大阪市で民泊事業を始めたいけれど、手続きや必要な費用が分からない。そんな悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。大阪市は国家戦略特区に指定されており、2025年の大阪・関西万博開催に向けて、さらなる宿泊需要の増加が見込まれます。

この記事では、民泊事業の始め方から、運営のポイント、収益性まで、具体的な数値とともに解説します。これから民泊事業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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大阪で民泊を始めることができるの?

大阪

大阪市は国家戦略特区に指定されており、住宅宿泊事業法(民泊新法)と特区民泊の2つの制度で民泊営業が可能です。大阪市全域で住宅宿泊事業法に基づく営業が可能である一方、特区民泊には地域制限があります。

それでは、具体的に民泊を始められる地域について解説します。

民泊可能な大阪市内の地域はどこ?

住宅宿泊事業法による民泊は、大阪市全24区で実施可能です。ただし、マンションやアパートの場合、管理規約で民泊が禁止されていないことが必要な条件となります。

特区民泊の場合、中央区、浪速区、天王寺区、北区、福島区、西区、大正区、西成区の8区に限定されます。(参考:大阪府 大阪市内における外国人滞在施設経営事業(旅館業法の特例)実施地域)加えて、建物は耐火建築物または準耐火建築物である必要があります。

用途地域による制限も存在します。住居専用地域では、一戸建ての場合、延べ床面積の2分の1以上を居住用として使用する必要があります。マンションやアパートでは、住居専用地域での営業に特別な規制が設けられています。

また、防火・準防火地域に指定されている地域では、消防法に基づく設備設置が必須となります。具体的には、自動火災報知設備や誘導灯の設置が求められます。営業開始前に消防署の検査を受ける必要があるため、事前の確認が重要です。

さらに、大阪市では都市計画で定められた特別用途地区があり、その地区内では建築物の用途が制限される場合があります。民泊の開始前に、該当地域の用途規制を確認することが必要不可欠です。

大阪市では、2025年の大阪・関西万博開催に向けて、宿泊需要の増加が見込まれています。特に、会場となる夢洲への交通アクセスが良好な地域での民泊需要は高まる見通しです。

大阪で民泊を始めるメリットとは?

メリット

大阪市は日本有数の観光都市であり、民泊事業を展開する上で大きな可能性を秘めています。とりわけ、2025年の大阪・関西万博の開催に向けて、宿泊需要の更なる拡大が見込まれます。

それでは、大阪で民泊を始めるメリットについて詳しく解説します。

インバウンド需要の高まりを取り込める

大阪市の外国人宿泊者数は、2019年に約1153万人を記録しました。万博開催に向けて、この数字は更に伸びる見込みです。特に、USJや大阪城、道頓堀といった観光名所の周辺エリアでは、インバウンド需要の取り込みが期待できます。

さらに、大阪市は関西国際空港からのアクセスが良好で、中国や韓国、東南アジアからの観光客にも人気の高い都市です。加えて、関西圏の観光拠点としても機能するため、京都や奈良への観光客の宿泊需要も見込めます。
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通常賃貸より高い収益が期待できる

民泊の1泊あたりの単価は、通常の賃貸と比較して高く設定することが可能です。大阪市内の繁華街や観光地近くでは、1泊あたり1万円以上の料金設定も珍しくありません

また、繁忙期には料金を上げることで、収益を最大化することができます。特に、花見シーズンや夏祭り、年末年始といった観光ピーク時には、通常の2倍以上の料金設定も可能です。

柔軟な運営が可能

民泊では、需要に応じて柔軟に価格設定を変更できます。イベント開催時や観光シーズンには料金を上げ、オフシーズンには料金を下げることで、稼働率を調整することが可能です。

また、長期滞在者向けに週単位や月単位の割引プランを設定することもできます。ビジネス客向けに平日割引を導入するなど、ターゲットに合わせた料金プランの設計が可能です。

物件価値を向上することができる

民泊向けにリノベーションを行うことで、物件の資産価値を高めることができます。特に、築年数の経過した物件でも、内装のグレードアップや設備の更新により、価値を向上させることが可能です。

また、民泊事業で得た収益を物件の維持管理に投資することで、資産価値の維持向上につながります。さらに、民泊実績のある物件は、将来的な売却時にも付加価値として評価される可能性があります。
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大阪で民泊を始めるデメリットは?

デメリット

民泊事業には魅力的な収益機会がある一方で、運営上の課題も存在します。事業開始前に、これらのデメリットを理解し、対策を講じることが重要です。

それでは、具体的なデメリットについて解説します。

初期投資の負担がある

消防法に基づく設備投資には、自動火災報知設備で50万円以上、誘導灯設置で10万円以上の費用が必要です。建物の規模や構造によっては、スプリンクラー設備の設置も求められ、この場合100万円以上の投資が発生します。

内装工事では、防音対策や水回りの改修、家具・備品の購入など、1部屋あたり200万円前後の費用が見込まれます。また、Wi-Fi設備やスマートロックなどのIT機器の導入にも、追加で30万円程度の投資が必要です。

近隣住民との関係構築が難しい

宿泊客の生活音や深夜の出入り、ゴミ出しルールの違反などにより、近隣住民からの苦情が発生するリスクがあります。特に、マンションやアパートでは、他の居住者との共用部分の使用方法をめぐるトラブルが起きやすい傾向にあります。

対策として、防音工事の実施や宿泊客へのルール説明の徹底が必要です。また、近隣住民向けの説明会開催や緊急連絡先の共有など、コミュニケーションの強化が求められます。

24時間体制での管理が必要

チェックインやチェックアウトの対応、緊急時のトラブル対応など、24時間体制での管理が必須です。特に、外国人宿泊客の場合、言語対応や文化の違いによる問題解決に時間を要することがあります。

深夜のトラブル対応や急な設備故障の修理など、予期せぬ事態への即時対応が求められます。管理会社への委託も可能ですが、月額10万円程度の固定費用が発生します。
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季節変動によるリスクがある

観光シーズンとオフシーズンで稼働率に大きな差が生じます。大阪の場合、夏祭りや花見シーズンは稼働率が80%を超える一方、冬季は30%程度まで低下することがあります。

また、天候不順や社会情勢の変化により、予約のキャンセルが発生するリスクもあります。固定費の支払いは継続して発生するため、収益の変動に備えた資金計画が必要不可欠です。

大阪市で民泊を始めるにはどんな手続きが必要?

民泊事業を開始するには、法令に基づく複数の手続きを順序立てて進める必要があります。特区民泊と住宅宿泊事業法では、申請手続きが異なりますが、どちらも厳格な審査があります。

それでは具体的な手続きの流れを解説します。

事前相談と物件調査

保健所への事前相談では、営業区域の確認や建築基準法上の用途制限、衛生管理基準などの確認が必要です。具体的な相談項目は以下の通りです。

防火対象物の確認や消防設備の設置基準については、管轄の消防署で事前相談を行います。物件の構造や規模に応じて、必要な消防設備が異なるため、専門家の同行が推奨されます。

建築基準法上の用途確認では、特に住居専用地域での営業制限や建物の耐火性能について、詳細な確認が求められます。場合によっては、建築士による現地調査が必要です。

消防法令適合通知書の取得

消防法令適合通知書の取得には、自動火災報知設備や誘導灯などの設置が必要です。設備工事完了後、消防署の立入検査を受け、基準適合性の確認を受けます。

設備工事では、建物の構造や規模に応じた適切な消防設備の選定が重要です。工事業者の選定時には、民泊施設の消防設備設置実績のある業者を選ぶことが望ましいです。

許可申請に必要な書類準備

申請には、以下の書類が必要となります。

建物の登記簿謄本や賃貸借契約書などの権利関係を証明する書類、設備の配置図や間取り図などの図面類、事業計画書、管理体制に関する書類などを準備します。

外国人宿泊者の受入れを予定している場合、多言語対応の体制整備に関する書類も必要です。また、周辺住民への説明会の実施記録や同意書の提出が求められる場合もあります。

現地調査と認定

申請書類の提出後、保健所職員による現地調査が実施されます。調査では、申請内容と実際の設備状況の一致、衛生管理体制の確認、防火設備の設置状況などが詳細にチェックされます。

現地調査で指摘された事項については、速やかな改善対応が必要です。全ての基準を満たしていることが確認された後、営業許可証が交付されます。許可取得後は、定期的な立入検査や更新手続きにも対応が必要です。

初期費用や運営コストはどれくらい?

民泊事業の収益性を検討する上で、初期費用と運営コストの把握は必須です。物件調達から開業準備まで、具体的な費用項目について解説します。

物件取得・賃借にかかる費用

物件取得の場合、大阪市内の観光地周辺で1K~1LDKの中古マンションは2,000万円前後が相場です。商業地域や繁華街では3,000万円以上の物件も珍しくありません。

賃借の場合、月額賃料は8~15万円が一般的です。この他、敷金・礼金で賃料3~4ヶ月分、仲介手数料で賃料1ヶ月分が必要です。保証会社への加入も必須で、初回保証料として賃料1ヶ月分程度が発生します。

設備投資・内装工事の費用

内装工事には、床材の張替えや壁紙の貼替え、水回りの改修など、1室あたり150~200万円程度の費用が必要です。エアコンや照明器具、家具・家電の購入には80~100万円程度を見込みます。

法定設備として、自動火災報知設備に50~70万円、誘導灯に10~15万円、消火器具に3~5万円が必要です。スマートロックやWi-Fi設備などのIT機器には30~40万円の投資が必要です。

許認可取得にかかる費用

申請関連費用として、住宅宿泊事業法による届出では、登録免許税2万円と申請書類作成費用10~15万円が発生します。特区民泊の場合、登録免許税4万円と申請書類作成費用15~20万円が必要です。

消防検査や保健所検査の手数料として、5~10万円程度を見込む必要があります。建築士による確認申請や検査には、20~30万円の費用が発生します。行政書士に申請を依頼する場合、30~50万円の報酬が必要です。

大阪市で民泊運営を成功させる秘訣は?

大阪市での民泊運営成功には、戦略的な立地選定と適切な価格設定が不可欠です。インバウンド需要と国内観光客の双方を取り込むための具体的な方策を解説します。

立地選びのポイント

難波・心斎橋エリアは、鉄道駅から徒歩10分圏内の物件で稼働率90%以上を達成可能です。特に、商店街や飲食店街に近接する物件は、宿泊需要が高くなります。

なんばパークス周辺では、平均宿泊単価が1万5千円前後で推移し、年間を通じて安定した集客が見込めます。USJ方面へのアクセスの良さから、家族連れの需要も高い傾向にあります。

大阪城周辺エリアは、外国人観光客に人気があり、1泊2万円以上の高単価設定も可能です。桜の季節には特に需要が増加し、稼働率は95%に達します。

収益最大化のための価格設定

平日と週末で20~30%の価格差を設けることで、稼働率の平準化が可能です。具体的には、平日1万円、週末1万3千円といった設定が効果的です。

イベント開催時期には、通常価格の1.5~2倍まで単価を引き上げることができます。大阪マラソンや祭り期間中は、3週間前から予約が埋まる傾向にあります。

清掃料金は別途徴収とし、1回あたり5千円程度の設定が一般的です。連泊割引として3泊以上で10%オフ、週単位の予約で20%オフなどの料金プランも有効です。

まとめ

大阪市での民泊事業は、高い収益性と将来性を秘めています。特に、難波・心斎橋エリアや大阪城周辺では、インバウンド需要を見込んだ安定した運営が可能です。

ただし、成功のためには適切な立地選定、消防法対応などの初期投資、24時間管理体制の整備が不可欠となります。事業開始前の周到な準備と、収支計画の策定により、持続可能な民泊運営を実現できます。