民泊経営に興味を持つものの、そのメリットやデメリット、運営管理の方法や集客の仕方など、さまざまな疑問や不安を抱えていませんか?
この記事では、民泊ビジネスへの参入を検討している方や、空き家の有効活用を模索している方に向けて、民泊経営の魅力とリスク、そして安定的な運営のための具体的な方法について詳しく解説します。
民泊経営のメリットって何があるの?

民泊経営には、さまざまなメリットがあります。うまく活用すれば、空き家の有効活用から安定収益の確保、さらには地域貢献まで、多岐にわたる恩恵を享受できるでしょう。
ここでは、主要な5つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
空き家や未使用物件の有効活用ができる
民泊を始めるにあたって、まず注目したいのが空き家や未使用物件の活用です。総務省の令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果によると、日本には、900万戸もの空き家が存在すると言われています。2018年(849万戸)と比べ、51万戸の増加で過去最多となっており、総住宅数に占める空き家の割合は13.8%となっています。
このような空き家は、管理費用はかかるものの、そのままでは収益を生み出すことはできません。しかし、民泊として運用することで、その物件に新たな価値を吹き込むことができるのです。遊休不動産が収益物件へと生まれ変わるわけです。
初期投資が少なく始められる
民泊参入の大きな利点の一つが、比較的少ない初期投資で始められることです。ホテルやマンスリーマンションなど他の宿泊事業と比べると、開業時に必要な資金は格段に抑えられます。
民泊であれば、物件さえ確保できれば、あとは内装を整え、家具家電を揃えるだけで営業開始できます。もちろん、内装のグレードを上げたり、高級家具を揃えたりすればそれだけ初期費用はかさみますが、シンプルな設えの物件でも十分に需要があります。
低リスクで小規模から始められるのは、民泊ならではの魅力と言えるでしょう。資金力に乏しい個人オーナーでも、このビジネスに参入しやすいのです。
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安定した収益を得られる可能性がある
観光需要が見込める立地であれば、民泊経営は安定した収益をもたらしてくれる可能性があります。特にインバウンド需要の取り込みに成功すれば、通年を通じて高い稼働率を維持できるでしょう。
民泊の宿泊料金は、ホテルに比べるとリーズナブルな設定が多いです。それでも一定の利益率を確保できるのは、ランニングコストを抑えられるからです。ホテルのようにフロントスタッフを常駐させる必要はありませんし、清掃や運営管理も外部に委託できます。
また、宿泊者の属性によっては、長期滞在を望むケースも少なくありません。1週間や1ヶ月など、まとまった期間の予約が入れば、収益の安定性はさらに高まります。変動費を低く保ちつつ、高単価の宿泊を確保できるわけです。
地域活性化への貢献できる
民泊は、地域活性化の起爆剤としても注目されています。民泊誘致により、これまで観光客の少なかった土地に新たな人の流れが生まれます。交流人口の増加は、地元経済の活性化にもつながるでしょう。
実際、民泊開業をきっかけに、古民家再生や町並み整備が進んだ地域の事例は数多くあります。空き家の増加に悩む地方にとって、民泊はまちづくりの有力なツールになり得ます。
行政との連携をうまく進められれば、エリア一体での面的な民泊整備も可能です。点としての施設展開にとどまらず、面としての広がりを意識することで、より大きな地域活性の効果が期待できるはずです。
不動産価値を上げて売却も可能
民泊として実績のある物件は、不動産価値の向上が見込めます。安定した収益力が認められれば、利回りに応じた高い評価を受けられるでしょう。
空き家のままでは売却が難しかった物件でも、民泊として再生することで、売却可能性が広がります。言わば出口戦略の選択肢が増えるわけです。
民泊経営で一定期間キャッシュフローを得た上で、最終的には物件を売却するという投資戦略も考えられます。購入時は割安でも、付加価値をつけて高値で売却すれば、トータルでの利回りは大きく跳ね上がります。
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民泊経営で気をつけるべきデメリットは?

民泊ビジネスは魅力的な投資機会である一方で、いくつかの潜在的なデメリットやリスクも存在します。民泊経営を検討する際は、これらの落とし穴を十分に理解し、対策を講じておくことが肝要です。
ここでは、民泊特有の注意点を5つ取り上げ、その対処法について考えていきましょう。
年間営業日数の制限がある
民泊を営むにあたり、まず直面するのが年間営業日数の制限です。現行法では、住宅宿泊事業法(民泊新法)の下で営業する場合、年間180日までしか営業できません。これは、民泊収益が季節変動の影響を受けやすいことを意味します。
180日の営業でどれだけの収益を上げられるかは、立地や物件の魅力、旅行シーズンの需要動向などに大きく左右されます。繁忙期の稼働率が高くても、閑散期の落ち込みをカバーしきれないケースは少なくありません。年間を通じた平均稼働率をシビアに試算し、採算性を冷静に判断する必要があります。
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近隣住民とのトラブル
民泊運営では、近隣住民とのトラブルにも細心の注意を払わなければなりません。宿泊客のマナー違反により、周辺からクレームを受けるリスクは常につきまといます。深夜の騒音トラブルや、ゴミ出しルールの不徹底などが典型例です。
トラブルを未然に防ぐためには、宿泊客に対するマナー啓発が欠かせません。ハウスルールを明示し、チェックイン時に丁寧な説明を心がけましょう。物件の防音性を高めることも有効です。万が一クレームがあった場合は、真摯に対応し、早期解決を図ることが肝要です。
物件の破損や汚損のリスクがある
宿泊施設である以上、物件の破損や汚損は避けられないリスクです。宿泊客の不注意による設備の破損、あるいは故意によるいたずら被害などが考えられます。特に長期滞在の場合、損耗の度合いは大きくなりがちです。
対策としては、まず物件の定期点検と迅速な修繕を徹底することが大切です。同時に、宿泊規約で破損時の弁償ルールを明記しておくことも重要です。保険加入も検討に値するでしょう。想定外の事態に備えて、内装や設備の更新費用は常に確保しておく必要があります。
集客の難しさ
立地条件によっては、安定的な集客に苦戦するケースもあります。民泊需要の少ない土地では、たとえ質の高い施設を整えても、思うように予約が取れない恐れがあります。旅行シーズンの谷間は特に厳しい状況に直面します。
集客力を高めるには、魅力的な物件コンセプトの設定と、効果的なプロモーション活動が不可欠です。OTAの活用はもちろん、自社サイトの充実、SNSでの情報発信、現地ツアー造成など、あらゆる手段を講じる必要があります。地域の観光資源と連携した宿泊プランの造成も有効でしょう。
管理の手間がかかる
民泊経営には、想像以上の管理負担が伴います。特に清掃や鍵の受け渡しなど、宿泊のたびに発生する作業は小さくありません。機械の不具合やトラブル対応にも手間がかかります。経営者自らが現場に足を運ぶ必要も少なくありません。
管理業務の負担軽減には、適切な外部リソースの活用が欠かせません。清掃代行サービスの利用は、民泊オーナーの間で一般的になっています。IoT技術の導入で、鍵の遠隔操作や設備管理の自動化も可能です。どこまで自分で手掛け、何を外注するか。費用対効果を考えながら、最適な運営体制の構築を目指しましょう。
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民泊の運営管理はどうすればいい?

民泊を始めたはいいものの、予約管理から清掃、ゲスト対応まで、宿泊のたびに発生する業務は小さくないのです。しかし、うまくリソースを活用することで、これらの作業を大幅に効率化することは可能です。
ここでは、民泊運営を円滑に進めるための4つの方策について詳しく見ていきましょう。
管理業者の活用
民泊管理を専門とする業者に運営を任せるのは、オーナーの負担を軽減する有力な選択肢の一つです。管理業者は、予約管理から清掃、ゲスト対応、トラブル処理まで、民泊運営に関わるあらゆる業務を代行してくれます。中には、物件の内装設計や家具・備品の調達、損耗時の交換なども手掛ける業者もあります。
管理業者を活用するメリットは、何より運営の手間を丸ごと外注できることです。オーナー自身が現場に足を運ぶ必要がなくなるので、本業に専念することが可能になります。一方で、管理費用の発生は避けられません。物件の立地や管理内容によって料金体系は異なりますが、月額数万円から10万円程度が相場と言えるでしょう。
管理を任せる業者選びは慎重に行う必要があります。実績や信頼性はもちろん、提供サービスの内容、料金の適正さ、トラブル対応力などを見極めることが大切です。複数の業者に見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。
清掃サービスの導入
清掃業務は、民泊オーナーにとって特に負担の大きい作業の一つです。宿泊のたびに部屋を隅々まで掃除し、アメニティを補充する必要があります。清掃が行き届かないと、ゲストからのクレームにつながりかねません。自身で掃除を行うとなると、相当な時間と労力を要します。
そこで、民泊オーナーの間で広く利用されているのが、民泊専門の清掃サービスです。オンラインで依頼すると、指定の日時に清掃スタッフが物件を訪問し、専門の機材と技術で部屋を美しく仕上げてくれます。料金は1回あたり1万円前後が平均的ですが、依頼頻度によっては月額プランがお得になるケースもあります。
清掃サービスを利用すれば、オーナー自身が掃除に時間を割く必要がなくなります。仕上がりの質の高さも期待できるでしょう。サービス選びの際は、スタッフの教育体制や、万が一の際の補償制度の有無などもチェックしておくとよいでしょう。
オンライン予約システムの利用
宿泊予約の管理には、意外に手間がかかるものです。電話やメールでの問い合わせ対応、空室状況の管理、予約金の入金確認など、煩雑な作業が発生します。こうした予約管理の負担を大幅に軽減してくれるのが、オンライン予約システムです。
Airbnbなどの大手民泊仲介サイトに物件を掲載すれば、サイト上で空室カレンダーの更新や料金設定、予約の受付などが自動的に行われるようになります。ゲストとのやり取りもシステム上で完結するため、オーナーの手を煩わせません。決済の仕組みも整っているので、入金管理の手間も省けます。
予約システムを利用する際は、手数料の発生には注意が必要です。Airbnbの場合、宿泊料金の3〜5%程度のサービス料がオーナー負担となります。単独の予約サイト構築も選択肢の一つですが、集客力では大手サイトに及ばないことが多いでしょう。コストと集客効果のバランスを考えながら、最適な予約チャネルを選ぶことが肝要です。
ゲスト対応の効率化
民泊オーナーにとって、ゲストからの問い合わせや要望への対応も大きな負担となります。鍵の受け渡し方法から設備の使い方、周辺情報の案内まで、宿泊客から寄せられる質問は実に多岐にわたります。24時間365日、迅速かつ丁寧な対応が求められるため、オーナー自身がゲスト対応に追われてしまうケースは少なくありません。
こうしたゲスト対応の負担を軽減する有効な方法が、チャットボットの活用です。AIを搭載したチャットボットを導入することで、ゲストからの定型的な質問への自動応答が可能になります。宿泊施設の設備や、交通アクセス、周辺のお勧めスポットなど、あらかじめ想定される質問と回答をシステムに登録しておけば、オーナー不在時でもスムーズな対応が可能です。
また、IoT技術を活用したスマートロックの導入も、ゲスト対応業務の効率化に役立ちます。リモートで鍵の解錠・施錠ができるようになれば、わざわざ物件に足を運んで鍵を受け渡す必要がなくなります。事前にアプリで開錠権限を付与しておくだけで、ゲストが自由にチェックインできるようになるのです。
民泊運営の負担を軽減するためには、このように既存のリソースやテクノロジーを上手に活用することが何より重要です。管理代行サービスや清掃サービス、オンラインツールの導入は、オーナーの作業効率を大幅に高めてくれます。
自身の置かれた状況を見極めながら、最適な運営管理手法を選択していきましょう。
民泊の集客と収益を安定させるには?

民泊ビジネスを軌道に乗せるには、安定した集客と収益の確保が欠かせません。せっかく魅力的な物件を用意しても、宿泊客が集まらなければ採算が取れないのです。とはいえ、民泊の集客は一筋縄ではいきません。旅行者のニーズは多様化しており、競合物件も数多く存在します。そこで重要になってくるのが、戦略的なマーケティング施策の展開です。
ここでは、集客力と収益力の向上につながる3つのアプローチについて詳しく見ていきましょう。
ターゲット層の明確化
効果的な集客を行うためには、まずターゲットとなる宿泊客層を明確にすることが大切です。自身の物件の特性を踏まえ、どのような属性の旅行者に訴求していくのかを決める必要があるのです。
例えば、ファミリー向けの広めの物件であれば、子連れ旅行者をメインターゲットに設定するのが自然でしょう。キッチンや洗濯機などの設備を充実させ、子供向けのアメニティを用意するなど、ファミリーのニーズに合わせた物件づくりを心がけます。宿泊プランも、ファミリー割引やお子様無料プランなど、子連れ層に魅力的な内容を打ち出していくことが肝要です。
逆に、コンパクトな物件であれば、一人旅やカップル、出張客などをターゲットにするのも一案です。交通の便がよく、スタイリッシュな内装であれば、ビジネス客の需要も見込めるかもしれません。Wi-Fiやデスクスペースの充実など、ビジネス利用に適した環境整備がポイントとなります。
物件の立地や設備、価格帯などを総合的に勘案し、メインターゲットを絞り込んでいきましょう。ターゲットが明確になれば、物件コンセプトの最適化や、プロモーション施策の焦点化が可能になります。
効果的な広告戦略
安定的な集客を実現するには、効果的な広告宣伝活動が不可欠です。潜在顧客に向けて物件の魅力を訴求し、予約につなげていく必要があります。そのためには、ターゲット層の属性や行動特性を踏まえ、最適な広告手法を選択することが重要になってきます。
先述の通り、ファミリー層がメインターゲットであれば、子育て関連のWebメディアや情報誌などに広告を出稿するのが有効でしょう。スマホの利用率が高い子育て世代の特性を踏まえ、SNSでの情報発信やターゲティング広告などにも注力します。
ビジネス客が中心であれば、出張に特化したオンライン旅行サイトへの登録がマストです。法人向け割引プランなどを設定し、出張需要の取り込みを狙います。交通広告や、ビジネス街でのチラシ配布なども一考の価値があるでしょう。
予算を踏まえながら、ターゲット層に効果的にリーチできる広告メディアを選んでいくことが肝要です。一方で、広告出稿だけでは集客力には限界があります。物件の魅力を高め、リピーターを増やしていくことも重要なポイントとなります。
口コミの活用
安定した集客と収益確保のためには、リピーターの獲得が欠かせません。一度利用したゲストに、繰り返し泊まってもらえる物件づくりが求められるのです。その鍵を握るのが、クチコミの活用です。
宿泊客の満足度を高め、ポジティブな評価を引き出すことが何より大切です。物件の美観の維持はもちろん、ゲストの要望に柔軟に対応する姿勢も重要でしょう。アメニティのグレードを上げたり、ご当地のお土産を用意したりと、ゲストに喜ばれる「おもてなし」の工夫が求められます。
ゲストからの高評価が増えれば、クチコミサイトでの物件の評判が上がり、新規顧客の獲得にもつながります。宿泊後のレビューへの丁寧な返信を心がけ、物件の改善努力をアピールすることも効果的です。
さらに、リピーターへの特典付与などの施策も有効でしょう。割引クーポンの発行や、連泊プランの設定などで、再訪を促します。固定客が増えることで、収益の安定性も高まるはずです。
クチコミを集客の武器とするためには、地道な顧客満足度の向上努力が欠かせません。ゲストとの良好なコミュニケーションを通じて、ファンを増やしていく取り組みが重要になるでしょう。
まとめ
民泊経営には、空き家の有効活用や高い収益性、地域活性化への貢献といったメリットがある一方で、営業日数の制限や近隣トラブル、集客の難しさなどのデメリットも存在します。
安定的な民泊ビジネスを展開するためには、管理業者の起用や清掃サービスの導入、オンライン予約システムの利用といった運営の効率化と、ターゲット層の明確化や戦略的な広告展開、口コミの活用などによる集客力の強化が欠かせません。
民泊の可能性とリスクを冷静に見極め、自身の状況に合った運営手法を選択していくことが、民泊経営の成功への鍵となるでしょう。