「ホテル経営は本当に儲かるのか?」という疑問を抱いている経営者や投資家の方も多いのではないでしょうか。

「初期投資額はどの程度必要なのか」「どのような経営形態が最適なのか」「実際の収益構造はどうなっているのか」といった実務的な疑問も数多く寄せられています。特に、訪日外国人観光客の増加により注目が集まるホテル業界ですが、一方で運営の複雑さや競争の激化も気になるところです。

この記事では、ホテル経営が「儲かる」と言われる具体的な理由から、実際の収益構造、さまざまな経営形態の特徴、そして参入方法まで解説します。

ホテル経営が儲かると言われている理由

ホテル

ホテル経営が投資対象として注目を集める背景には、他の不動産投資や事業と比較して優位性を持つ特徴があります。

そこで、収益性や利益率の観点から、なぜホテル経営が「儲かる」と考えられているのか、その具体的な理由を詳しく見ていきましょう。

客室の原価が低く利益を出しやすいから

ホテル経営における最大の魅力は、客室サービスの原価構造にあります。というのも、一度客室を整備してしまえば、追加のお客様を受け入れるための直接的なコストは非常に限定的だからです。具体的には、清掃費やアメニティ代、リネン交換費用など、1室あたりの変動費は宿泊料金の10~20%程度に抑えることが可能です。

また、製造業や小売業と異なり、ホテルは「在庫」を抱えるリスクがありません。なぜなら、売れ残った客室は翌日には新たな商品として再販できるため、商品廃棄による損失もゼロだからです。さらに、デジタル化の進展により、予約システムやチェックイン・チェックアウトの自動化が進み、人件費も効率化できています。

その結果、立地の良いホテルでは、客室稼働率が70~80%を超えることも珍しくありません。この高い稼働率と低い変動費の組み合わせにより、売上に対する粗利益率は60~75%という高水準を実現できます。一方で、アパート経営の粗利益率が40~50%程度であることを考えると、ホテル経営の収益性の高さが際立ちます。

宿泊以外での収益源を得ることができるため

ホテル経営では、客室収入だけでなく、多角的な収益源を確保できる点も大きな魅力です。まず、レストランやバーからの飲食収入は、宿泊客だけでなく近隣住民や企業利用者からも安定した売上を見込めます。

加えて、宴会場やウェディング会場の利用による収入も重要な柱となります。特に、企業の会議や研修、結婚式などの大型イベントでは、一度の利用で数十万円から数百万円の売上を計上できます。これらのイベントは平日や閑散期にも開催されるため、客室稼働率が低い時期の収益補完効果も期待できます。

さらに、近年では付帯サービスの充実も収益向上に寄与しています。たとえば、駐車場料金、ランドリーサービス、コンシェルジュサービス、温泉やスパ施設の利用料などです。これらのサービスは比較的低コストで提供でき、かつ顧客満足度の向上にもつながるため、一石二鳥の効果があります。

訪日客の増加で高い稼働が見込めるため

日本の観光業界は、訪日外国人旅行者数の急激な増加により、大きな成長期を迎えています。2019年には年間3,188万人の外国人が日本を訪れ、2030年には6,000万人の達成を目標としています。この背景には、円安による相対的な旅行コストの低下、ビザ要件の緩和、そして日本文化への関心の高まりがあります。

訪日数

とりわけ、アジア系観光客の増加は顕著で、中国、韓国、台湾、香港からの旅行者が全体の約70%を占めています。これらの国々は地理的に近く、リピーター率も高いため、安定した需要を期待できます。また、欧米からの長期滞在型観光客も増加傾向にあり、高単価での宿泊需要も拡大しています。

その一方で、国内旅行需要も底堅く推移しています。働き方改革の浸透により有給取得率が向上し、また「マイクロツーリズム」と呼ばれる近場での短期旅行も定着しつつあります。このため、平日の稼働率向上や閑散期の底上げにも寄与しています。

需要に応じて客室単価を上げられるから

ホテル経営の大きな利点の一つは、需要変動に応じた柔軟な価格設定が可能な点です。いわゆる「レベニューマネジメント」により、イベント開催時や観光シーズンには客室単価を大幅に引き上げることができます。実際に、花火大会や音楽フェスティバル開催時には、通常の2~3倍の料金設定でも満室になるケースが珍しくありません。

また、予約システムの進歩により、リアルタイムでの価格調整も容易になりました。需要予測に基づいて、数日前から当日まで段階的に料金を調整することで、収益の最大化を図れます。さらに、曜日や季節による需要変動も予測しやすく、平日は低価格で稼働率を確保し、週末は高価格で利益率を向上させるといった戦略的な運営が可能です。

土地や建物自体の資産価値があるため

ホテル経営では、事業収益だけでなく、不動産としての資産価値も重要な要素となります。特に、立地の良い土地に建設されたホテルは、将来的な売却時にも高い評価を得やすく、投資元本の回収可能性が高いと言えます。

さらに、ホテル建物は一般的な住宅やオフィスビルとは異なる特殊な構造を持つため、用途変更には制約があります。しかし、これは逆に希少性を生み、適切に維持管理された物件では資産価値の下落が緩やかになる傾向があります。また、観光需要の拡大に伴い、ホテル用不動産への投資需要も増加しており、売却時の買い手も見つけやすい状況です。

加えて、減価償却による税務上のメリットも見逃せません。建物部分の減価償却により、実際のキャッシュフローよりも会計上の利益を圧縮でき、節税効果も期待できます。

ホテル経営の収益構造はどうなっている?

ホテル収益構造

ホテル経営を検討する際には、収益構造を正確に把握することが不可欠です。

そこで、収入源の内訳から運営コストの詳細まで、ホテル事業の財務構造を体系的に解説していきます。

主な収入源とその内訳

ホテルの収入構造は、大きく分けて宿泊部門収入と宿泊以外部門収入の2つに分類されます。まず、宿泊部門収入は全体売上の60~75%を占める主力収入源です。これには客室料金だけでなく、サービス料、温泉入湯税、駐車場料金なども含まれます。

客室料金の設定は、立地や設備グレード、サービス水準により大きく異なります。ビジネスホテルでは1泊5,000~12,000円程度、シティホテルでは15,000~30,000円、リゾートホテルでは20,000~80,000円と幅広い価格帯があります。また、同じホテル内でも、スタンダードルーム、デラックスルーム、スイートルームなど、客室タイプによる単価差も設けられています。

一方、宿泊以外部門収入は、飲食部門が最も大きな割合を占めます。レストラン、ルームサービス、宴会場での飲食提供により、全体売上の20~35%を担います。このほか、駐車場、ランドリー、マッサージ、土産物販売、会議室利用料なども重要な収入源となっています。

近年では、デイユース(日帰り利用)やワーケーション需要の取り込みにより、従来の宿泊以外の収益機会も拡大しています。

運営コストの種類と割合

ホテル経営における運営コストは、人件費、水道光熱費、清掃費、メンテナンス費、マーケティング費などに大別されます。このうち、人件費が最も大きな割合を占め、全体の30~45%に達します。フロントスタッフ、清掃スタッフ、レストランスタッフ、管理スタッフなど、24時間365日のサービス提供には相応の人員が必要だからです。

次に、水道光熱費が10~15%程度を占めます。客室の空調、照明、給湯設備に加え、共用部分の維持にも相当なエネルギーコストがかかります。特に、大浴場や温泉施設を併設している場合は、この比率がさらに高くなる傾向があります。

清掃費は外部委託する場合が多く、売上の5~8%程度が目安となります。客室清掃だけでなく、レストラン、ロビー、廊下などの共用部分の清掃も含まれます。また、リネン類のクリーニング費用も継続的に発生するコストです。

このほか、設備のメンテナンス費用(3~5%)、予約システムや広告宣伝費などのマーケティング費用(2~4%)、保険料や税金などの諸経費(3~5%)も発生します。

固定費・変動費

ホテル経営のコスト構造を理解するためには、固定費と変動費の区分が重要です。固定費は客室稼働率に関係なく発生するコストで、全体の60~70%を占めます。具体的には、建物の賃料または減価償却費、正社員の人件費、保険料、基本的な水道光熱費、設備のリース料などが該当します。

賃料または減価償却費は、立地や建物規模により大きく変動しますが、一般的に売上の15~25%程度が目安とされています。都市部の一等地では賃料負担が重くなる一方、郊外や地方では相対的に軽減されます。また、自己所有の場合は減価償却費として計上されるため、キャッシュフローとの乖離が生じる点にも注意が必要です。

正社員の人件費も固定費の大きな部分を占めます。支配人、フロント主任、調理長など、基幹スタッフの給与は稼働率に関係なく支払う必要があります。そのため、繁忙期と閑散期の収益格差を考慮した年間ベースでの人件費計画が重要になります。

変動費は稼働率に比例して増減するコストで、全体の30~40%を占めます。主なものとして、パートタイム従業員の人件費、客室清掃費、アメニティ費、リネン費、飲食材料費などがあります。

ホテル経営の形態の種類

ホテル経営には複数の形態があり、それぞれ異なるメリットとリスクを持っています。そこで、投資規模や運営責任の範囲に応じて、最適な経営形態を選択するための情報を詳しく見ていきましょう。

所有直営方式

所有直営方式は、土地と建物を自己所有し、経営も自ら行う最も伝統的な形態です。この方式では、すべての収益が経営者に帰属する一方、すべてのリスクも負担することになります。初期投資額は最も大きくなりますが、長期的には最も高い収益性を期待できる方式と言えます。

メリットとしては、まず収益性の高さが挙げられます。賃料やフランチャイズ料の支払いがないため、売上のほぼ全額を自社の収益とすることができます。また、経営方針から日々のオペレーションまで、すべてを自由に決定できるため、独自のサービスやコンセプトを追求しやすい特徴があります。

さらに、不動産としての資産価値も享受できます。立地の良い物件では、将来的な値上がり益も期待でき、相続対策としての効果もあります。減価償却による節税メリットも直接享受できるため、税務面でのメリットも大きいです。

しかし、デメリットも無視できません。まず、初期投資額が巨額になることです。土地取得費、建設費、内装費、設備費を合わせると、小規模なビジネスホテルでも数億円、大型ホテルでは数十億円の資金が必要になります。また、すべての経営リスクを負担するため、市況悪化や災害などによる影響を直接受けることになります。

運営委託方式

運営委託方式は、オーナーが土地と建物を所有し、運営を専門会社に委託する形態です。この方式では、ホテル運営のノウハウを持つ専門企業に経営を任せることで、安定した運営とリスクの軽減を図ることができます。

この方式の最大のメリットは、運営の専門性です。委託先企業は複数のホテル運営実績を持ち、予約システム、人材育成、マーケティングなどのノウハウを蓄積しています。そのため、個人経営では難しい高品質なサービス提供や効率的な運営が期待できます。

また、オーナーは不動産投資家としての役割に専念でき、日々の運営業務から解放されます。これにより、本業を持ちながらホテル経営に参入することも可能になります。さらに、委託先企業の経営が安定していれば、一定の収益を確保しやすい特徴もあります。

一方で、デメリットとしては収益性の制限があります。委託手数料として売上の5~15%程度を支払う必要があり、直営と比べて収益率は低下します。また、経営方針や運営方法について、委託先企業の意向に左右される面もあります。

リース方式

リース方式は、建物をリース(賃借)し、経営を自ら行う形態です。初期投資額を大幅に抑制しながら、ホテル経営に参入できる方法として注目されています。この方式では、土地・建物の取得費用が不要なため、数千万円程度の資金でも開業が可能です。

メリットとしては、まず初期投資の軽減が挙げられます。土地・建物の取得費用がかからないため、内装工事や備品調達、運転資金の確保に集中できます。また、立地の選択肢も広がります。購入では手が届かない一等地の物件でも、リースであれば参入可能な場合があります。

さらに、事業撤退時のリスクも軽減されます。不動産価値の下落リスクを負わないため、市況悪化時でも損失を限定できます。また、リース料は経費として全額計上できるため、税務上のメリットもあります。

しかし、デメリットも存在します。毎月のリース料負担により、収益性が制約されることです。売上が好調でもリース料は固定費として発生するため、利益率の向上には限界があります。また、長期間の運営を前提とした場合、総支払額が購入価格を上回る可能性もあります。

フランチャイズ方式

フランチャイズ方式は、既存のホテルブランドと契約し、そのブランド名と運営ノウハウを活用する形態です。この方式では、本部企業の確立されたシステムを利用することで、経営未経験者でも比較的安定した運営が期待できます。

最大のメリットは、ブランド力の活用です。知名度の高いホテルチェーンの名前を使用することで、集客力の向上や顧客の信頼獲得が容易になります。また、予約システム、研修プログラム、マーケティング支援など、本部からの包括的なサポートを受けられます。

さらに、スケールメリットも享受できます。備品の一括調達、広告宣伝の共同展開、人材採用の支援など、単独では実現困難なコスト削減や効率化が可能になります。加えて、他の加盟店との情報交換により、運営ノウハウの向上も期待できます。

一方、デメリットとしては、フランチャイズ料の負担があります。初期費用として数百万円から数千万円、月額料金として売上の3~8%程度を本部に支払う必要があります。また、本部の運営方針に従う必要があり、独自のサービスや価格設定には制約があります。

その他:民泊

民泊は、住宅を活用した宿泊サービスの提供形態で、近年急速に普及しています。2018年の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行により、適切な届出を行えば合法的に運営できるようになりました。初期投資が比較的少なく、副業としても始めやすい特徴があります。

民泊のメリットは、参入の容易さです。既存の住宅を活用できるため、新規建設の必要がなく、内装工事と備品調達程度の投資で開始できます。また、年間営業日数に上限(180日)があるものの、高稼働時の収益性は高く、都市部では月20~30万円の収入も期待できます。さらに、旅館業を取得すると、365日運営することができます。

さらに、運営の自由度も高く、独自のコンセプトやサービスを追求しやすい環境があります。外国人観光客の増加により、日本らしい住環境を提供する民泊への需要も拡大しています。
関連;【平均利回り8〜18%】民泊投資とは?リスクや失敗しないための方法など解説

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ホテル経営を始めるためにはどうすればいい?

ホテル経営

ホテル経営への参入方法は複数あり、それぞれ異なる特徴と必要な準備があります。そこで、具体的な始め方と手順について、実践的な観点から詳しく解説していきます。

M&Aで既存ホテルを取得する

M&Aによる既存ホテルの取得は、最も現実的で効率的な参入方法の一つです。既に運営実績があるホテルを取得することで、開業リスクを大幅に軽減し、取得後すぐに収益を得ることが可能になります。

M&Aのメリットとしては、まず時間短縮が挙げられます。新規開業では用地取得から開業まで2~3年かかることが一般的ですが、M&Aなら数ヶ月で事業を開始できます。また、既存の顧客基盤、スタッフ、取引先関係をそのまま引き継げるため、事業の継続性も確保しやすくなります。

さらに、過去の財務データを分析することで、収益性やリスクを事前に把握できます。実際の運営実績に基づいた投資判断が可能になるため、新規開業と比べて予測精度が高まります。また、既存の許認可や各種契約もそのまま承継できることが多く、手続き面での負担も軽減されます。

M&A案件の探し方については、まず専門の仲介会社に相談することが効果的です。ホテル業界に特化した仲介会社では、非公開案件も含めて幅広い情報を提供してもらえます。

取得価格の算定では、収益還元法や純資産法など複数の手法を組み合わせて評価します。特に、将来キャッシュフローの予測と割引率の設定が重要になります。一般的に、年間営業利益の5~10倍程度が取得価格の目安とされていますが、立地や築年数、市場環境により大幅に変動します。

新築でホテルを開業する

新築によるホテル開業は、自分の理想とするホテルを一から創り上げることができる方法です。ただし、最も多額の投資と長期間の準備が必要になるため、十分な資金力と専門知識が求められます。

新築開業のメリットは、完全に自由な設計・運営が可能な点です。立地選定から建物設計、内装デザイン、サービスコンセプトまで、すべてを自分の思い通りに決められます。また、最新の設備と効率的な動線を組み込むことで、運営コストの削済と顧客満足度の向上を同時に実現できます。

開業までの手順としては、まず市場調査と事業計画の策定から始まります。対象エリアの宿泊需要、競合状況、想定客室単価などを詳細に分析し、収支計画を作成します。この段階で、投資回収期間や目標利益率を明確に設定することが重要です。

次に、用地取得と建築確認申請を行います。ホテル用途での建築には、建築基準法、消防法、旅館業法など複数の法的要件があるため、専門家のサポートが不可欠です。また、融資の申し込みも並行して進める必要があります。

建設工事中には、運営体制の構築も重要な作業となります。スタッフの採用と研修、予約システムの導入、マーケティング戦略の実行など、開業と同時にスムーズな運営を開始するための準備を進めます。

リース方式でホテル運営を始める

リース方式は、建物を賃借して運営を行う方法で、初期投資を大幅に抑制しながらホテル経営に参入できます。この方式では、物件探しから始まり、改装工事、運営体制の構築まで、段階的に事業を立ち上げていきます。

リース物件の探し方については、まず商業用不動産の仲介会社に相談することが効果的です。ホテル適性のある物件は限られているため、立地、構造、法的制約などの条件を明確に伝えることが重要です。また、既存のホテルや旅館の居抜き物件も有力な選択肢となります。

物件選定では、立地条件が最優先事項となります。駅からの距離、周辺の商業施設、観光地へのアクセスなど、宿泊需要に直結する要素を慎重に評価します。また、建物の構造や設備状況も重要で、客室数、駐車場の有無、エレベーターの設置状況などを確認します。

賃料交渉では、初期費用の軽減と安定した賃料設定を目指します。一般的に、売上連動型の賃料設定や、開業当初の賃料減額措置などを提案することが有効です。また、原状回復義務の範囲や更新条件についても、事前に明確にしておくことが重要です。

改装工事については、旅館業法の基準を満たすための設備投資が必要になります。客室の改装、共用部分の整備、消防設備の設置などで、客室数×200~500万円程度の費用がかかります。また、家具や備品の調達、予約システムの導入なども含めて、総投資額は数千万円から1億円程度を見込んでおく必要があります。

運営開始後は、早期の黒字化を目指すことが重要です。リース料という固定費負担があるため、高い稼働率を維持する必要があります。そのため、開業前からのマーケティング活動や、競合との差別化戦略の実行が成功の鍵となります。

まとめ

ホテル経営が「儲かる」と言われる背景には、客室の低い原価構造、多角的な収益源、訪日客増加による需要拡大、柔軟な価格設定、そして不動産としての資産価値という5つの要因があります。特に、客室の変動費が宿泊料金の10~20%程度と低く、高稼働率を実現できれば60~75%の高い粗利益率を期待できる点は大きな魅力です。

収益構造については、宿泊部門収入が全体の60~75%を占める一方、レストランや宴会場などの付帯サービスからも安定した収入を得られます。運営コストでは人件費が30~45%と最大の割合を占めるため、効率的な人員配置が収益性向上の鍵となります。また、固定費と変動費の適切な管理により、稼働率の変動に対応した柔軟な運営が可能になります。

経営形態には所有直営方式、運営委託方式、リース方式、フランチャイズ方式、民泊など複数の選択肢があり、それぞれ初期投資額、収益性、運営負担が異なります。最も収益性が高いのは所有直営方式ですが、初期投資額も最大となるため、資金力と経営経験に応じた適切な選択が重要です。

参入方法としては、M&Aによる既存ホテルの取得が最も現実的で効率的な選択肢となります。既存の運営実績を基に投資判断ができ、取得後すぐに収益を得られるためです。新築開業は自由度が高い反面、巨額の投資と長期間の準備が必要になります。リース方式は初期投資を抑制しながら参入できる方法として、資金力に制約がある場合に有効な選択肢です。

ホテル経営の成功には、立地選定、適切な経営形態の選択、効率的な運営体制の構築、そして市場動向に応じた柔軟な戦略実行が不可欠です。訪日外国人観光客の増加という追い風はあるものの、競争も激化しているため、差別化戦略と収益性の両立を図ることが重要になるでしょう。