民泊事業を始めたものの、日々の管理業務に追われて本業や私生活との両立が難しくなっていませんか?あるいは、これから民泊オーナーとして始動するにあたり、煩雑な管理業務をどうすればいいか頭を悩ませていませんか?
そんな悩みを解決するのが「住宅宿泊管理業者」です。この記事では、住宅宿泊管理業者の役割から業務内容、なるメリット、デメリット、なり方までを詳しく解説します。
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住宅宿泊管理業者とは何か?

住宅宿泊管理業者とは、2018年に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づき、国土交通大臣の登録を受けた事業者のことを指します。民泊事業者に代わって物件の管理業務を行う専門家であり、民泊運営の要となる存在です。
民泊所有者が自ら管理業務を行うことが難しい場合や、より効率的な運営を目指す場合に、これらの業者に業務を委託することができます。特に、不在型の民泊(オーナーが不在の状態で運営する民泊)の場合は、住宅宿泊管理業者への委託が法律で義務付けられています。
住宅宿泊管理業者が行う6つの業務

民泊管理において、住宅宿泊管理業者は法律で定められた重要な役割を担っています。
住宅宿泊管理業者が行う主な業務について、具体的に見ていきましょう。
宿泊者対応と施設管理
宿泊者対応は民泊運営の最前線とも言える重要な業務です。住宅宿泊管理業者は、チェックインからチェックアウトまで、宿泊者とのコミュニケーションを一手に引き受けます。
まず、チェックイン対応では、鍵の受け渡しだけでなく、施設の使用方法の説明や周辺情報の案内も行います。対面でのチェックインに加え、スマートロックを活用した非対面チェックインシステムを導入している管理業者も増えています。これにより、深夜の到着にも柔軟に対応できるようになりました。
また、宿泊中の問い合わせ対応も重要な役割です。エアコンの使い方が分からない、お湯が出ないなどのトラブルから、周辺の飲食店の案内まで、様々な問い合わせに対応します。特に外国人宿泊者の場合は、言語の壁もあるため、多言語対応ができる管理業者が求められています。
施設管理面では、建物や設備の定期点検、修繕の手配なども行います。エアコンやお湯が出ないといった設備トラブルが発生した場合は、迅速に修理業者を手配し、宿泊者の満足度を下げないよう対応します。
衛生管理と安全確保
衛生管理と安全確保は、宿泊施設として最も基本的かつ重要な要素です。住宅宿泊管理業者は、宿泊者が快適に過ごせるよう、徹底した清掃と安全対策を行います。
清掃業務では、チェックアウト後の客室清掃はもちろん、シーツやタオルなどのリネン交換、消耗品の補充なども行います。特に新型コロナウイルス感染症の流行以降は、アルコール消毒や換気など、より高度な衛生対策が求められるようになりました。管理業者は最新の衛生基準に沿った清掃マニュアルを作成し、清掃スタッフへの教育も徹底しています。
また、定期的な設備点検も欠かせません。火災報知器や消火器などの防災設備の点検、ガス漏れや水漏れのチェック、電気設備の安全確認など、宿泊者の安全に直結する項目を定期的に確認します。古い建物の場合は、特に注意が必要です。
さらに、宿泊者の健康と安全を守るため、適切な室温管理や湿度管理も重要な業務となります。夏場のエアコンフィルター清掃や、冬場の暖房器具の点検なども、季節に応じて行います。
宿泊者名簿の作成と管理
宿泊者名簿の作成と管理は、法律で義務付けられている重要な業務です。住宅宿泊管理業者は、宿泊者の個人情報を適切に収集し、安全に保管する責任を負っています。
宿泊者名簿には、宿泊者の氏名、住所、職業、国籍、旅券番号(外国人の場合)、連絡先、宿泊日など、様々な情報を記録します。これらの情報は、防犯上の理由だけでなく、緊急時の連絡や税務上の記録としても重要です。
また、宿泊者名簿は法律上、宿泊日から3年間の保存が義務付けられています。適切な保管方法と廃棄方法も、住宅宿泊管理業者の重要な業務の一つです。
さらに、行政からの求めがあった場合は、名簿の提出も必要となります。このような法的対応も含め、宿泊者名簿の作成と管理は、民泊運営において非常に重要な業務と言えるでしょう。
近隣トラブル防止と対応
民泊運営において避けて通れないのが、近隣住民との関係です。住宅宿泊管理業者は、トラブルを未然に防ぐための対策と、万が一問題が発生した場合の迅速な対応を行います。
まず、トラブル防止の基本は、宿泊者への明確なルール説明です。日本の生活習慣やマナー、特にゴミ出しや深夜の騒音に関するルールは、外国人宿泊者にとって馴染みがないことも多いため、チェックイン時の丁寧な説明や、多言語での案内表示が重要となります。
さらに、近隣住民とのコミュニケーションも重要です。民泊開始前に挨拶回りをしたり、定期的に情報交換の場を設けたりすることで、理解と協力を得ることができます。住宅宿泊管理業者は、オーナーに代わってこうした地域との関係構築も担います。
万が一、近隣から苦情が寄せられた場合は、迅速かつ誠実な対応が求められます。苦情の内容を正確に把握し、必要な対策を講じるとともに、近隣住民に対して誠意ある説明と謝罪を行います。場合によっては、宿泊者に対して注意や退去要請を行うこともあります。
緊急時の対応
民泊運営において、常に備えておくべきなのが緊急時の対応です。住宅宿泊管理業者は、24時間体制で様々な緊急事態に対応できる体制を整えています。
最も重要なのは、宿泊者の健康や安全に関わる緊急事態への対応です。宿泊者が急病になった場合や、怪我をした場合には、迅速に医療機関への連絡や搬送の手配を行います。特に外国人宿泊者の場合は、言語の問題もあるため、通訳サービスの手配なども含めた総合的なサポートが必要となります。
また、火災や地震などの災害時の対応も重要です。避難経路の案内や、最寄りの避難場所の情報提供、場合によっては避難誘導まで行います。こうした緊急時に備えて、あらかじめマニュアルを作成し、スタッフ全員が適切に対応できるよう訓練しておくことも、住宅宿泊管理業者の重要な役割です。
設備トラブルへの対応も欠かせません。水漏れやガス漏れ、停電など、宿泊環境に影響を与える緊急事態が発生した場合は、迅速に修理業者や関係機関への連絡を行い、宿泊者の安全と快適さを確保します。
行政手続き
民泊運営には、様々な行政手続きが伴います。住宅宿泊管理業者は、これらの複雑な手続きをオーナーに代わって効率的に行うサポートを提供します。
まず、民泊開始時には、住宅宿泊事業届出書の作成と提出が必要です。この届出書には、物件の情報、設備の状況、安全対策の内容など、詳細な情報を記載する必要があります。住宅宿泊管理業者は、必要書類の作成から提出までをトータルでサポートし、スムーズな民泊開始を実現します。
また、消防法や建築基準法など、関連法規への対応も重要です。消防設備の点検記録や、建物の安全性に関する書類の作成と保管も、住宅宿泊管理業者の業務の一つです。
さらに、定期的な報告義務もあります。住宅宿泊事業法では、2か月ごとに宿泊日数や宿泊者数の報告が義務付けられており、これを怠ると罰則の対象となる場合もあります。住宅宿泊管理業者は、これらの報告業務を正確かつ期限内に行い、オーナーの法令遵守をサポートします。
法令は常に改正される可能性があるため、最新の法令情報を把握し、必要に応じて対応することも重要です。住宅宿泊管理業者は、常に法令動向をウォッチし、オーナーに必要な情報と対応策を提供しています。
住宅宿泊管理業者になるメリットは?

住宅宿泊管理業者は民泊市場の成長とともに、管理業者としての専門性や経験は、ますます価値を高めていくでしょう。
では、住宅宿泊管理業者になるメリットについて、具体的に見ていきましょう。
安定した収入源を得ることができる
住宅宿泊管理業者として事業を展開する最大のメリットの一つが、安定した収入源を確保できることです。民泊物件の管理委託料は、通常、月額固定費と売上連動の成功報酬を組み合わせた形で設定されることが多く、一定の基本収入を確保しながら、成果に応じた収入アップも期待できます。
基本管理料は、物件規模や提供するサービス内容によって異なりますが、一般的には売上の15%〜30%程度に設定されているケースが多いです。
また、複数の物件を管理することで、収入の安定性とスケールメリットを同時に実現できます。
さらに、清掃やリネンサービス、設備メンテナンスなど、オプションサービスを提供することで、追加収入を得ることも可能です。これらのサービスは、物件オーナーにとっても価値があり、喜んで対価を支払ってくれるでしょう。
民泊市場の需要の増加に対応できる
訪日外国人観光客の増加や、多様化する宿泊ニーズを背景に、民泊市場は着実に成長を続けています。住宅宿泊管理業者として参入することで、この成長市場の波に乗るチャンスを掴むことができます。
2019年の訪日外国人観光客数は3,188万人に達し、2030年には6,000万人を目標とする政府計画が進められています。新型コロナウイルスの影響で一時的に減少したものの、規制緩和や水際対策の緩和により、インバウンド需要は着実に回復傾向にあります。こうした観光客の増加に伴い、宿泊施設の需要も高まっており、特に「日本の生活文化を体験したい」というニーズから、ホテルとは異なる民泊への注目が集まっています。
住宅宿泊管理業者は、こうした市場拡大の恩恵を直接受けることができます。物件数の増加に伴い、管理ニーズも高まり、管理業者としての事業機会も拡大するのです。特に、管理の専門知識や効率的な運営ノウハウを持つ業者への需要は、今後ますます高まると予測されています。
多様なスキル活用できる
住宅宿泊管理業者として活動することの大きな魅力の一つに、多様なスキルを活かせる点が挙げられます。この仕事は、ホスピタリティから不動産管理、マーケティング、財務管理まで、幅広い知識と能力を総合的に発揮できる職種です。
ホスピタリティの分野では、宿泊者に快適な滞在体験を提供するためのサービス設計や接客スキルが求められます。外国人観光客の文化的背景を理解し、適切なコミュニケーションを取る能力も重要です。
不動産管理の観点では、建物や設備の維持管理、資産価値の保全・向上に関する知識が役立ちます。定期的な点検や適切なメンテナンス計画の立案、コスト効率の良い修繕提案など、不動産管理のプロフェッショナルとしてのスキルを発揮する場面は数多くあります。これまで不動産業や建設業で経験を積んだ方にとって、その知識やネットワークは大きな強みとなります。
マーケティングスキルも非常に重要です。物件の魅力を最大限に引き出す写真撮影や物件紹介文の作成、適切な価格設定、OTAでの掲載戦略など、集客力を高めるためのマーケティング知識が求められます。デジタルマーケティングの経験がある方なら、SEO対策やSNS活用など、オンライン戦略の面でも力を発揮できるでしょう。
このように、住宅宿泊管理業者は、様々な分野の知識とスキルを総合的に活用できる職業です。自分の強みを活かしながら、新たなスキルも習得していくことで、事業の付加価値を高め、競争力を強化することができます。
住宅宿泊管理業者になるデメリットは?

住宅宿泊管理業者としてのビジネスには多くの魅力がある一方で、事業を始める前に認識しておくべき課題やデメリットも存在します。
住宅宿泊管理業者になる際の主なデメリットについて詳しく見ていきましょう。
初期費用や運営コストがかかる
住宅宿泊管理業を始めるにあたり、まず直面するのが初期投資と継続的な運営コストの問題です。登録や準備に必要な費用は決して小さくなく、事業計画を立てる際には現実的な資金計画が欠かせません。
まず、住宅宿泊管理業者として登録するための直接的な費用として、国土交通大臣への登録申請料が9万円かかります。さらに、負債額が資産を超えないことや支払い不能に陥っていないことなどの財産的な面でも縛りがあります。
また、事業を開始するには、専用のオフィススペースや備品の整備も必要です。特に、宿泊者の個人情報を扱うため、セキュリティ対策を施した事務所環境の整備は欠かせません。
人件費も大きな負担となります。24時間対応が求められる業務特性上、複数のスタッフを雇用する必要があり、特に夜間や休日の対応体制の構築には相応のコストがかかります。
さらに、事業拡大に伴い、清掃スタッフやメンテナンス担当者の確保も必要になります。これらのスタッフを直接雇用するか、外部委託するかによっても費用は変わりますが、いずれにせよ相応のコストを見込む必要があります。
加えて、物件オーナーを獲得するための営業活動や広告宣伝費も軽視できません。特に事業立ち上げ時は、認知度向上のためのマーケティング費用が嵩む傾向にあります。ウェブサイト制作費、広告費、セミナー開催費用など、オーナー獲得のための投資は数十万円〜数百万円規模になることも少なくありません。
法令や規制の遵守が求められる
住宅宿泊管理業者として事業を行う上で最も注意を払うべき点の一つが、複雑な法令遵守の問題です。民泊関連の法規制は頻繁に改正されることもあり、常に最新の情報を把握し対応する必要があります。
住宅宿泊事業法(民泊新法)は2018年に施行されましたが、その後も様々な運用ルールの見直しが行われています。例えば、住宅宿泊管理業者が行うべき業務の範囲や、宿泊者名簿の管理方法、安全管理の基準などは、細かく規定されており、これらを正確に理解し実施することが求められます。
また、地方自治体ごとに独自の条例やルールが設けられていることも多く、管理物件が複数の自治体にまたがる場合は、それぞれの地域のルールを把握する必要があります。例えば、東京都千代田区では住居専用地域での民泊営業が原則禁止されているなど、地域によって営業制限が異なります。こうした地域ごとの規制を正確に把握し、オーナーにアドバイスする責任も管理業者にあります。
さらに、旅館業法や消防法、建築基準法など、民泊に関連する他の法令も理解しておく必要があります。特に消防設備の設置基準や避難経路の確保などは、安全管理上極めて重要な事項であり、これらの法令に違反した場合、管理業者としての責任も問われる可能性があります。
ゲスト対応やトラブル処理の手間が発生する
住宅宿泊管理業者の日常業務の中で、最も労力と時間を要するのがゲスト対応とトラブル処理です。24時間365日の対応が求められるため、人的・精神的負担は想像以上に大きなものとなります。
まず、チェックインからチェックアウトまでの基本的なゲスト対応には、予想以上の手間がかかります。特に外国人宿泊者の場合、言語の壁や文化の違いから生じる誤解や要望の食い違いが頻繁に発生します。例えば、日本の住宅設備の使い方(エアコンの操作方法やお風呂の入れ方など)が分からず、深夜に問い合わせが来ることも珍しくありません。
また、宿泊中のトラブル対応も大きな負担となります。水漏れや排水詰まり、家電の故障など、予期せぬ設備トラブルが発生した場合は、迅速に対応する必要があります。特に緊急性の高い問題は、深夜や休日であっても即座に対応しなければならず、管理者には大きな精神的負担がかかります。実際に、修理業者の手配や現地での立ち会いなどにより、予定外の時間と労力を費やすことになるのです。
こうした日常的なトラブル対応に加え、より深刻な問題として、宿泊者の事故や病気、盗難などの緊急事態への対応があります。特に外国人宿泊者が病気になった場合は、医療通訳の手配や、保険会社との連絡調整など、通常以上の対応が必要となります。
住宅宿泊管理業者になるためにはどうすればいい?

住宅宿泊管理業者として事業を始めるには、明確な手順と準備が必要です。この業界に参入するには、法的要件を満たすことはもちろん、実務的な体制構築も重要になります。適切な準備を整えることで、スムーズな事業開始と安定した運営が可能になるでしょう。
住宅宿泊管理業者になるための具体的なステップについて、順を追って解説していきます。
基本要件を確認する
住宅宿泊管理業者として登録するためには、まず法律で定められた基本要件を満たしているかを確認する必要があります。これらの要件は住宅宿泊事業法に基づいており、登録の前提条件となるものです。
第一に、欠格事由に該当していないことが重要です。欠格事由には、成年被後見人や被保佐人であること、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていないこと、住宅宿泊管理業の登録を取り消されてから5年を経過していないことなどが含まれます。また、暴力団員や暴力団関係者でないことも要件となります。
第二に、財産的基礎の要件があります。具体的には、負債の合計額が資産の合計額を超えないこと、支払不能に陥っていないことが求められます。
第三に、人的要件として、管理受託契約の締結に関する業務を統括する「業務管理者」を各事業所ごとに設置する必要があります。業務管理者は、一定の実務経験(賃貸住宅管理業などの経験が2年以上)または資格(宅地建物取引士、マンション管理士等)を有していることが条件となります。
事業計画を立てる
住宅宿泊管理業を始める前に、綿密な事業計画の策定は不可欠です。適切な事業計画は、ビジネスの方向性を明確にし、予測可能なリスクに備える助けとなります。また、資金調達や関係者との協議の際にも重要な資料となります。
まず、市場調査から始めましょう。事業を展開する地域の民泊市場の状況、競合他社の動向、物件オーナーのニーズなどを徹底的に調査します。例えば、その地域でどのような物件が人気があるのか、宿泊料金の相場はいくらか、季節変動はあるのかなどを把握します。また、管理業者の需要と供給バランス、管理料金の相場なども重要な調査ポイントです。
次に、具体的なビジネスモデルを設計します。提供するサービスの範囲(基本管理業務のみか、清掃や設備メンテナンスなどの付加サービスも含めるか)、料金体系(固定報酬型か、成果報酬型か、または併用か)、ターゲットとする物件タイプ(マンション、一戸建て、別荘など)を明確にします。
さらに、マーケティング戦略も検討します。物件オーナーをどのように獲得するか(紹介、不動産業者との連携、ウェブマーケティングなど)、差別化ポイントは何か(24時間サポート、多言語対応、データ分析による収益最大化など)を明確にします。
人員計画も欠かせません。どのような人材が必要か(予約管理、清掃スタッフ、メンテナンス担当、カスタマーサポートなど)、直接雇用するか外部委託するか、人材確保の方法などを検討します。特に24時間対応の体制をどう構築するかは重要な検討事項です。
リスク管理計画も立てておきましょう。予想されるリスク(物件の急な取り下げ、予約キャンセルの増加、法規制の変更など)と、それらへの対応策を事前に検討しておくことで、事業の安定性を高めることができます。
必要な体制を整える
住宅宿泊管理業者として登録申請を行う前に、実際の業務を遂行するための体制を整備する必要があります。適切な体制は、法令遵守の基盤となるだけでなく、効率的な業務運営と高品質なサービス提供を可能にします。
まず、オフィス環境の整備から始めましょう。オフィスには、宿泊者からの問い合わせや苦情に対応するための通信設備(電話、メール、チャットシステムなど)を備え、業務に必要な書類や帳簿を保管するスペースも確保します。また、宿泊者の個人情報を扱うため、セキュリティ対策も重要です。オフィスの施錠管理、書類の適切な保管、PCのセキュリティ対策などを徹底しましょう。
次に24時間対応体制の構築も重要な課題です。住宅宿泊管理業者は、宿泊者からの問い合わせや緊急時の対応を24時間365日行う必要があります。この体制を社内で構築する場合は、シフト制の導入やオンコール体制の整備が必要です。
さらに、安全管理体制の整備も忘れてはなりません。各物件の鍵の管理方法、定期的な安全点検の実施方法、緊急時の対応マニュアルなどを整備します。特に、火災や地震などの災害時の対応手順は、事前に明確にしておくことが重要です。また、宿泊者の安全を確保するための設備(消火器、避難経路図、防災グッズなど)の準備も必要です。
加えて、衛生管理体制も整えましょう。清掃マニュアルの作成、清掃スタッフの教育、清掃チェックリストの整備など、一定の品質を保つための仕組みづくりが重要です。また、清掃用具や消耗品の管理方法、リネンの洗濯・交換方法なども明確にしておきましょう。
登録申請を提出する
すべての準備が整ったら、いよいよ住宅宿泊管理業者としての登録申請を行います。この手続きは正確かつ丁寧に行うことが重要で、不備があると審査に時間がかかったり、最悪の場合は申請が却下されたりする可能性があります。
登録申請先は国土交通大臣となりますが、実際の申請窓口は各地方整備局等の建設産業課等になります。まずは、事業所を設置する地域を管轄する地方整備局に連絡し、最新の申請要領や必要書類について確認することをお勧めします。
申請に必要な書類は多岐にわたります。主な書類としては、住宅宿泊管理業者登録申請書(国土交通省指定の様式)、定款または寄附行為(法人の場合)、登記事項証明書(法人の場合)、住民票の写し(個人の場合)、欠格事由に該当しないことを誓約する書面、財産的基礎を有することを証する書面(貸借対照表、財産目録など)、業務管理者の要件を満たすことを証する書面(実務経験証明書や資格証の写しなど)、事務所の平面図、業務方法書などがあります。
特に重要なのが業務方法書です。これは、住宅宿泊管理業者として行う業務の具体的な方法を記載した書類で、宿泊者の衛生確保、安全確保、外国人宿泊者とのコミュニケーション円滑化、周辺地域の生活環境保全、宿泊者名簿の備付けに関する業務方法を詳細に記載する必要があります。この業務方法書は審査の重要なポイントとなるため、具体的かつ実行可能な内容を記載することが重要です。
申請書類の作成にあたっては、記入漏れや誤記がないよう細心の注意を払いましょう。また、添付書類の有効期限にも注意が必要です。例えば、登記事項証明書や住民票の写しは、発行から3ヶ月以内のものが求められることが一般的です。
申請書類が完成したら、申請手数料(9万円)を納付し、申請窓口に提出します。申請方法は、窓口への持参、郵送、電子申請などがありますが、地方整備局によって対応が異なる場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
申請後は審査期間に入ります。審査期間は通常2〜3ヶ月程度ですが、書類の不備や追加の説明を求められる場合はさらに時間がかかることもあります。審査中に追加資料の提出や質問への回答を求められた場合は、迅速かつ丁寧に対応しましょう。
登録が認められると、住宅宿泊管理業者登録簿に登録され、登録番号が付与されます。この登録番号は、物件オーナーとの契約や広告などで明示する必要があります。また、登録後は5年ごとに更新が必要となるため、更新時期を管理しておくことも重要です。
登録後は、住宅宿泊管理業者としての表示義務があります。事務所に登録証を掲示するとともに、広告やウェブサイトなどにも登録番号を表示する必要があります。また、契約書や重要事項説明書などの書類も整備しておきましょう。
参考:観光庁 住宅宿泊管理業者の登録←詳しくはこちらから!
まとめ
住宅宿泊管理業者は、民泊事業者の大きな味方となる存在です。宿泊者対応や施設管理、衛生管理、名簿作成、トラブル処理、行政手続きなど、多岐にわたる業務を専門的に担うことで、オーナーの負担を大幅に軽減します。管理業者としてのビジネスには、安定した収入源の確保や物件オーナーとの信頼関係構築、成長市場への参入、多様なスキル活用といったメリットがある一方で、初期費用や運営コスト、法令遵守の負担、ゲスト対応の手間といったデメリットも存在します。管理業者になるには基本要件の確認から始まり、事業計画の立案、体制整備、登録申請と段階を踏む必要があります。民泊市場の拡大が続く今、住宅宿泊管理業者としての需要は今後も高まっていくでしょう。