ホテル経営に興味があるものの、「実際にどのような仕組みで利益を生み出しているのか」「どの経営方式を選べば安定した収益を得られるのか」といった疑問を抱えていませんか。ホテル業界は一見シンプルに見えますが、実際には複雑な収益構造と多様なビジネスモデルが存在しており、成功するためには業界特有の仕組みを深く理解することが不可欠です。
この記事では、ホテルで儲ける仕組みの全体像を詳しく解説します。これらの知識を身につけることで、ホテル経営への参入を検討している方は適切な戦略を立てられるようになります。
関連:ホテル経営が儲かると言われている理由は?実際は儲からない?
ホテルが儲かる仕組みとは?

ホテル経営で安定した利益を生み出すためには、まず業界特有の収益構造とビジネスモデルを理解することが重要です。一見シンプルに見えるホテル業界ですが、実際には複数の収益源と多様な経営方式が組み合わさった複雑なビジネスです。
そこで、ここではホテルがどのような仕組みで収益を上げているのか解説していきます。
関連:ホテル投資の平均利回りは何%?利回りを改善させるための方法は?
ホテルのビジネスモデル
ホテルのビジネスモデルは、基本的に「時間と空間を販売する」ことにあります。すなわち、客室という限られた空間を一定の時間(通常は一泊)単位で提供し、その対価として宿泊料金を受け取る仕組みです。
しかし、この基本モデルにはいくつかの重要な特徴があります。まず、在庫の性質が特殊である点です。というのも、客室は物理的な商品と異なり、その日に売れなかった部屋は翌日に持ち越せないからです。つまり、昨日の空室を今日販売することは不可能なため、毎日がゼロからのスタートとなります。
また、固定費の比率が非常に高いことも特徴的です。なぜなら、建物の維持管理費、人件費、水道光熱費など、宿泊客の有無に関わらず発生する費用が大部分を占めるからです。その結果、稼働率の向上が利益に直結する構造になっています。
一方で、成功するホテルは、この特性を理解した上で需要予測と価格設定を戦略的に行っています。具体的には、繁忙期には価格を上げて収益を最大化し、閑散期には価格を下げてでも稼働率を維持する柔軟な価格戦略が重要になります。
主な収益源
一方、ホテルの収益源は宿泊売上だけではありません。実際には複数の収益の柱があり、これらをバランス良く育てることが安定経営の鍵となります。
まず、宿泊売上は最も基本となる収益源で、全体の60-80%を占めることが一般的です。この売上には、客室料金に加えて追加料金として徴収するサービス料、税金、朝食代なども含まれます。なお、高級ホテルほど宿泊単価が高く、ビジネスホテルは稼働率で勝負する傾向があります。
次に、飲食売上は第二の収益源として重要な位置を占めます。この分野には、レストラン、バー、ルームサービス、朝食、宴会料理などが含まれます。特に宴会事業は一度に大きな売上を生み出せるため、多くのホテルが力を入れている分野です。実際に、飲食部門は宿泊部門よりも利益率が高い場合が多く、全体の収益性向上に大きく貢献します。
その他の収益源としては、駐車場利用料、ランドリーサービス、電話料金、インターネット利用料などがあります。これらは個別の金額は小さくても、積み重なると無視できない収益となります。
また、施設の一部を外部に貸し出すことでも収益を得られます。たとえば、テナント賃料、自動販売機の手数料、提携サービスからの紹介料なども重要な収入源です。
どの経営方式が利益を生むの?

ホテル経営には複数の方式があり、それぞれ異なるリスクとリターンの特性を持っています。どの方式を選ぶかによって、収益構造や必要な資金、経営の自由度が大きく変わります。
そこで、ここでは主要な経営方式について、それぞれの特徴と収益性を詳しく説明します。
所有直営方式
所有直営方式は、土地と建物を自己所有し、運営も自社で行う最も伝統的な経営方式です。この方式では、全ての収益を自社で獲得できる一方で、全てのリスクも負うことになります。
最大の利点は収益性の高さです。なぜなら、宿泊売上、飲食売上、その他の収益を全て自社で獲得できるため、経営が軌道に乗れば高い利益率を期待できるからです。また、経営の自由度が最も高く、サービス内容、価格設定、マーケティング戦略などを自由に決められます。
しかし、初期投資が非常に大きくなることが課題です。具体的には、土地取得費、建設費、内装費、設備費などで数億円から数十億円の投資が必要になります。さらに、稼働率の変動が直接収益に影響するため、経営の安定化まで時間がかかることもあります。
マネジメントコントラクト方式
一方、マネジメントコントラクト方式は、建物は所有するが運営を専門会社に委託する方式です。この方式では、ホテル運営のノウハウを持つ企業に経営を任せることで、安定した運営を期待できます。
具体的には、所有者は建物と土地を提供し、運営会社は経営ノウハウとブランド力を提供します。収益は所有者のものとなりますが、運営会社に対して管理料を支払います。この管理料は通常、売上の一定割合(3-8%程度)と利益の一定割合(10-25%程度)の組み合わせになります。
利点としては、運営の専門知識がなくてもホテル経営に参入できることがあります。また、有名ブランドの運営会社と契約すれば、そのブランド力を活用した集客も期待できます。さらに、運営会社の持つ予約システムや販売網を利用できるため、効率的な営業が可能です。
ただし、経営の自由度は制限されます。すなわち、サービス内容や価格設定は運営会社の方針に従う必要があり、独自色を出しにくい面があります。また、管理料の支払いにより、所有直営と比べて収益性は下がります。
リース方式
これに対して、リース方式は建物を所有せずに賃借し、運営のみを行う方式です。初期投資を大幅に抑えられるため、資金力の少ない事業者でも参入しやすい方式として注目されています。
この方式の最大の利点は、初期投資の少なさです。というのも、建設費や土地代が不要なため、内装費と運営資金があれば事業を開始できるからです。また、立地を変更したい場合の身軽さも魅力です。つまり、契約期間終了後に別の物件に移ることも可能です。
収益面では、賃料の負担があるものの、運営による利益は全て自社のものとなります。ここで重要なのは、賃料は固定費となるため、稼働率が高ければ高い収益性を実現できることです。
ただし、賃料負担により固定費が高くなるため、安定した稼働率の確保が重要になります。さらに、建物への投資ができないため、設備の差別化には限界があります。
したがって、成功のポイントは適正な賃料での物件確保と効率的な運営になります。立地の良い物件を適正な賃料で借りられれば、高い収益性を実現できる可能性があります。
フランチャイズ方式
最後に、フランチャイズ方式は、知名度の高いホテルブランドの看板を借りて運営する方式です。この方式では、本部のブランド力と運営ノウハウを活用しながら、独立した事業として運営できます。
フランチャイズ方式の利点は、まず確立されたブランド力を活用できることです。なぜなら、有名ブランドの信頼性により、集客面で大きなアドバンテージを得られるからです。また、本部から運営マニュアルや研修プログラムの提供を受けられるため、経験の少ない事業者でも一定水準のサービスを提供できます。
さらに、予約システムや販売チャネルを本部と共有できるため、個人経営では難しい大規模な販売網を活用できます。これにより、効率的な集客と収益向上が期待できます。
一方で、加盟金やロイヤリティの支払いが必要になることがデメリットです。通常、初期の加盟金に加えて、売上の一定割合(3-6%程度)をロイヤリティとして継続的に支払う必要があります。
また、本部の基準に従う必要があるため、経営の自由度は制限されます。たとえば、サービス内容、設備仕様、価格設定などは本部の方針に従わなければなりません。
宿泊以外の収益源には何がある?

現代のホテル経営では、宿泊収入だけに依存するのではなく、多様な収益源を確保することが重要です。特に競争が激しい市場では、付加価値サービスによる差別化と収益向上が成功の鍵となります。
そこで、ここでは宿泊以外の主要な収益源について、それぞれの特徴と収益性を詳しく解説します。
レストラン・飲食事業
レストラン・飲食事業は、ホテルにとって最も重要な副次収益源の一つです。この事業には、メインダイニング、カジュアルレストラン、バー、ルームサービス、朝食サービスなどが含まれます。
まず、レストラン事業の利点は利益率の高さです。なぜなら、食材原価は売上の30-40%程度で、宿泊事業よりも高い粗利率を実現できるからです。また、地域の住民も利用できるため、宿泊客以外からの収益も期待できます。
特に、朝食サービスは安定した収益源となります。宿泊客の多くが利用するため稼働率が高く、効率的な運営が可能です。さらに、朝食付きプランとして宿泊料金に含めることで、客単価の向上にも貢献します。
一方、バー事業は高い利益率が魅力です。アルコール類は原価率が低く、特に夜間の時間帯に安定した収益を生み出せます。また、ビジネス客の接待需要や地域の会合などにも対応できるため、幅広い顧客層を獲得できます。
ただし、飲食事業を成功させるには専門的な知識と経験が必要です。そのため、多くのホテルでは経験豊富なシェフやマネージャーを雇用したり、外部の専門業者と提携したりしています。
宴会・イベント事業
次に、宴会・イベント事業は、ホテルの収益性を大きく左上させる重要な事業です。この事業には、結婚披露宴、企業の懇親会、学会、展示会、セミナーなどが含まれます。
宴会事業の最大の利点は、一度に大きな売上を獲得できることです。たとえば、100名規模の結婚披露宴であれば、一日で数百万円の売上を計上できます。また、事前予約により売上の予測が立てやすく、経営の安定化に貢献します。
さらに、宴会料理は通常の食事よりも高単価に設定できるため、利益率も高くなります。加えて、音響設備や装花、写真撮影などの関連サービスも提供できれば、さらなる収益向上が期待できます。
企業向けのイベント事業も安定した収益源となります。なぜなら、会議室やホールの貸出に加えて、ケータリングサービス、宿泊パッケージなどを組み合わせることで、総合的な売上向上を図れるからです。
しかし、宴会事業には季節変動があることに注意が必要です。結婚式は春と秋に集中し、企業イベントは年度末に多くなる傾向があります。そのため、年間を通じた平準化策を検討することが重要です。
また、宴会場の設計や設備投資も重要な要素です。多目的に使用できる可変式の会場や、最新の音響・映像設備があれば、より多様なニーズに対応できます。
スパ・リラクゼーション
続いて、スパ・リラクゼーション事業は、近年多くのホテルが注目している収益源です。この事業には、エステティック、マッサージ、温浴施設、フィットネスジムなどが含まれます。
スパ事業の利点は、高い付加価値を提供できることです。というのも、リラクゼーションサービスは他の業種では提供しにくい特別な価値であり、顧客満足度の向上と差別化に大きく貢献するからです。
また、利用料金を比較的高く設定できるため、少ない客数でも高い収益を期待できます。たとえば、90分のトリートメントで1万円以上の料金設定も可能です。
温浴施設がある場合は、日帰り利用客も取り込めるため、地域密着型の収益源としても機能します。特に都市部では、日帰り温浴施設の需要が高く、安定した収益を期待できます。
ただし、スパ事業には専門的な技術者が必要です。そのため、有資格者の確保や継続的な研修が重要になります。また、高品質な化粧品や設備への投資も必要なため、初期投資と運営コストを慎重に検討する必要があります。
小売・物販
一方、小売・物販事業は、比較的少ない投資で始められる収益源です。この事業には、土産物店、コンビニエンスストア、ブティック、地域特産品の販売などが含まれます。
小売事業の利点は、24時間営業が可能なことです。宿泊客は夜間や早朝にも買い物ニーズがあるため、自動販売機と組み合わせることで効率的な販売が可能です。
また、地域の特産品や限定商品を販売することで、観光客の購買意欲を刺激できます。特に、その土地でしか購入できない商品は高い付加価値を持ち、高い利益率を実現できます。
さらに、ホテルオリジナル商品の開発も有効な戦略です。たとえば、ホテルで使用しているアメニティやタオル、お菓子などを商品化すれば、ブランド価値の向上と収益確保を同時に実現できます。
コンビニエンスストア機能を持つ売店は、宿泊客の利便性向上に大きく貢献できます。特に、ビジネスホテルでは、朝食用の飲み物や軽食、日用品の販売需要が高く、安定した売上を期待できます。
施設貸出
最後に、施設貸出事業は、既存の設備を有効活用できる効率的な収益源です。この事業には、会議室、宴会場、駐車場、屋上スペースなどの貸出が含まれます。
施設貸出の最大の利点は、追加投資が少ないことです。なぜなら、既存の施設を活用するため、新たな設備投資をせずに収益を生み出せるからです。
会議室の貸出は、特に平日の需要が高く、宿泊の閑散期の収益補完に有効です。企業の会議や研修、セミナーなどの需要は安定しており、リピート利用も期待できます。
駐車場の貸出も安定した収益源となります。特に都市部では駐車場不足が深刻であり、月極契約や時間貸しにより継続的な収入を得られます。
また、屋上や庭園などの屋外スペースも有効活用できます。たとえば、ビアガーデンやバーベキュー会場として季節限定で貸し出せば、新たな収益機会を創出できます。
ただし、施設貸出では利用者管理とセキュリティ対策が重要です。特に、宿泊客以外の利用者が入る場合は、適切な管理体制の構築が必要になります。
まとめ
ホテル経営で安定した収益を上げるためには、基本的な収益構造を理解した上で、最適な経営方式を選択し、多様な収益源を確保することが重要です。
まず、ホテルの基本的なビジネスモデルは「時間と空間の販売」ですが、在庫の特殊性と高い固定費比率を理解して戦略的な価格設定を行う必要があります。また、経営方式については、所有直営方式は高い収益性を期待できる一方で大きな初期投資が必要であり、マネジメントコントラクト方式やリース方式、フランチャイズ方式はそれぞれ異なるリスクとリターンの特性を持っています。
さらに、宿泊収入だけでなく、飲食事業、宴会・イベント事業、スパ・リラクゼーション事業、小売・物販事業、施設貸出事業など、多様な収益源を確保することで経営の安定化と収益性の向上を図ることができます。これらの事業は単独でも収益性が高く、宿泊事業との相乗効果により、さらなる価値創造が可能になります。
しかし、ここまで解説してきたホテル経営は、数億円から数十億円の初期投資や専門的な運営ノウハウ、多くの人件費が必要な本格的な事業です。そのため、多くの方にとってはハードルが高いのも事実です。
そこで注目されているのが民泊事業です。民泊はホテルと同様に宿泊サービスを提供しますが、初期投資や運営コストを大幅に抑えることができます。具体的には、既存の住宅やマンションを活用するため建設費が不要で、フロントスタッフや清掃スタッフも最小限に抑えられます。また、本業と並行して副業として運営することも可能なため、リスクを抑えながら宿泊業界に参入できます。
特に、民泊M&Aを活用すれば、既に運営実績のある優良な民泊物件を効率的に取得できます。運営ノウハウや既存の予約実績も引き継げるため、初心者でも安定したスタートを切ることができます。ホテル経営の複雑さや高額な投資に躊躇している方は、まず民泊事業から宿泊業界への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
\AIを活用した最先端の民泊特化のM&A仲介/
\ 日本総合政策ファンド /