「民泊事業を始めてみたいけれど、本当に自分にもできるのだろうか」「どんな準備が必要なのか」「失敗するリスクはないのか」-そんな不安を抱えていませんか?実は、民泊事業は想像以上に参入のハードルが低く、適切な準備と知識があれば、副業として始めることも可能です。

この記事では、民泊事業を成功させるために必要な具体的な準備や注意点、さらには運営方法の選び方まで、解説します。
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民泊は誰でも始められるの?

部屋

民泊事業に興味を持たれている方の多くが、「本当に自分にもできるのだろうか」という不安を抱えているのではないでしょうか。実は、民泊事業は想像以上に間口が広く、様々な方が参入できる可能性を秘めています。ただし、いくつかの重要な条件をクリアする必要があります。
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民泊を始める際の基本条件

民泊事業を始めるにあたり、最低限必要な条件があります。まず、物件を所有しているか、賃貸借契約で民泊営業の許可を得られることが前提となります。

次に、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出が必要です。届出には、管理業務主任者の設置や衛生管理体制の整備など、いくつかの要件を満たす必要があります。

また、地域によって民泊営業に関する独自のルールが設けられていることもあります。例えば、住居専用地域では年間営業日数が180日以内に制限されるケースや、マンションの管理規約で民泊が禁止されているケースなどです。

民泊開業に必要な書類は?

書類

民泊事業を始める際には、法令に基づいた適切な手続きが欠かせません。必要な書類を準備することは、スムーズな開業への第一歩となります。

申請書類

行政への届出には、以下のような書類が必要になります。

まず、住宅宿泊事業者の届出書を作成します。これには、営業を行う住宅の所在地や間取り、提供するサービスの内容などを記載します。また、本人確認書類や、建物の登記事項証明書なども添付が必要です。

次に、管理業務に関する書類です。管理業務主任者の選任届や、清掃などの維持管理方法を記載した書類、宿泊者の衛生確保に関する計画書なども求められます。

さらに、火災保険への加入証明や、近隣住民への説明会実施記録なども必要になる場合があります。地域によって追加で必要となる書類が異なりますので、所轄の自治体に確認することをお勧めします。

消防関係書類

消防法に基づく安全対策も重要な要件です。必要な書類は以下の通りです。

消防用設備等点検結果報告書は、消火器や火災報知器などの設備が適切に設置・維持されていることを証明する重要な書類です。また、防火管理者選任届出書や消防計画作成届出書も必要になります。

特に重要なのが、避難経路図の作成です。非常口や避難階段の位置、消火器の設置場所などを明確に示す必要があります。これらの図面は、宿泊者の安全確保のためにも、分かりやすく正確に作成することが求められます。

なお、建物の規模や構造によって必要な設備や書類が変わってきますので、事前に消防署に相談することをお勧めします。

民泊開業に必要な設備とは?

設備

民泊事業を始める際には、宿泊者の快適性と安全性を確保するための適切な設備の整備が不可欠です。設備の選定は、長期的な運営の効率性やコストにも大きく影響します。必要な設備について、重要なポイントをご説明します。

必須水回り設備

水回り設備は宿泊施設として最も重要な要素の一つです。適切な水回り設備がないと、営業許可を得ることができません。

トイレと洗面所は、清潔で使いやすい設備が求められます。温水洗浄便座の設置は、特に海外からの宿泊者に好評です。洗面台は十分な広さを確保し、シャワーヘッドの交換やタオル掛けの設置など、細かな配慮も必要になります。

浴室やシャワールームは、清掃のしやすさを考慮した設計が重要です。カビ防止のための換気設備や、温度調節機能付きの給湯システムなど、快適性と安全性を両立させた設備選びが必要です。

キッチン設備は、シンクの大きさや調理スペースの確保が重要です。IHクッキングヒーターは、火災予防の観点から推奨される選択肢です。また、食器洗い乾燥機の設置は、清掃の手間を大幅に軽減できます。

消防設備

消防設備は、法令で定められた基準を満たす必要があり、宿泊者の安全を守る上で最も重要な設備です。

火災報知器は各居室に設置が義務付けられています。煙感知式と熱感知式の適切な組み合わせが必要で、定期的な点検も欠かせません。消火器は、使用期限と設置場所に注意が必要です。

避難経路の確保も重要です。非常口誘導灯や避難経路図の設置は必須で、窓や階段など、複数の避難経路を確保する必要があります。また、防火カーテンや防炎カーペットなど、燃えにくい素材の使用も検討すべきです。

火災報知設備と消防機関への通報設備の連動システムの導入も推奨されます。深夜の火災にも迅速な対応が可能となり、安全性が大きく向上します。

家電などの基本的な設備・備品

快適な宿泊環境を提供するために、適切な家電製品や備品の選定が重要です。

エアコンは冷暖房機能に加え、空気清浄機能付きの機種を選ぶことで、より快適な環境を提供できます。また、除湿機能は、特に梅雨時期の室内環境の維持に役立ちます。

Wi-Fi環境の整備は現代の宿泊施設では必須です。安定した高速通信が可能なルーターの設置と、セキュリティ対策の実施が重要です。複数の端末が同時接続しても快適に使用できる通信環境を整えましょう。

テレビは、地上波放送に加え、動画配信サービスの視聴が可能な機種が望ましいです。また、充電用のUSBポートやコンセントの増設も、宿泊者の利便性を高める重要な要素となります。

洗濯機や乾燥機の設置は、長期滞在者には特に重宝されます。騒音対策として、低振動・低騒音タイプの選択や、防振マットの使用を検討しましょう。

収納設備も重要です。クローゼットやシューズボックスなど、宿泊者の荷物を適切に収納できるスペースの確保が必要です。また、貴重品の保管に使用できる金庫の設置も検討すべきです。

書類や設備を用意できないとどうなる?

民泊事業において、必要な書類の不備や設備の不足は、思わぬトラブルや深刻な事態を引き起こす可能性があります。適切な対応を怠ると、事業の継続に支障をきたすだけでなく、法的な問題に発展するケースもあります。具体的にどのようなリスクがあるのか、段階別に見ていきましょう。
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申請時

書類不備や設備要件の未達は、申請段階で様々な問題を引き起こします。

書類の不備や記載ミスがある場合、申請そのものが却下される可能性があります。例えば、建物の登記事項証明書や本人確認書類の添付忘れ、申請書の記載内容に不備があると、申請のやり直しを求められます。これにより、開業までの時間が大幅に延長されることになります。

消防設備に関する書類が不十分な場合も、申請は受理されません。消防用設備等点検結果報告書や防火管理者選任届出書などの不備は、消防法違反となる可能性があり、開業が認められないケースがあります。

また、必要な設備が整っていない状態での申請は、現地調査の段階で指摘を受けることになります。例えば、非常口の表示や避難経路の確保が不十分な場合、改善指示が出され、その対応に追加の時間とコストが必要になります。

運営後

運営開始後に書類や設備の不備が発覚した場合、より深刻な問題に発展する可能性があります。

まず、定期的な書類の更新や報告を怠ると、営業停止処分を受ける可能性があります。例えば、宿泊者名簿の不適切な管理や、事業報告書の未提出は、行政処分の対象となります。これは事業の継続に重大な影響を及ぼします。

設備面での不備は、宿泊者の安全に直結する問題です。火災報知器の未設置や消火器の期限切れなどが発覚した場合、即座に営業停止となる可能性があります。さらに、これらの不備が原因で事故が発生した場合、民事上の損害賠償責任も発生します。

衛生管理に関する設備不足も重大な問題です。浴室やトイレの清掃が適切に行えない状態や、換気設備の不備は、宿泊者の健康被害につながる可能性があります。こうした事態が発生すると、事業の評判が著しく低下し、回復が困難になることも考えられます。

また、近隣住民からの苦情や通報により、これらの不備が発覚するケースも少なくありません。そうなると、地域との関係性が悪化し、事業の継続自体が困難になる可能性があります。

さらに、設備の不備に起因する事故や、それに伴う補償問題は、保険の適用外となる可能性もあります。これは、予期せぬ高額な支出を強いられることを意味します。

専業・副業関係なく民泊を始められる?

マーケっト

民泊事業の参入を検討する際、「専業で始めるべきか、副業として始めるべきか」という判断に迷う方は少なくありません。実は、それぞれの運営形態にはメリット・デメリットがあり、自身の状況や目的に応じて最適な選択が変わってきます。

以下で、各運営形態の特徴を詳しく見ていきましょう。

専業としての民泊

専業として民泊事業を始める場合、事業に集中できる環境が整っていることが大きな強みとなります。

収益面では、複数物件の運営や高稼働率の維持が可能になるため、安定した収入を見込むことができます。宿泊者への細やかな対応や、口コミ評価の向上にも注力できるため、リピーターの獲得にもつながります。

一方で、事業が軌道に乗るまでの期間は、安定収入が得られないリスクがあります。また、観光需要の季節変動や、予期せぬ事態(感染症の流行など)による収入の変動にも備える必要があります。

副業としての民泊

本業と並行して民泊事業を始める場合、リスクを抑えながら事業のノウハウを蓄積できるメリットがあります。

初期投資を抑えながら、段階的に事業を拡大することが可能です。本業からの収入があるため、民泊事業の収益が安定するまでの期間も、経済的な不安が少なくなります。

ただし、本業との時間配分や、緊急時の対応に課題が生じる可能性があります。特に、深夜のトラブル対応や、急な予約変更への対応など、時間的制約のある業務との両立には工夫が必要です。

管理委託での運営

管理会社に運営を委託する形態は、時間的制約のある方や、運営の手間を最小限に抑えたい方に適しています。

予約管理から清掃、トラブル対応まで、専門家に任せることができるため、安定した運営が期待できます。また、管理会社のノウハウを活用できることで、効率的な集客や収益の最大化も期待できます。

一方で、委託料が発生するため、収益性は自主運営と比べて低くなります。また、管理会社の選定や、運営方針の擦り合わせなど、新たな課題も生じる可能性があります。

自主運営での展開

自主運営は、より高い収益性を目指す方や、独自のサービスを提供したい方に向いています。

運営の全てを自身でコントロールできるため、柔軟なサービス提供や、収益の最大化が可能です。宿泊者との直接的なコミュニケーションを通じて、独自の価値を提供することもできます。

しかし、予約管理から清掃、トラブル対応まで、全ての業務を自身で行う必要があります。そのため、時間的な拘束が大きく、特に開業初期は運営ノウハウの習得に時間を要します。また、緊急時の対応体制の整備も重要な課題となります。

自主運営を選択する場合は、以下のような点に特に注意が必要です。

  • 24時間体制での緊急対応が可能な体制作り
  • 清掃やメンテナンスの効率的な運営方法の確立
  • 予約管理システムの適切な選択と活用
  • 税務や会計処理の知識習得

これらの課題に対しては、段階的に対応していくことが重要です。例えば、開業当初は清掃のみを外部委託し、運営が軌道に乗ってから徐々に自主運営の範囲を広げていくという方法もあります。

まとめ

民泊事業は、必要な法的要件を満たし、適切な設備を整えることで、誰でも始めることができます。ただし、申請書類の準備や設備の整備には細心の注意が必要です。また、専業か副業か、管理委託か自主運営かという選択は、自身の状況や目的に応じて慎重に検討することが重要です。特に開業初期は、段階的に事業を拡大していく慎重なアプローチが、安定した運営につながります。