民泊経営を検討している方の中には「税金対策はどうすればいいの?」「どんな経費が認められるの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

実は、民泊事業には節税メリットがたくさん存在します。適切な知識を身につけることで、税負担を大幅に軽減しながら効率的に資産を増やすことが可能です。

この記事では、民泊経営における具体的な節税方法や経費計上のポイントを、実践的な視点からわかりやすく解説します。
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民泊経営で節税できるの?

節税

実は、民泊経営で節税することは可能です。

特に青色申告制度を利用することで、大きな税制優遇を受けられることをご存知でしょうか?

青色申告は、通常の白色申告と比べて、記帳の手間は増えますが、その分だけ税制上の優遇措置が充実しています。

まず最大の魅力は「青色申告特別控除」です。きちんと複式簿記で記帳し、e-Taxなどの電子申告を利用すれば最大65万円の所得控除を受けられます。つまり、65万円分の所得に対する税金がかからなくなるのです。例えば、所得税率が20%の方なら、単純計算で13万円の節税になります。

また、青色申告には「純損失の繰越控除」という強力な制度もあります。民泊ビジネスを始めたばかりの時期は、物件の購入費用や内装工事、設備投資などでコストがかさみ、赤字になることも珍しくありません。青色申告ならこの赤字(純損失)を最長3年間繰り越せるため、将来の黒字と相殺できるのです。

さらに青色申告には「専従者給与」という制度もあります。家族を民泊ビジネスの従業員として雇用し、給与を支払うことで、所得を分散させる効果があります。特に配偶者などが無職や低所得の場合、家族全体での税負担を減らせる可能性が高まります。

青色申告のメリットを最大限に活用するには、日々の記帳を丁寧に行うことが重要です。最初は面倒に感じるかもしれませんが、今では会計ソフトやクラウドサービスが充実しているため、専門知識がなくても比較的簡単に始められます。

民泊経営で認められている経費とは?

経費

民泊経営を行うと、様々な出費が発生します。しかし、これらの出費の多くは「経費」として計上でき、所得から差し引くことで節税につながります。実際に民泊を運営していると、想像以上に多くの費用が経費になることに驚かれる方も多いです。

適切に経費計上することで、税負担を抑えながら効率的な経営が可能になります。それでは、民泊経営で認められる経費について詳しく見ていきましょう。

家賃・固定資産税

民泊運営において、物件に関わる費用は最も大きな経費の一つです。賃貸物件で民泊を行う場合、支払っている家賃は原則として全額を経費として計上できます。これは物件を民泊専用として使用している場合の話です。

一方、自宅の一部を民泊として提供する場合は「按分」という考え方が必要になります。例えば、3LDKの自宅のうち1部屋を民泊に使用する場合、部屋の面積比率に応じて経費計上します。全体の30%のスペースを民泊に使っているなら、家賃の30%が経費として認められます。

固定資産税についても同様の考え方です。自己所有の物件で民泊を行う場合、その物件にかかる固定資産税は経費になります。こちらも全額を民泊に使用していれば全額が、一部を使用している場合は面積按分した金額が経費として認められます。

ただし、按分の方法には厳格なルールがあります。実態に即した合理的な按分方法を取る必要があり、税務調査の際にも説明できるようにしておきましょう。床面積による按分が最も一般的ですが、使用時間や稼働率なども考慮した複合的な按分方法を取ることもあります。

光熱費・通信費

民泊を運営するうえで欠かせないのが光熱費や通信費です。宿泊客が快適に過ごせるよう、電気・ガス・水道はもちろん、高速インターネット環境も必須といえるでしょう。これらの費用も経費として計上できます。

民泊専用物件であれば、光熱費や通信費は全額を経費にできます。一方、自宅の一部を使用している場合は、こちらも面積や使用状況に応じた按分が必要です。特に水道代やインターネット料金は、宿泊客が使用する割合を合理的に算出することが求められます。

通信費については、民泊用に契約したWi-Fiルーターの料金はもちろん、宿泊者とのやり取りに使う携帯電話の料金も、ビジネスとしての使用割合に応じて経費にできます。最近は民泊専用のポケットWi-Fiを導入するオーナーも多く、その場合は通信費を明確に区分できるメリットがあります。

備品・消耗品

民泊を始める際、多くの備品や消耗品の購入が必要になります。ベッド、家具、家電製品などの備品から、タオル、シーツ、アメニティなどの消耗品まで、様々な物品が経費として認められます。

備品については、10万円未満の場合は購入した年に全額を経費計上できます。例えば、9万円のテレビを購入した場合、その年の経費として全額計上可能です。一方、10万円以上の備品は「固定資産」として減価償却の対象になります。

消耗品は使い切るものなので、購入した金額をそのまま経費として計上できます。タオル、シーツ、掃除用品、トイレットペーパーなどの日用品、宿泊客用のアメニティ、さらには部屋の装飾品まで、民泊の質を高めるために購入したものは基本的に経費になります。

また、宿泊客へのウェルカムドリンクや軽食なども「接待交際費」として経費計上できます。ただし、過度に豪華なものは税務調査の際に否認されるリスクがあるため、一般的なサービスの範囲内に収めておくことが無難です。

清掃・メンテナンス費用

宿泊客が快適に過ごせるよう、清掃やメンテナンスは欠かせません。これらの費用も立派な経費です。清掃を外部の業者に依頼している場合、その料金は全額を経費として計上できます。

最近は民泊専門の清掃サービスも増えており、チェックアウト後の清掃からリネン交換、アメニティ補充までをパッケージで請け負ってくれるサービスも人気です。これらのサービス料金も全額経費になります。

自分自身で清掃やメンテナンスを行う場合でも、使用する掃除機や洗剤などの清掃用具、修繕のための工具や材料費は経費として認められます。また、自家用車を使って物件の管理を行う場合、その移動にかかるガソリン代や駐車場代も按分して経費計上できます。

さらに、定期的なメンテナンスも重要です。エアコンのクリーニングや水回りの点検、害虫駆除などの費用も経費になります。これらは宿泊客の快適さを保つだけでなく、物件の寿命を延ばす効果もあるため、計画的に実施することをお勧めします。

保険料・手数料

民泊経営に関わる各種保険料や手数料も経費として認められます。火災保険や地震保険はもちろん、民泊専用の賠償責任保険なども全額経費計上できます。

特に民泊経営では、通常の火災保険だけでなく、宿泊客の負傷やトラブルに対応できる賠償責任保険への加入が重要です。これらの保険料は安全な民泊運営のための必要経費として認められています。

また、物件の取得や運営に関わる手数料も経費になります。不動産仲介手数料、登記費用、住宅ローンの事務手数料などが該当します。民泊予約サイトに支払う手数料(Airbnbやブッキングドットコムの手数料など)も経費です。

銀行振込手数料や決済サービスの利用料、会計ソフトの利用料なども忘れずに経費計上しましょう。小さな金額でも積み重なれば大きな節税効果につながります。

減価償却

高額な資産を購入した場合、一度に経費にはできませんが、「減価償却」という方法で少しずつ経費計上していくことができます。民泊物件そのものや、10万円以上の家具・家電などが対象です。

減価償却とは、資産の取得費用をその耐用年数にわたって分割して経費計上する方法です。例えば、2,000万円のマンションを購入した場合、建物部分の価格を法定耐用年数(鉄筋コンクリート造なら47年)で割った金額を毎年経費にできます。

家具や家電についても同様に、それぞれの耐用年数に応じて減価償却していきます。ベッドの耐用年数は5年、エアコンは6年、テレビは5年などと定められています。これらの減価償却費は、実際にお金が出ていかないながらも計上できる経費なので、節税効果が高いのが特徴です。

減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」があり、資産の種類によって選択できる方法が異なります。一般的に建物は定額法のみですが、家具や家電などの「器具備品」は定率法も選べるケースがあります。定率法は初年度の償却額が大きくなるため、早期の節税効果が高まります。

家賃

先ほども触れましたが、家賃は民泊経営における最も基本的な経費の一つです。賃貸物件で民泊を行う場合、その家賃は事業のための必要経費として認められます。

物件全体を民泊に使用している場合は、家賃の全額を経費計上できます。一方、自宅の一部屋を民泊として貸し出している場合は、使用している面積の割合に応じて按分する必要があります。

例えば、60平方メートルの賃貸マンションに住んでいて、そのうち20平方メートルの部屋を民泊に使用している場合、家賃の3分の1(約33%)を経費として計上できます。月額15万円の家賃なら、毎月5万円を経費にできる計算です。

按分の方法は面積比率が最も一般的ですが、より精緻に計算するなら使用日数なども考慮できます。例えば、月の半分だけ民泊として貸し出している場合、面積比率×使用日数比率で按分するといった方法も可能です。ただし、その計算方法に合理性があり、一貫性を持って適用する必要があります。

固定資産税やローン利息

自己所有の物件で民泊を行っている場合、固定資産税も重要な経費項目です。土地や建物に対して課される固定資産税は、物件を事業に使用している割合に応じて経費計上できます。

全体を民泊に使用していれば固定資産税の全額が、一部を使用している場合はその使用割合に応じた金額が経費になります。また、都市計画税や不動産取得税なども同様の考え方で経費計上できます。

住宅ローンを組んで物件を購入した場合、そのローン利息部分も経費として認められます。元金部分は資産の購入費用なので経費にはなりませんが、利息部分は金融費用として経費計上できるのです。こちらも民泊への使用割合に応じた按分が必要になります。

例えば、月々のローン返済額10万円のうち4万円が利息部分だとして、物件の80%を民泊に使用している場合、4万円×80%=3.2万円を毎月の経費として計上できます。ローン返済表を確認して、利息部分を正確に把握しておくことが大切です。

民泊経営で認められている節税方法は?

民泊経営 節税

適切な節税対策を講じることで税負担を大きく軽減できます。ここでは、民泊経営者が特に注目すべき効果的な節税方法を紹介します。

これらの方法を組み合わせることで、より効率的な資産形成が可能になります。

小規模企業共済へ加入する

小規模企業共済は、個人事業主や会社役員のための「退職金制度」です。民泊オーナーとして個人事業主になれば、この制度を活用できます。小規模企業共済の最大の魅力は、掛金が全額所得控除になる点です。

月々1,000円から70,000円までの範囲で自由に掛金を設定でき、年間最大840,000円の所得控除を受けられます。例えば、年間60万円を小規模企業共済に積み立てた場合、所得税率20%の方なら12万円の節税になります。住民税も含めれば、さらに節税効果は大きくなります。

また、小規模企業共済は単なる節税対策ではなく、将来の資金計画にも役立ちます。共済金は廃業時や退職時に受け取れるだけでなく、事業資金としての一時金貸付制度も利用可能です。例えば、新たな民泊物件の購入資金として活用することもできます。

民泊経営を長期的に考えている方にとって、毎月の掛金を経費として計上しながら将来の資金も確保できる小規模企業共済は、非常に効率的な節税方法といえるでしょう。

法人化する

民泊経営の規模が大きくなってきたら、法人化も検討すべき節税方法です。個人事業主と法人では適用される税率や控除の仕組みが大きく異なります。一定の所得を超えると、法人化による節税効果が顕著になってきます。

法人税率は現在、中小企業であれば年800万円以下の所得に対して15%(国税)となっています。一方、個人事業主の所得税率は累進課税で、所得が増えるほど税率が上がり、最高45%に達します。つまり、ある程度の所得がある場合、法人化することで税率を抑えられる可能性があるのです。

また、法人であれば役員報酬を設定でき、会社の利益と個人の所得を分散させることができます。例えば、法人の利益をすべて個人の所得にするのではなく、必要経費として役員報酬を支払い、残りを法人内に留保することで、全体の税負担を軽減できます。

さらに、法人であれば福利厚生費として、個人事業主では認められにくい経費も計上できるようになります。例えば、生命保険料や医療保険料を会社負担にするなど、様々な節税措置が可能になります。

ただし、法人化にはデメリットもあります。設立や維持にコストがかかり、税務申告も複雑になります。また、赤字の場合は個人事業主のほうが有利なケースもあります。法人化を検討する際は、必ず税理士などの専門家に相談し、自身の民泊ビジネスの規模や将来計画に合わせて判断することが重要です。

NISAやiDeCoを使用する

民泊経営から得た利益を効率的に運用するためには、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった税制優遇制度の活用も検討すべきです。これらは直接民泊経営の節税になるわけではありませんが、総合的な資産形成において税負担を軽減できます。

NISAでは、投資で得た利益や配当金に対して本来20.315%かかる税金が非課税になります。2024年から始まった新NISAでは、年間360万円までの投資枠があり、生涯1,800万円まで非課税で運用できます。民泊事業で得た利益を将来に向けて非課税で増やせるため、長期的な資産形成に役立ちます。

一方、iDeCoは老後資金を税制優遇しながら積み立てる制度です。掛金は全額所得控除となり、運用益も非課税です。さらに受取時も退職所得控除や公的年金等控除が適用されるため、三重の税制メリットがあります。個人事業主であれば月額68,000円まで拠出でき、大きな節税効果が期待できます。

例えば、年間60万円をiDeCoに拠出すると、所得税率20%の方なら12万円の節税になります。この資金を20年間運用し、年平均3%のリターンが得られたと仮定すると、税引後で約1,600万円になります。通常の課税投資に比べると、約200万円多く資産が増えることになります。

物件を買わない民泊投資の節税!2つの方法

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これなら初期投資を抑えながらも、節税効果と高い収益性を両立できる可能性があるのです。物件購入のハードルを気にしている方は、ぜひ参考にしてみてください。

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賃貸物件で民泊を始める

物件を購入せずに民泊を始める最も一般的な方法は、賃貸物件を借りて運営することです。この方法には様々なメリットがあります。

最大のメリットは初期投資の少なさです。物件購入と比べて、敷金・礼金・家具家電の購入費用など、数十万〜数百万円程度で開業できます。この初期費用は「開業費」として全額経費計上できるため、節税効果も高いのです。特に10万円未満の家具や家電は「少額減価償却資産」として、購入した年に全額経費にできます。

また、賃貸物件の家賃は全額を経費として計上できます。例えば、月10万円の物件を借りて民泊運営すれば、年間120万円の経費になります。これは所得から差し引かれるため、所得税や住民税の負担が大きく軽減されます。

さらに、賃貸物件による民泊は柔軟性が高いのも特徴です。物件の収益性が低ければ契約更新時に解約できますし、より良い物件が見つかれば移行することも容易です。一方、購入した物件は簡単には手放せません。

もちろん、リスクも存在します。まず、大家さんの許可が必要です。賃貸借契約で民泊利用が禁止されている場合が多いので、必ず事前に確認し、許可を得る必要があります。最近では民泊利用を前提とした物件も増えてきていますが、まだ数は限られています。

また、家賃分の固定費がかかるため、稼働率が低いと赤字リスクがあります。物件購入の場合は住宅ローンの元金部分が資産形成になりますが、家賃は完全なコストとなるため、長期的には物件購入に比べて資産形成効果は低くなります。

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空き部屋を活用して始めることもできる

もう一つの「物件を買わない民泊」の方法は、自宅の空き部屋を活用する方法です。子どもが独立して空いた部屋や、使っていない客間などを民泊スペースとして活用することで、追加の家賃負担なしに民泊ビジネスを始められます。

この方法の最大のメリットは、既にある資産を有効活用できる点です。新たな物件購入や賃貸のための大きな初期投資が不要で、部屋の改装費や必要な家具・家電の購入費用程度で始められます。これらの費用も事業のための支出として経費計上できるため、節税効果があります。

経費計上の際に重要なのが「按分」の考え方です。例えば、自宅の一部屋を民泊に使用する場合、その部屋の面積が家全体の20%だとすると、固定資産税や住宅ローンの利息、修繕費、保険料などの20%を経費として計上できます。電気・ガス・水道などの光熱費も、合理的な方法で按分すれば経費になります。

空き部屋活用型の民泊には、生活空間の一部を提供することによる心理的ハードルや、プライバシーの問題などのデメリットもあります。また、区分所有マンションの場合は管理規約で民泊が禁止されていることも多いため、事前に確認が必要です。さらに、住居専用地域では民泊は180日以内に制限されています。

それでも、追加コストをほとんどかけずに始められる点や、自宅にいながら管理できる利便性、そして経費按分による節税効果を考えると、特に民泊初心者にとって空き部屋活用は魅力的な選択肢と言えるでしょう。

関連:自宅での空きスペースで民泊を始めることができるの?開業のポイントを紹介!

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まとめ

民泊経営には多くの節税メリットがあります。青色申告を活用すれば最大65万円の所得控除や損失の繰越控除が可能になり、家賃や固定資産税、光熱費、備品購入費、清掃費用などの様々な経費を計上できます。

さらに、小規模企業共済への加入や法人化、NISAやiDeCoの活用など、総合的な節税戦略を組み合わせることで効率的な資産形成が実現します。

高額な物件購入に不安がある方は、賃貸物件での運営や自宅の空き部屋活用という選択肢もあり、少ない初期投資で民泊ビジネスを始められます。いずれの方法を選ぶにしても、自分の状況に合った適切な節税対策を取ることで、民泊経営の収益性を大きく高めることができるでしょう。