空き物件の活用方法として、民泊とレンタルスペース、どちらを選ぶべきか悩んでいませんか?両者は一見似ているようで、実は運営方法や必要な投資、収益性まで大きく異なります。不動産投資や副業として検討されている方の中には、それぞれの特徴や違いが分からず、選択に迷われている方も多いはずです。
この記事では、民泊とレンタルスペースの違いを、初期投資から運営手法、収益性まで徹底的に解説します。
民泊とレンタルスペースの違いとは?

民泊とレンタルスペースですが、この2つのサービスには、大きな違いがあります。その違いを詳しく解説していきます。
貸し出し時間の違い
民泊とレンタルスペースでは、貸し出し時間の考え方が根本的に異なります。この違いは、収益構造や運営方法に大きく影響を与える要素となっています。
民泊の場合、基本的に1泊単位での貸し出しが基本となります。チェックインからチェックアウトまでの時間は通常15時から翌朝10時といった具合に、宿泊施設としての時間設定が一般的です。長期滞在のゲストを受け入れることも可能で、連泊による安定した収益が期待できます。
一方、レンタルスペースは1時間単位からの柔軟な貸し出しが可能です。会議や撮影、料理教室など、利用目的に応じて必要な時間だけ借りることができます。例えば、平日の日中は会議利用、夜間はパーティー利用というように、1日の中でも異なる用途で複数回貸し出すことが可能です。
また、レンタルスペースでは早朝から深夜まで、利用者のニーズに合わせた時間設定ができます。24時間利用可能な施設も増えており、より柔軟な運用が可能となっています。
提供サービスの範囲
民泊とレンタルスペースでは、提供すべきサービスの内容や範囲が大きく異なります。それぞれの特性を理解することで、運営開始前の準備や投資計画を適切に立てることができます。
民泊の場合、宿泊に必要な設備やアメニティの提供が必須となります。具体的には、ベッドやリネン類、タオル、バスアメニティなどの寝具・衛生用品に加え、キッチン用品や家電製品なども必要です。また、外国人旅行者の受け入れを想定する場合は、Wi-Fi環境の整備や多言語対応の案内表示なども重要な要素となります。
これに対してレンタルスペースは、空間そのものの貸し出しが基本となります。机や椅子などの基本的な備品は必要ですが、宿泊設備ほどの充実は求められません。ただし、用途に応じた設備の充実度が集客力に直結します。例えば、料理教室向けであれば調理設備、音楽活動向けであれば防音設備といった具合です。
さらに、民泊では24時間体制での緊急対応が求められる一方、レンタルスペースは利用時間内のサポートが中心となります。このような運営面での違いは、人員配置や管理体制の設計に影響を与えます。
収益性を比較!どちらが儲かる?

物件活用の方法を検討する際、収益性は重要な判断材料となります。民泊とレンタルスペース、それぞれの収益構造には特徴があり、物件の立地や規模によって最適な選択は変わってきます。
ここでは、投資判断の基準となる収益性について、具体的な数字を交えながら詳しく見ていきましょう。
初期投資の金額
物件活用を始める際の初期投資額は、その後の収益性に大きく影響します。民泊とレンタルスペースでは、必要な設備や改装の範囲が異なるため、投資額にも差が生じます。
民泊の場合、宿泊施設としての機能を満たすための投資が必要です。ベッドや寝具類、家電製品などの備品購入に加え、キッチンやバスルームの改装、防音・断熱工事なども考慮が必要です。一般的な1DKの物件で見積もると、備品購入に80万円前後、改装工事が必要な場合は150万円前後の初期投資が目安となります。
一方、レンタルスペースは用途に応じた設備投資で済むため、初期投資を抑えることが可能です。会議室として利用する場合、机や椅子、プロジェクターなどの備品購入で50万円程度、簡単な内装工事で70万円程度と、合計120万円程度で開業できるケースも少なくありません。
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安定収入 vs 高単価
収益性を考える上で、収入の安定性と単価の高さは重要なポイントとなります。民泊とレンタルスペースでは、この2つの要素にそれぞれ特徴があります。
民泊の場合、観光シーズンには高単価での提供が可能です。都心部の物件であれば、1泊2万円以上の料金設定も珍しくありません。また、連泊による安定した収入も期待できます。
レンタルスペースは時間単位の料金設定となり、1時間あたり1,000円〜3,000円程度が一般的です。一見すると単価は低く見えますが、1日に複数回の利用が見込めるため、結果的に高い収益を上げることも可能です。
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ランニングコスト比較
収益性を左右する重要な要素として、日々の運営にかかるコストがあります。両者では必要な維持管理の内容が異なるため、ランニングコストにも大きな違いが生じます。
民泊の場合、清掃費用が大きな負担となります。1組のゲストごとにシーツ交換や室内清掃が必要で、1回あたり5,000円〜8,000円程度の費用が発生します。また、タオルやアメニティの補充、消耗品の管理なども定期的に必要となり、月間の維持費は10万円程度に達することもあります。
レンタルスペースでは、利用後の簡単な清掃で済むケースが多く、清掃費用を抑えることが可能です。また、アメニティの提供も最小限で済むため、月間の維持費は5万円程度に抑えられることも珍しくありません。
繁忙期・閑散期の差
収益の季節変動は、安定的な運営を考える上で重要なポイントです。民泊とレンタルスペースでは、繁忙期と閑散期の差が大きく異なります。
民泊は観光需要に左右されやすく、春休みやゴールデンウィーク、夏休みなどの長期休暇シーズンが繁忙期となります。この時期は通常の2〜3倍の料金設定も可能です。一方、閑散期は稼働率が30%を下回ることも珍しくなく、収益の変動が大きくなります。
レンタルスペースは、イベントや会議の需要が比較的安定しているため、季節による変動が小さいのが特徴です。特に、ビジネス街に位置する物件では、平日の会議利用を中心に安定した稼働が見込めます。また、土日はパーティーや教室利用など、異なる用途での需要も期待できます。
顧客層はどう違う?

収益性の高い運営を実現するためには、ターゲットとなる顧客層を正確に把握することが重要です。民泊とレンタルスペースでは、利用する顧客の属性や求めるニーズが大きく異なります。
ターゲット顧客の違い
民泊とレンタルスペースでは、主たる利用者層が明確に分かれています。この違いは、施設の設計やサービス内容を検討する際の重要な指針となります。
民泊の利用者は、主に観光目的の旅行者です。国内旅行者に加え、近年では訪日外国人旅行者の利用も増加しています。特に、家族や友人グループでの利用が多く、ホテルよりもリーズナブルに滞在できる点が好評です。年齢層は20代から40代が中心で、SNSでの情報収集に長けた層が多いのが特徴です。
一方、レンタルスペースの利用者は、ビジネスパーソンやクリエイター、教室主催者など、多岐にわたります。平日はビジネス目的での利用が中心となり、会社員や個人事業主による会議やセミナーの開催が主流です。休日は趣味の集まりや教室、撮影会など、より多様な目的での利用が見られます。
利用目的の違い
利用目的の違いは、施設に求められる機能や設備にも影響を与えます。それぞれの利用シーンに応じた適切な環境整備が求められます。
民泊の利用者は、「暮らすような旅」を求める傾向があります。単なる宿泊場所としてだけでなく、現地の生活を体験できる場所として民泊を選択します。キッチンで地元の食材を調理したり、近隣住民との交流を楽しんだりと、ホテルでは得られない体験を重視します。
レンタルスペースの利用者は、目的に応じた機能性を重視します。会議利用であれば、プロジェクターやホワイトボードなどの備品が整っていることが重要です。また、料理教室であれば調理設備、音楽活動であれば防音設備というように、用途に特化した機能が求められます。
顧客ニーズの違い
民泊の利用者は、滞在時の快適性や安心感を重視します。清潔なベッドリネン、充実したアメニティ、24時間対応可能なサポート体制など、宿泊施設としての基本的な機能が求められます。また、Wi-Fi環境や充電設備など、現代の旅行者に欠かせない設備も重要です。
レンタルスペース利用者は、利用時間中の機能性とコストパフォーマンスを重視します。予約から決済までのスムーズな手続き、必要な設備の確実な提供、トラブル時の迅速な対応など、ビジネスライクな対応が求められます。
運営の手間はどれくらい?

物件活用の成否を左右する重要な要素として、日々の運営にかかる手間があります。収益性の高さだけでなく、運営者の負担を考慮することで、持続可能なビジネスモデルを構築できます。
予約管理
民泊の場合、1日1組の宿泊が基本となるため、予約数自体は比較的少なくなります。しかし、宿泊期間が複数日にまたがるケースも多く、予約の重複を避けるための綿密なスケジュール管理が必要です。また、予約プラットフォームごとにカレンダーを同期させる作業も欠かせません。
レンタルスペースでは、1日に複数の予約を受け付けるため、予約数は民泊よりも多くなります。時間単位での予約管理が必要となり、特に人気の時間帯では予約が集中することもあります。そのため、予約システムの活用が必須で、自動化できる部分は積極的に取り入れることが運営の効率化につながります。
顧客対応の頻度
民泊では、チェックインからチェックアウトまでの一連の対応が必要です。鍵の受け渡しや設備の説明、緊急時の対応など、24時間体制でのサポートが求められます。特に外国人観光客の場合、言語対応も必要となり、より丁寧なコミュニケーションが求められます。
レンタルスペースの場合、利用時間内での対応が中心となります。入室時の簡単な説明と退室時の確認程度で済むケースが多く、対面での長時間の対応は少なくなります。ただし、機材トラブルなど、緊急の問い合わせには迅速な対応が必要です。
設備管理の頻度
民泊では、宿泊者が快適に過ごすための細やかな設備管理が必要です。寝具やタオル類の洗濯・交換、アメニティの補充、家電製品の点検など、頻繁なメンテナンスが求められます。また、水回りや空調設備の定期点検も欠かせません。
レンタルスペースでは、利用目的に応じた設備の維持管理が中心となります。会議室であれば備品の点検や消耗品の補充、調理スペースであれば調理器具の点検や清掃など、用途に特化した管理が必要です。民泊と比べると管理項目は少なくなりますが、業務用設備の場合は専門的な保守が必要となることも。
トラブル対応の種類
民泊では、生活に関連するトラブルが中心となります。水回りのトラブルや家電の故障、騒音問題など、居住に関わる様々な事態に対応する必要があります。また、近隣住民とのトラブルも発生しやすく、コミュニティとの良好な関係維持も重要な課題となります。
レンタルスペースでは、施設・設備に関するトラブルが主となります。機材の不具合や予約時間の超過、破損や汚損など、利用中に発生する問題への対応が求められます。また、利用者間のトラブルを未然に防ぐため、利用規約の整備と徹底も重要です。
始めるまでのハードルは?

民泊やレンタルスペースを検討する際、開業までのハードルを正確に把握することが重要です。
ここでは、実際の開業までのプロセスを詳しく解説します。
参入のしやすさ
事業を始める際の初期ハードルは、投資規模や必要なノウハウによって大きく異なります。
民泊の場合、住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行により、以前と比べて参入のハードルは下がりました。しかし、宿泊施設としての設備投資や運営ノウハウの習得には、相応の時間と費用が必要です。特に、防火設備の設置や騒音対策など、安全面での投資は必須となります。また、外国人観光客への対応を想定する場合は、多言語対応の準備も欠かせません。
一方、レンタルスペースは比較的参入がしやすい傾向にあります。最小限の設備投資から始められ、徐々に規模を拡大することも可能です。また、運営ノウハウも民泊と比べてシンプルで、予約管理システムの活用により効率的な運営が可能です。特に、既存の居室をそのまま活用できるケースも多く、初期投資を抑えられる点が特徴です。
物件取得の難易度
事業用の物件を確保する際には、様々な制約や条件をクリアする必要があります。
民泊では、住宅地域での営業に制限があるため、適切な物件の確保が課題となります。特に、条例による規制が厳しい地域では、営業可能な物件が限られます。また、マンションの場合は管理規約で民泊が禁止されているケースも多く、物件選びには慎重な調査が必要です。物件購入の場合は、将来的な価値変動も考慮に入れる必要があります。
レンタルスペースの場合、比較的柔軟な物件選択が可能です。住宅地での営業制限も民泊ほど厳しくなく、オフィスビルや商業施設内のスペースも活用できます。賃貸物件での開業も容易で、契約時に用途を明確にすれば、多くのオーナーから理解が得られやすい傾向にあります。
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開業に必要な手続き
法的要件を満たし、適切に事業を開始するためには、各種手続きを確実に行う必要があります。事業形態によって必要な手続きは異なり、準備期間にも差が生じます。
民泊の開業には、住宅宿泊事業法に基づく届出が必要です。届出から営業開始までに最低でも2週間程度かかり、消防法や建築基準法の要件も満たす必要があります。また、地域によっては条例による追加の規制もあり、事前の確認が欠かせません。さらに、外国人観光客の受け入れを想定する場合は、旅館業法に基づく許可を取得することで、年間営業日数の制限なく運営することも可能です。
レンタルスペースの開業手続きは、比較的シンプルです。基本的には一般的な事業開業と同様の手続きで済み、特別な許可は不要なケースが多いです。ただし、飲食を伴うイベントスペースとして使用する場合は、保健所への届出が必要となることもあります。また、音楽スタジオなど特殊な用途の場合は、防音工事の確認申請など追加の手続きが必要となる場合もあります。
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まとめ
民泊とレンタルスペース、それぞれに特徴的な強みと課題があります。民泊は宿泊施設としての機能性と快適性が求められ、初期投資や運営の手間は比較的大きくなりますが、観光需要を捉えた高単価での運営が可能です。
一方、レンタルスペースは柔軟な時間貸しと多様な用途に対応できる汎用性が特徴で、比較的低コストでの参入が可能です。物件の立地や規模、運営体制など、ご自身の状況に照らし合わせて検討することで、最適な活用方法を見出すことができます。