定基準となります。

成功事例として、運営代行会社との協力により、年間稼働率70%以上、客単価4万円を実現している物件があります。この事例では、代行会社のノウハウを活用した効果的な価格戦略と、地域性を活かしたオプションサービスの提供により、高い顧客満足度を維持しています。さらに、リピーター獲得に向けた独自のポイントプログラムの導入や、季節ごとのイベント企画により、安定的な収益を確保しています。
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まとめ

別荘を民泊として活用するには、法規制や地域ルールの確認から始め、必要な設備投資と運営体制の整備を計画的に進めることが重要です。初期投資と運営費用を適切に見積もり、ターゲット層のニーズに合わせた差別化戦略を構築することで、安定した収益確保が可能になります。

特に、運営代行サービスの活用や効果的な集客施策の実施により、本業と両立しながらの運営も実現できます。成功のカギは、地域特性を活かした独自の価値提供と、効率的な運営体制の構築にあります。適切な準備と戦略的なアプローチにより、別荘の資産価値を維持しながら、新たな収益源として活用することができます。